『ターゲット』


イギリスでは2009年公開。日本では劇場公開はされずに2011年にDVDスルー。1993年の『めぐり逢ったが運のつき』というフランス映画のリメイクらしい。だから、劇中で主人公がフランス語を勉強してたのかな。

主演のビル・ナイは『パイレーツ・ロック』よりもだいぶ若く見えたけれど、公開は『パイレーツ・ロック』のほうが先。撮影はどうかわからないけれど、55歳の役だった。
家族代々の殺し屋で、未婚。でも、結婚に興味はあり。そんな彼が、ターゲットである女性に恋しちゃう。
ローズはマーケットをすいすい歩きながら、通りすがりに女性のスカーフを拝借したり、カフェの人のテーブルのジュースを飲んだりとやりたい放題。だけど、やり方がディズニー映画のように軽快で憎めない。ビクターは彼女を殺す依頼を受けていたため、近くで彼女をじっと観察している。その内、恋に落ちてしまう。この時の、ビル・ナイの「困った奴だなあ」みたいなゆるんだ顔が本当に可愛い。恋に落ちる瞬間が描かれている。

ビクターは冷静沈着な殺し屋だったはずなのに、彼女と、偶然居合わせたトニーと三人で逃亡するうちに、人間らしさを取り戻していく。慌てたり、怒ったり、上の空になったり、どのシーンもキュートなんですが、誕生日パーティーのシーンが特にはっちゃけていて最高。踊ったり笑ったり酔っぱらったり、本当に楽しそう。

ビクターはローズに恋をしていても、二人じゃなくてトニーも一緒の三人なのがいい。別に三角関係ではないです。トニーとビクターがくっつきそうな謎シーンはありましたが。
ローズがわりと厄介な性格というか、自由奔放すぎて、たぶんビクター一人では手に余りそう。あと、ビクターも頑固だし、ローズが早とちりの勘違いをして、衝突ばかりしそう。トニーはちょうどいい緩衝材の役割を担っていた。

トニーはトニーで、家族がいないようだったので、ビクターとローズを疑似家族的にとらえていたように思う。
ラストでビクターとローズに子供が生まれていましたが、トニーも一緒に住んでいるようだった。

別の殺し屋から命を狙われているのでスリルのあるシーンもありつつも、三人の関係がとてもいいので、大半のほのぼのシーンをにこにこしながら観ていた。

これもリメイクだし、続編がないのはわかってるんですが、本当は三人の活躍がもっと観たい。

セリフの言葉のニュアンスで事態が違う方向へ進んでいったり、うまい具合に間一髪で逃れたりというシーンが舞台っぽかったので、原作は舞台なのかと思っていたが違った。

ローズ役は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も楽しみなエミリー・ブラント。トニー役はハリー・ポッターのロン・ウィーズリーでお馴染みのルパート・グリント。私はハリー・ポッターをまともに観たことがないのでこの俳優さんを知らなかったんですが、良かったので他の作品でも観たいと思ったけれど、出演作がほぼハリー・ポッターだった。知ってる人からしたら、その印象が強すぎてしまうんだろうか。

ビクターの次に雇われた殺し屋、ヘクター・ディクソン役にマーティン・フリーマン。実は彼目当てで観ました。プライドが高そうで腕も確からしいけれど、ビクターよりは雇う金額が安かったらしい。いつものマーティンは慌てたり、巻き込まれたりする役が多いけれど、今回は違っていた。巻き込まれないし、声を荒げることなく、抑えめの演技で、わざとらしい笑顔を絶やさない。黒いタートルネックを着ていて、服装からも感情を殺しているのがわかる。
それでも所詮かませ犬というあたりも良かった。


2007年に公開された『300<スリーハンドレッド>』の続編。今作もザック・スナイダー監督だと思い込んでいたけれど、今作はノーム・ムーロ監督。とはいっても、戦い中にスローになったり、血がふわっと飛んだりと作風は似た感じ。ザック・スナイダー監督は脚本と製作に名前が入っている。
続編といっても、『300<スリーハンドレッド>』の少し前と少し後と、一方その頃…が描かれているのでサイドストーリー的な印象を受けた。前作を観てからのほうが楽しめると思う。

以下、ネタバレです。






私は前作のやりすぎ感が好きだったので、監督が変わったことでなのか、少し地味になってしまったと感じた。
今回は海軍が主役なので、海上で船同士がぶつかり合って戦う。海の色は青ではなく黒に近いような暗さで、血も赤ではなく暗い色だった。両軍の鎧も暗めの色なので、色彩が全体的に暗いのだ。
また、装飾具も前作より目立たなかった印象。前作のペルシャ王近辺の豪華絢爛な様子が良かったのに。
そのせいもあるのかもしれないけれど、前作がほとんどファンタジーみたいにして楽しめていたものが、今回はリアリティーが出てしまっているというか、本当に戦争を見ているような気持ちになった。

あと、なんとなく、『300』といえば、屈強な男衆の筋肉と筋肉のぶつかり合いなのかなと思っていたので、今回の敵が女性だったのが気になってしまった。アルテミシアという女性で、最古の女海賊と言われているらしい。演じてるのはエヴァ・グリーン。『ダーク・シャドウ』と同じく、格闘技セックスがありました。
それで、少しだけ恋愛要素もあるんですよね。あからさまなものではないけれど、振られた腹いせも多少感じられた。感じられる程度であってもいらないかなと思う。女性を敵役にするなら仕方ないとは思うけど、だからこそ、敵役を女性にするのはやめてもらいたかった。

必要以上に飛び散る血とか、首をかり取ったりとか、船から油みたいなのを落として引火するシーンは良かった。なので、良いけど前作のほうが好きかな…と思いながら観てたんですが、最後の戦いで、アルテミシアと金属でできた鬼の仮面を被った側近が全員二刀流で出てきたのが盛り上がった。防御無視で攻撃してくるのが恰好いい。
また、それに対するテミストクレスが両手剣や、大きい刀を片手で持って片手で殴ったりするのも恰好いい。縦の代わりに剣で受け止める。
あと、一番盛り上がったのは、もう駄目だと諦めそうになったときに、援軍が来たシーンです。スパルタ軍が助けに来る。あの丸い楯を持っているし、前作の印象があるから、この人たちが来れば安心だと思える。もうこれだけで、今作もおもしろかった!という感想が抱けた。最後にスパルタ軍が全部見せ場を持っていった。前作が見直したくなる。
王妃が亡き王の剣を手に切り込んでくるのも良かった。王妃は良くてアルテミシアがなんとなく嫌だった理由を考えていたんですが、戦う女が嫌いなわけじゃなく、最大の敵として出て来るのと、戦いに恋愛を持ち込まれたのが原因だったのだと思う。

このスパルタの援軍が現れる時の音楽がすごく恰好良いんですが、音楽担当はジャンキーXLだった。今度公開される『ダイバージェント』も担当しているみたい。

スパルタ援軍が来た時に、やっぱり私は前作が好きだというのとスパルタ軍最高!を再確認したんですが、いま思っても前作に出てた裏切り者せむし男が終盤に出てきたときに嬉しかったし、序盤、池みたいなところから上がってきた時に、よく見覚えのあるクセルクセスの姿に変身した時にも盛り上がった。普通の洋服/容貌だったのに、池に浸かったらスキンヘッドにピアスに半裸になっていたのは本当に変身としかいいようがなくて、お前だったのか!と思った。

このクセルクセスを演じたロドリゴ・サントロ、今回普通の姿でも出て来るんですが、実はかなり美形でブラジルのスターらしい。
あと、今回気になったのは戦士の息子で自分も戦士になろうとするカリスト役のジャック・オコンネル。マンチェスター・ユナイテッドの映画『ユナイテッド ミュンヘンの悲劇』という作品で主演らしい。イギリスのダービー出身。
もう一人、ダニエル・ブリュールとベン・ウィショーを足して、ちょっとだけバーン・ゴーマンを加えたみたいな容姿の人が気になったんですが、ハンス・マシソンでした。アイスキュロス役。ジョン・シムが出てた『NERO ザ・ダーク・エンペラー』の暴君ネロ役だった人。その他にも『タイタンの戦い』にも出ていたみたいなので、わりと古い歴史物が似合う顔なのかもしれない。

ドイツのドラマ。SOKOはSonderkommissionen=特別任務の略らしい。
そのうち、SOKO LeipzigのS13E09のKlassenclownという回にテオ・トレブスくんが出ていたので見ました。DVDを買おうかと思っていたけれど、公式がYouTubeにまるまる一話アップロードしてくれていた。

ドイツ語で英語はもちろん日本語字幕なんてついていないので話はあまりわからなかったんですが、刑事ものだった。学校で女生徒が殺されて、知的障害者の生徒に容疑がかけられて、ちゃんと容疑が晴れて、犯人である別の生徒がつかまるというあらすじだったと思う。テオくんは知的障害者役。拳銃やパトライトに興奮していたので、刑事さんが好きそうだった。

たぶん去年末くらいに放送されたものだと思うので最新のテオくんだと思うけど、もうくん付けでは申し訳ないくらい育っていた。身長もすごく伸びているし、体つきもがっちりしていた。
『コーヒーをめぐる冒険』が2012年公開だから、撮影がその辺かその一年前くらいだとしても、2、3年であんなに育っちゃうんだ。
10代後半からハタチくらいまでって一番成長する時期なんでしょうか。もう少年という感じではなかった。

これは、ライプチヒなんですが、もう一つ、SOKO Stuttgart(シュツットガルト)のSorgenkinderという回にも出ているみたい。これは2011年で、画像を見るとだいぶ少年っぽいので観たい。
ちなみにこの回にはPepe Trebsっていう2003年生まれのテオくんの弟と思われる子が弟役で出ているようです。

SOKO、ライプチヒ、シュツットガルトの他にもいくつかあるみたい。CSI:マイアミとかCSI:ニューヨークみたいなものだろうか。

ドイツでは2012年に公開。原題は“Oh Boy”。2013年のドイツアカデミー賞にて、作品賞、監督賞など、主要6部門を制覇したとのこと。さらにすごいのは、監督のヤン・オーレ・ゲルスターはこれがデビュー作。
私はその辺の事は知らずに、テオ・トレブスくん目当てで観ました。

以下、ネタバレです。




邦題ですが、コーヒーは常につきまとってはくるものの、めぐる冒険という感じではないし、冒険というほど壮大なものではない。それを考えると、ビートルズの『A Day In The Life』の歌い出しのI read the news today oh boyからとったらしい原題はいいタイトル。「なんてこった」とか、そんな意味みたいなので、いまいち抜けきらない一日をうまく表していると思う。でも、アメリカ版も“a coffee in berlin”といういまいちつまらないタイトルに変えられてしまっている。

行く先々でコーヒーを飲もうとするけれど、何かしらがあって飲めないのが続いて、それはそっくりそのまま、この主人公ニコのサエなさみたいなものにつながってきていた。大学を中退し、彼女とも別れ、いまいちぱっとしない。
映画で描かれているのは一日の出来事ですが、コーヒーが飲めない=ほっと一息つく暇がないという感じで、同じマンションの住人や、友人や、昔の同級生や、父親や、まったく知らない人などが次から次へと慌ただしくニコに関わってくる。
結局、話を聞いてあげたり面倒をみちゃったりして巻き込まれてる。家に入れてあげちゃうし、一緒に出かけるし、ゴルフに付き合うし、芝居も観に行くし、病院にも行く。
それでも距離をとりたいのか、頂き物のミートボールは芝居に出るようにすすめられても断るし、ドラッグも買わないし、セックスもしない。どこかさめているところが、この人の魅力であり、駄目なところなのかもしれない。
だから、最後にちょっと喋っただけの見知らぬ爺さんが倒れた時に、病院についていっただけではなく、手術室に入ろうとしたり、朝まで病院にいたりしたのを見て、何かしら成長したのかなと思った。

それは最後、一夜明けて、やっとコーヒーが飲めたことからも感じられた。一日中一人になれなかったニコが、おそらく不思議な一日を思いながら、少し苦いコーヒーを飲む。このラストの余韻が最高で、エンドロールはドイツ語で読めないけれど、席を立ちたくなかった。

次々出てくるドイツの俳優さんは詳しくはないので知らなかったけれど、きっと豪華キャストが集められているんだろうし、少し『グランド・ブダペスト・ホテル』的だと思った。また、本編が慌ただしめに過ぎていって、最後一人になって想いを馳せるという構造も似ているところがある。

ニコ役のトム・シリングですが、角度によってはジェームズ・マカヴォイにも似ていた。鼻の形が似てるのかも。マカヴォイよりもちょっと顔が丸い感じはする。仕送りを止められていたので大学生役だったと思うんですが、1982年生まれのようなので今年32歳。撮影時も20代後半だと思われる。動画んです。
あと、背が低いんですが、煙草の火をつけてもらうときに相手をかがませるシーンがあって、結構良かったです。
今回は情けない役だったんですが、びしっとしたのも観たい。

テオ・トレブスは出番が一瞬だった。自分の家でドラッグをさばく役だったんですが、ニコはその家のおばあちゃんと触れ合っていた。どちらかというと、おばあちゃんエピソードが中心だった。キャップを深くかぶっていてあんまり顔も見えない。TシャツにFUCKっぽいことが書いてある悪ガキ役。出方からしてカメオみたいな扱いになっちゃってるけど、彼がドイツでどの程度の位置にいるのかわからないのでただのちょい役なのかもしれない。




アメリカで2009年に公開され、日本ではDVDスルー。署名によって2010年に劇場公開された。けれど、DVD上映だったような気がするけど、どうだったか。

スター・ウォーズファンの友達が末期ガンに冒されていて、その友達のために公開前の『スター・ウォーズ エピソード1』を観せようと、スター・ウォーズファン仲間でジョージ・ルーカスのスタジオを目指すロードムービー。

スター・ウォーズのことは知っていたほうが楽しめると思うけど、それよりも、マニアッククイズみたいなのをやりあって完璧に答えてるさまを観るのを「うわあ…」と思いながら観るのも楽しい。あと、知識面ではスター・ウォーズだけでなく、スタートレックについても知っていたほうが面白いのかも。

それと、両者の映画ファンの間にある深い溝ですが、話には聞いていたけれど、ここまで深いものだとは思っていなかった。全面戦争。映画だから大袈裟にはなっているとは思うけれど、ないこともなさそう。

コメディなので、仲間の病気についても勘違いかと思いながら観ていた。車のディーラーになって付き合いが悪くなったエリックを誘い出す口実としての嘘だと思った。途中で病院に行ったときも、病名は言わないので、何か別の病気だとしても末期ガンだとは思ってなかった。最後まで行って種明かしがあるのかと思っていた。
エリックをこの冒険に連れ出して、ライナスとエリックは仲直りして、四人の友情も復活! これでは駄目だったのか。
ルーカスのスタジオで、ライナスがエピソード1を観せてもらっているとき、まさか本当なのかなと思って、私だけが動揺していた。
示唆はされているし、最後の映画公開日にも居なかったから本当だったんだとは思うけれど、直接的な表現がないし、まだ疑っているくらい。地上波のテレビ放送で観たので、エンドロールはばっさり切られてたんですが、そこで何か仕掛けが…?とも思ったけれど、そこまで重要な仕掛けだったらちゃんと流すだろうし、たぶん本当だったんだろう。

観ている最中も、主要キャラは三人でいいんじゃないかと思っていた。太ったハッチとメガネのウィンドウズ、そしてスターウォーズとは距離をおいて真面目に働くエリック。途中で女の子が加わるにしても、四人が限界。なんとなく、ライナスのエピソードだけ浮いてしまうというか、なくても良かった気がしてしまった。
それか、泣かせるんだったら、もっとライナスメインにするとか。
バランスも三人のほうがいいし、スタジオに潜入する時も五人ではやっぱりちょっと多すぎて見つからないわけはないと思ってしまう。

ウィンドウズを演じたのがジェイ・バルチェル。メガネでひょろっとしていて冴えない。『ディス・イズ・ジ・エンド』のジェイのほうが恰好良い。
セス・ローゲンもラスベガスのコールガールの元締めみたいな役で出てくる。『ディス・イズ・ジ・エンド』だとジェイと友達役だったけれど、この映画を観るとセスのほうがだいぶ年上に見える。けれど、同い年だった。
ダニー・マクブライドもルーカススタジオの警備員役で出てくる。

あと、ダニー・トレホが出てきたので驚いた。外見を生かした、怖い顔してるけどいい人な役。笑顔が可愛い。

途中から冒険に加わって、ご本人のかわからないけどお尻を披露し、最後にはジャバ・ザ・ハットに捕らえられた時のレイア姫のセクシーなコスプレまで見せたのは、クリスティン・ベル。『アナと雪の女王』のアナ役の方でした。

スター・ウォーズ本編でレイア姫を演じたキャリー・フィッシャーもカメオ出演。病院の女医役でした。途中で「自分の右手をレイア姫と呼んでた」みたいなエピソードが出て来るんですが、女医さんに思いっきりキスをするシーンが出てきてなるほどと思った。

スタートレックでカーク船長を演じたウィリアム・シャトナーもご本人役で出演。「ジェリー・ライアンの下着も手に入れられる?」って聞いていて、誰かと思ったら、セブン・オブ・ナインを演じてた方だった。ここでキャスト名で誰かすぐわかったらもっとおもしろかったんだけど…。

『白いリボン』


2010年公開。ドイツでは2009年。カンヌのパルムドール受賞作品。ミヒャエル・ハネケ監督。『コッホ先生と僕らの革命』での意地悪級長役が良かったテオ・トレブス目当てで観ました。

コッホ先生が1874年、この映画は1913年ということで、似たような時代のドイツが舞台になっている。そして、両方とも子供が多く出てくる。
ただ、コッホ先生が厳格な規律にしばられた学校の中で最初は従っていたが次第に子供らしさを取り戻していくのに対して、この映画では逃げ場がない。学校でもがんじがらめだし、小さな村の中でも規律に縛られている。
ましてやタイトルにもなっている白いリボンである。要は未熟者の証ということなんだと思うけれど、子供なので未熟であって当然。なのに、晒すようにして腕に付けられてしまう。

小さな村で連続して事件が起こり、犯人は捕まらずに不穏な空気だけが蔓延していく。
語り手が学校の先生で、先生はたぶん真実に辿り着いているけれど、真実は明確には明かされない。村の有力者である牧師さんに脅されては、探偵めいた事ができないのも当然だと思うし、謎を完全に暴いちゃうのも映画が俗っぽくなってしまう。
有耶無耶のまま語り手が村を離れることで、謎が明かされなくても、本当にそんな村存在してたの?幻じゃないの?というような後味の悪い昔話みたいな感じになって良い。

結局、カーリと助産婦、アンナとドクターがどこに消えたのかは、もうヒントすらないのでわからない。
最初のドクターの事故は、親であるドクターから性的虐待を受けていたアンナを可哀想に思った子供たちがやったのかな。笛の件で男爵の息子を池に落としたのは家令の息子だったし、最初の男爵の息子の事件もそうなのかも。家令の娘がカーリが酷い目に遭う夢を見たと先生に言ったのはSOSではなかったのではないか。

子供たちはほぼ感情を示さないし、笑わない。教室で騒いでいるシーンが唯一だと思うけれど、それも見つかってこっぴどく怒られていた。
大人たちへの反抗でもあるのかなとも思うけれど、とにかく謎は明かされないので、予想です。ただ、じわりじわりと村が蝕まれていく様子が怖かったし、雰囲気が良かった。

モノクロ撮影なのもいい。ドイツの田舎の村の雪景色が綺麗だった。子供たちの黒い洋服もよくはえていた。アカデミー賞を含め、いくつかの映画賞の撮影部門にノミネート、受賞しているようです。
いまとの時代の違いを表すためにモノクロになっているらしいけれど、最初はカラーで撮って、モノクロに変換したらしい。

テオ・トレブスは出番がそれほどなく、ほぼセリフもなかった。子供がたくさん出てくるわりに子供たちはほとんど喋らないですが。少し声が高く、もしかして声変わり前だったのかもしれない。撮影が2008年らしいので、当時のテオ・トレブスくん14歳。まだまだ少年の危うさがあって良かった。子供たちのなかでも際立って見えるけれど、それは私が彼目当てで観たからだと思う。


ウェス・アンダーソン監督作品。前作の『ムーンライズ・キングダム』は、ブルース・ウィリスやティルダ・スウィントンは良かったし、家の中の撮り方も良かったけど、お洒落映画でしかないかなという感想だった。そのため、今回もかまえてしまっていたけれど、すごく面白かった。
やはり、撮り方などはお洒落なんですが、それだけでなく、話の構造が好きでした。

以下、ネタバレです。





タイトルが『グランド・ブダペスト・ホテル』だったこともあり、グランド・ホテル方式だと勘違いしていた。その思い込みのせいか、予告だけ観た感じだと、ホテル内のシーンが多く感じていたのだ。とりあえず、グスタフ.Hの囚人服姿は出てこない。ほとんど、コンシェルジュの格好だったように思う。
ウェス・アンダーソンファミリー総出演というか、過去作に出た豪華俳優が多数集められているようだったので、彼らが全部お客様で、ホテル内での群像劇なのかと思っていたのだ。群像劇は好きだけれど、有名俳優を集めた群像劇はありきたりといえばありきたりだし…と思っていたら、まったく違った。

主役はホテルのコンシェルジュのグスタフ.Hとロビーボーイのゼロの二人だった。脇役を全部有名人が固めるという、贅沢な俳優さんの使い方をしている。
それで、ホテル内には留まらない。ほぼホテル内にはいない。元気に外へ飛び出して、大冒険を繰り広げる。なんとなく閉じこもり系の話を想像していたので、これは痛快だった。

グスタフ.Hが仲間と脱獄を企てるシーンですが、ありあわせ脱獄道具やその方法がちょっと工作っぽくて、このアイデアと手作り感満載な感じがまさにウェス・アンダーソンの映画を表しているのかなと思った。

シンメトリーが多かったり、どこで一時停止しても絵になるのはいつもの通り。また、床の変わった模様を真上から映し、カメラをぐるっとそのまま縦に移動させてバルコニーを映すとか、従業員たちが食事しているテーブルからカメラを横に移動させると、コンシェルジュがお知らせを言う演説台みたいなのがあるとか、カメラの動きと合わせても細部まで計算されていた。どのシーンも手抜きせずにしっかり作られているので、観ていて本当に楽しいし、二度目に観て字幕を読んだりしなければ、もっと細かい部分にも気づけそう。
ケーキ一つとってみても、あのマカロンが積み上がったみたいなのはなんなんだろう。可愛かった。

また、全体的に忙しい感じの音楽もよく合っていたけれど、一番気に入ったのは、教会で賛美歌を歌うシーン。もともとのBGMに賛美歌が自然な感じで乗る。流れを止めないという手法がお見事。耳でも楽しませようというのが感じられた。

それでも、音楽がいいとか、シンメトリーとか、可愛いとか、色がきれいとかはいままでのウェス・アンダーソンの作風通りで、はっきりいって、当たり前だったりする。私が今回一番この映画が好きだと思った点は、映画の構造です。

映画は文学少女が作家の墓参りに来るシーンから始まる。
画面が切り替わるとその作家が喋っている。どうやら、『グランド・ブダペスト・ホテル』の作者らしい(ここの孫らしき子供との一連のやりとりで、もうこの映画おもしろいに違いないと思った)。
また、画面が切り替わると、廃れたホテルで若かりし日の作家がホテルのオーナーらしき人物に話を聞く事になる。
そして、また画面が切り替わって、栄えていた頃のグランド・ブダペスト・ホテルへ。この映画の本編ともいえるものにここで突入する。
このような四重構造になっているとは全く知らなかったので驚いた。これも、予告を観ただけではわからない。

本編は登場人物も多いし、わりとチャカチャカした感じなのだが、うわーっと駆け抜けたあとで、廃れてしまったホテルに舞台が戻って、この冒険譚は廃れたホテル内で静かに語られていたのだと思い出す。語っていたのがロビーボーイのゼロだというのも途中でわかる。
そして、作家はこの話を一冊の本にまとめる。
そして、作家が亡くなった今、文学少女が墓参りに訪れ、墓の横でその本を開く。

この終わり方がもう完璧だと思った。文学少女は作家に想いを馳せ、作家は在りし日のホテルに想いを馳せ、ゼロはグスタフ.Hやアガサに想いを馳せる。
亡くなってしまった人、無くなってしまったもの、いまここにはないものに想いを馳せる時に、たぶん優しい気持ちになっている。
本編が多少慌ただしかっただけに、このセンチメンタルなラストがいきてくる。

あと、作家の墓に無数の鍵がかけてあるんですが、本の中でまさにキーアイテムとして鍵が出てくるので、そうしたら作家のファンはお墓を巡礼するとき、当然鍵を持っていくよなあと思った。ファン心理もよくわかっている。

この映画の構造は、劇中に出てくるお菓子のようだと思った。
箱に入ってリボンがかけられているんですが、リボンを解くと、箱の側面が四方に開いてカラフルで可愛らしいお菓子が顔を出す。お菓子はホテルやグスタフ.Hとゼロの冒険譚であり、箱やリボンがそれを語り継いだり、読んで楽しんだりする優しい想い。
静かなラストは、お菓子をきれいにラッピングしているようだった。

この想いの馳せ方に感動していたら、エンドロールの端っこのほうでコサックダンスを踊る謎のロシアおじさんを見ていても泣きそうになってしまった。もう充分楽しませてもらったのに、サービス精神が旺盛すぎる。

出演者についてですが、ティルダ・スウィントンが『スノーピアサー』を思い出すようなキワモノだった。おばあさん役。ティルダ様といえば、年齢のわりに老いてなかったり、性別すらもあやふやな『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』みたいな人外っぽい役が多かったけれど、最近は違う意味で人外になってきた。

エイドリアン・ブロディとウィレム・デフォーという顔に特徴がある二人が追って来るの怖かった。あと、しっかりした服装をしてるマチュー・アマルリックかっこいい。立派なおヒゲできっちりしてたエドワード・ノートンもいい。

豪華俳優が大人数揃えられていて、それが次々に出てくるので、出てくるたびに小さな驚きがあって、それだけでも単純に楽しかった。