BBC Oneにて放映中のトム・グリン=カーニーが出演しているドラマ。アデン危機の話。全六話の五話感想。

一話、二話感想
三話感想
四話感想

以下、ネタバレです。









ハリー少佐の息子ジョージ救出回。
一話、二話くらいは登場人物がわりと好き勝手に動いていたけれど、今回はみんながそれぞれジョージの救出に向けて動いていた。

前回撃たれたエドは回復していた。良かった。
その中でそばにいた妻アリソンとも仲が回復していたが、妊娠している子供がエドの子供ではないということは言えていないようだった。どうなるのか。

最初は女性陣がアクが強くて困っていたけれど、今回、アリソンと、ジョージの帰還をひたすら待つマリー(ジョージの母)の二人は演技が素晴らしかった。
マリーは前回も「私のせいだ」と言うオナーを聖母のような微笑みで許していて、ここもうまいなーと思ったが、今回の、人前では背筋を伸ばして表情を変えず、気丈に振る舞いながら、一人になったときに自分で自分の口に布を押し込んで声が漏れないようにして泣き叫ぶシーンは本当につらい。

このドラマが他の戦争ものと違うのは兵士中心ではなくその家族の描写もきっちりあるところだと思う。普通なら、息子の救出のための交渉で一悶着あるくらいだろう。兵士とその妻たちまで描かれることで、戦争ものというよりはヒューマンドラマの印象が強くなっている。
赴任先での生活を経験したピーター・モファットが手がけているということで、リアリティもあるのだと思う。

それぞれのキャラクターに愛着がわいてきたところで多分次回最終回。さみしい。
ラストではジョーが逮捕されていた。たぶんフィルムを隠蔽したからかな。

ジョージは結局、逮捕していたテロリスト(ゲリラ?)のリーダーの解放と交換になった。
ユースラはジョージに喘息?の薬を与えてあげたいと言っていたので、やはりやらされているだけだった。ユースラも被害者です。

交渉の場に行ったのはジョーとトニー(トム・グリン=カーニー)。中でも直接交渉したのはトニーで、ジョージだけでなくユースラの解放も条件に加えたのは彼の機転だったのだろうか。最初、2対1なんてだめだと言われたけれど、女子供とリーダーの交換だと食い下がって条件を飲ませていた。

しかし、そのあと、ユースラとトニーはどうにかなったりするかなと思いきや、特に進展もなく。
ジョージが帰ってきたので、花火は上がり、パーティーも盛り上がっていたけれど、そんな中でトニーは酒をあおって、ふらつきながら、外へ出て、煙草をふかして、柵を蹴っ飛ばしていた。
やさぐれたトム・グリン=カーニー、なかなか新鮮でいいです。
それでも、外に出るときにちゃんと上着を羽織るあたりが律儀で良い。

ただつらすぎるシーンではあった。
トニーがハリー少佐に、NLF(ゲリラ)に身元が知られている彼女を守ってくれと言っても、彼女の家族ごと連れてくるわけにはいかんだろと断られていた。
「それじゃあ、家族ごと殺されますよ?」と言っても聞く耳持たず。ハリー少佐は自分のことでいっぱいいっぱいなこともあるのかもしれない。ジョージが解放されても手が震えていたし。
パーティーは盛り上がり、年が明けてもトニーだけは外にいた。全然めでたくないから祝うことなんてできない。そこでのやさぐれである。

次回予告では、やっぱりユースラがどうにかなりそうだった。アジトを秘密裏に教えたのは彼女だし、そりゃそうだろう。「彼女はどこだ!」と叫ぶトニーが出てたから、トニーはそれを止めようとしていたんだと思うけれど、このへんもどうなってしまうの。もう少し恋人っぽいことになるのかと思いましたが、もっと厳しい。プラトニックなまま終わりそう…。

というか、プラトニックどころか、ユースラは自分の父親がイギリス軍に殺されたことも知らないかもしれないし、これから知ったらもうトニーとは会わないかもしれない。会ったとしても、母と兄だか弟が一回イギリス軍に逮捕されたりもしているわけで、もう周囲も許さないだろう。ちょっとしたロミオとジュリエットって言うからもっと軽いのかと思っていたけれど、それどころではない。絶対に許されない。つらい。

(余談ですが、トム・グリン=カーニーが、トニー・アームストロングがジョーを救った旨をツイッターに書いていて、それに対してジョー役の男の子が「助けてくれてありがとう!!」ってリプを返していたのがとても可愛かった。可愛かったけど、私は本編を見る前にこのやりとりを見てしまったよ…)





2015年公開。イギリスでは2014年公開。
『シタデル』と同じく『ダンケルク』関連でジャック・ロウデンとバリー・コーガン目当て。
しかし、そんな軽い気持ちで観る映画ではなかった。

舞台は1971年の北アイルランド。あまり詳しいことがわかっていなかったので、どの陣営とどの陣営の争いなのかよくわからなくなってしまい、上官の説明部分をもう一度見返しました。
イギリスの新兵たちが暴動の起きている北アイルランド(ベルファスト)に派遣される。そこでは、イギリス軍を敵視しているカトリック系(IRA?)とイギリス寄りのプロテスタント系が対立していた。IRAの中でも、非武装の穏健派と武器を持った暫定派で分かれているとのことだった。新兵たちは警察の家宅捜索(武器はあるか?と聞いていたので、たぶんIRA暫定派の家?)に同行する。

主役はジャック・オコンネル演じるゲイリー。映画を観る前は軍隊のドンパチものだと思っていたから、いろんな兵士たちに出番があるのかと思っていたが、ほぼゲイリー一人の話だった。警察の家宅捜索の同行という簡単な任務だと思われたが暴動に巻き込まれてしまい、ゲイリーだけが敵地に残され、そこからの帰還を目指す。
予告を見ているとデイリー・テレグラフの評として“完成度の高いサバイバル・スリラー”というのが出てきたり、「必ず生きて帰る」というセリフが出てきたりとほぼ『ダンケルク』です。手持ちカメラでゲイリーを追っていくあたりのリアリティも似ている。ただ、こちらは残されたのは一人きりである。

あと、私の知識不足なんですが、イギリス兵は軍服を着ているからわかるのですが、他の私服の人たちがどの陣営かわからなくて混乱した。髭の感じも似ている。最初の方に工作員と説明されていたのはIRAと対立している陣営だったのだろうか…。

ジャック・ロウデンなのですが、あまり詳しくは説明されないけれど、ゲイリーと親しそうなトンプソンという兵士で、カメラは主人公のゲイリーを捉えているから、結構いつも近くにいるトンプソンも見切れて映ることが多かった。
また、兵士で並んでいるときもニコニコしていたり、ゲイリーをバシバシ叩いたりと無邪気。IRA側(たぶん)の子供達に小便の入った袋を投げつけられたときも舌をぺろっと出していた。
軍隊らしからぬちょっとふわふわしていそうな体も可愛い。太っているまでは言わないけど。色が白くて、背が高いのも目立つ。
しかし、序盤の暴動に巻き込まれた挙句、顔を撃たれて死んでしまう。よりによって顔である。
映画自体、ゲイリーのサバイバルが中心だから、中心に行く前にいなくなってしまうのは残念だった。二人で逃げる展開なら良かったがそう甘くもなかった。
いい役ではあったけど、出番は思ったよりも少なかった。辛い内容です。

バリー・コーガンはIRA暫定派(たぶん)の青年、ショーン役。序盤の揉み合いのシーンではバリー・コーガンとジャック・ロウデンが同じ画面に映る。
『ダンケルク』では無垢で勇敢なジョージ役だったけれど、本作ではほぼ無表情で何を考えているかわかりにくい役。でも人の多いシーンでも一人だけ異質というか、目立っていた。無表情になると一気に冷たい印象になるのがとてもいい。怒りをおさえつつ何をしでかすかわからない爆弾を抱えてそう。でも、いざとなると撃てない少年っぽさも残っている。
今、北米で公開されているヨルゴス・ランティモス監督の『The Killing of a Sacred Deer』は、おそらくこれ系に悪魔成分をプラスした感じだと思う。ニコール・キッドマンとコリン・ファレルだし、日本でも公開されるのではないかと思うけどどうだろう。





前作が公開されたのが1982年ということで、実に35年ぶりの続編。
だいぶ時間が経っているのでそれほど関係ないかと思いきや、がっつり続きなので、前作は観ておいたほうがいいと思います。

あと、10分程度の前日譚が3作品公開されていますが、観なくても文字での説明があるので話はわかるけれどこちらも観ておいたほうが映画の世界観に入り込みやすいです。
前作が2019年、本作はタイトル通り2049年。短編はその間の2022年、2036年、2048年に起こったことが描かれている。特に、2、3作はキャラの掘り下げにもなっているので観ておいたほうが本編で愛着がわくかもしれない。
2作目にはベネディクト・ウォンが出ているが、本編には出ません。

監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。美術の面で特に彼らしさが出ていたかなと思う。ところどころで『複製された男』を思い出しました。

以下、ネタバレです。














まず最序盤に、主人公のK(ライアン・ゴズリング)がレプリカントであるということが知らされて、それすら知らなかったので驚いてしまった。

そして、骨が出てきてそれがレイチェルのものだとわかったときに、劇場内の人たちが、あ!と息をのむのがわかっておもしろかった。しかも、どうやら妊娠、出産した跡がある。ということは、この時点では説明はされないけれど、父親はデッカードである可能性が高い。
Kは生まれた子供を捜す役目を担うが、そのうち、どうやら、K自身がその子供なのではないか?という流れになっていく。
しかし、これは私がK目線で観ているからそう思っただけだった。前作でもレイチェルはタイレルの姪の記憶を植え付けられていただけだったのは知っている。でも、Kについてはそれが他の誰かの記憶だと言われても、信じたくなかった。主人公だし…とも思っていた。きっと彼がデッカードとレイチェルから生まれた特別なレプリンカントなのだろうと。
でも、決定的に違うということが知らされて、Kだけでなく、私も絶望してしまった。

Kの恋人と思われたジョイも、結局ウォレス社の量産型であることが途中でわかる。どこまで精密なのかはわからないけれど、量産型とはいえ、長く一緒に暮らすうちにそれぞれ個々で違った気持ちも芽生えるのだろうか。別のレプリカントと同期してのラブシーンはすごく妖艶だった。観たことない映像。素晴らしい。

それでも、結局まやかしだったのだろうか。
彼女のデータが壊されて、K自身も瀕死になったあとで、広告の巨大なジョイが裸で誘ってくるのは胸が痛んだ。一緒にいたジョイではなく、他のところのジョイだ。孤独感が際立っていた。

最後、Kはデッカードになんでこんなに親切にしてくれるんだというようなことを問われていた。Kは何も言わなかったけれど、父親と思っていたし、一度そう思ってしまったから、違うのはわかっていても気持ちは変えられなかったのだろう。違うと言われても、記憶は自分の中にある。拠り所にしてしまっていたのだと思う。
自分が特別な存在では無く、普通のレプリカントだったというのがわかっても認められない気持ちも、K目線で観ていたからよくわかって本当につらかった。
デッカードはジョーと名乗った青年が、自分にそんな思いを抱いているなんてまったく気づいていなかったと思う。完全なる片想いです。

ステリンがKの記憶を見たときに涙を流していた理由も、後からわかってなるほどと思った。それ、私の記憶だもんと、彼女だけがあの時点でわかっていたのだ。あの時点で、あなたの記憶じゃないですよと泣きながら、ちゃんと真実を告げていた。彼女もつらかっただろう。

研究所まで送って行って、外の階段で一人死ぬというのはあまりにもつらいラストだ。でも、SF的な切なさはあるし、実は父親でした!親子愛!みたいな感じにされるよりは良かった。それではベタすぎる。

よくある映画なら、ジョイは体を手に入れて量産型ではなくなり、Kとこの先も幸せに暮らし、デッカードとKは感動の再会、これからは親子としてよろしくみたいになると思う。それか、親子と認識して、デッカードがKを守って死ぬとか。
そんなよくあるパターンはことごとく裏切られたが、この物悲しさがとても良い。ひんやりした肌触り。ディストピアの世界観とも合ってる。
よくあるパターンのハッピーエンドでは空が晴れていそう。ディストピアな未来はそのままなのだ。

結局、人間対レプリカントの対決は終わってない(Kはデッカードの殺害をたのまれていたが無視していた)し、レプリカントが繁殖ができるできないもわからない。ステリンがどうやって生まれたのかも謎のままだ。
デッカードが人間だから、レイチェルとの間にハーフのようなものとして生まれたのかもしれないし、レプリカント同士でも愛があれば繁殖が可能とかロマンティックな理由かもしれない。

そして、レプリカント同士での繁殖を夢見ていたウォレス(ジャレット・レト)も野放しのままである。野望を抱えたまま、この先も研究を続けるだろう。それどころか、本作ではウォレスの出番はそんなに無かったかなと思う。前日譚のほうが出番が多かったくらいではないかと感じた。

上映時間が163分と長い割にいろいろと解決してない。でも、考えてみれば、前作も別に解決していない。侵入者を倒しただけだ。

大枠として世界があって、その世界自体は変わらないけれど、その中で起こった一つの事件が解決したという感じなのかなと思う。
たぶん、本作でウォレスを倒す的な結末を迎えたところで、違う人が現れてレプリカントの研究開発をしそうだし。もう、そういう世界なのだと思う。
レプリカント殲滅しましたね、人間だけになってめでたしめでたしという話ではない。
それよりは、あの世界の中でのKの個人的な話でよかったと思う。

それとも続編を作る余地を残したのかもしれない。

ディストピアな世界観がどれも美しかった。
私は、汚染されたラスベガスが特にぐっときました。砂煙なのかスモッグなのか、視界が悪く、変に赤い。有毒っぽさが伝わってくる。

裸の女性の巨大な像だけは残っていたが、朽ち果てた猥雑さがとてもいい。
デッカードが住処にしていた遊興施設もよかった。地下の劇場のようなところで、ホログラムのエルビス・プレスリーがショウを繰り広げているが、壊れていて映像も音楽も途切れ途切れになっていた。ジュークボックスもホログラム式だった。

美術はどれも美しくて、それを観るだけでも大満足。私は通常2Dで観てしまったけれど、できればIMAXのほうがいいのではないかと思う。
ウォレスのレプリカント工場の無機質さと不気味さも素晴らしく、少ししか出てこなかったけどもっと見たかった。特に予告編でも流れていた、ビニールの中から新しいレプリカントがずるっと落ちてくるのは、そうやって生まれるのかとレプリカントの製造の一端が見られて興味深い。ジョイとのラブシーンもそうだけど、このように、存在しないものを一から作り出している映像を見ていると、頭の中を覗いてみたいと思ってしまう。新しい映像の宝庫だった。


『シタデル』



2012年公開。アナイリン・バーナード主演でたぶん唯一日本で観られる映画。
ジャケットからはホラーかと思われたし、たぶんジャンルとしてはホラーなのかなとも思うがあまり怖くはない。

トミー(アナイリン・バーナード)は、住んでいたマンションから、臨月の妻との引越し作業中、妻が何者かに襲われる。赤ちゃんは助かるものの、妻は死亡。
以降、何者かの影に付きまとわれ、怯えて暮らす日々を過ごすが…という内容。

最初のほうで、事件の被害者同士が集まるセラピーのようなものに出ていて、被害者が再び被害に遭う可能性が高いのは被害者オーラが出ているせいだという話をされる。
だから、トミーは妻が殺される不幸な事故の後遺症のような感じで、強迫観念にかられているのかと思った。襲ってくる何者かも妄想。

しかし、病院で優しくしてくれた看護師さんが「大丈夫よ、怖くないところを見せてあげるわ」と言って何者かの集団の中に入って行って、結局本当に殺されてしまった。看護師さんはもちろん強迫観念にとらわれていないから、何者かは本当に存在するということになってしまったのだ。

また終盤、看護師さんが「病気なのよ」と言っていた神父の言うことが正しいとも証明されてしまった。彼女が唯一まともっぽかったので彼女の言うことを信じたのに。

トミーの住んでいたマンションが悪の巣窟みたいな感じになっていて、最後には爆破して事なきを得ていたけれど、トミーは長らくここに住んでたんですよね? 今までおかしいことは起こらなかったのだろうか。他の住民はいなかったのだろうか…。
序盤で妻にキスするトミーは幸せ真っ只中といった具合だった。何も心配事などなさそうだった。さすがにあれだけの悪の巣窟なら気づきそうだけど。

怯えや強迫観念、恐怖心を抱くことで異形の者たちに見つかるようだったから、今まではそのような感情がなかったから気づかなかったということだろうか。

ラスト付近では心を強く持つことで、異形の者たちの中を見つからずに歩いていた。これは、妻が殺されてしまったことで生まれた恐怖心などを克服して強くなったという捉え方でいいのだろうか。異形の者たちは何かのメタファーなのかもしれない。
でも、もしそうならば、看護師や神父を殺すのはやめてほしかった。特に看護師までも殺されるのは理不尽すぎるし、話の中でも必要性を感じない。トミーのサポート役兼ほのかなラブ要員として活躍させてほしかった。
神父はそのマンションに因縁があったようだから殺される必要もあったのかもしれないけど、そこまでの怨念マンションなら、トミーが幸せに暮らしていたのも疑問。

強迫観念とか恐怖心の克服をテーマにするか、本当に異形の者が存在して邪悪にどんどん殺していくホラーにするか、どちらかに振り切ってほしかった。中途半端です。

ゾンビものにしても、ゾンビが走る走らないとか、頭を撃ち抜けば死ぬとか、噛まれるとゾンビになるとかルールを徹底してくれないとおもしろくない。ホラー自体をそれほど観ているわけではないからわからないけれど、ルールが徹底されていないと世界観に入り込めない。この映画は異形関係でのルールも徹底されていなかったと思う。この点でも中途半端。

ただ、アナイリン・バーナードはとても良かったです。終盤以外は赤ちゃんを抱きしめて怯えている。守ってあげたい感じ。
たぶん看護師も同じ気持ちだったのだろうけど、目をつぶって怯えているトミーに口づけるシーンがあって、すごく共感しました。

アナイリン・バーナードは2009年にローレンス・オリヴィエ賞主演男優賞を受賞してるのに、もっとそれが活かせる映画を…と思ってしまいました。
中盤までは、赤ちゃんを抱いてはいるけれどほとんど一人芝居なので、演技は堪能できる。けれど、ストーリーがこれではもったいない。


監督は『ジョン・ウィック』の のデヴィッド・リーチ。『デッドプール2』の監督も決まっている。

ベルリンの壁崩壊の裏で起こっていた各国スパイの暗躍が描かれている。グラフィックノベル『The Coldest City』が元になっているらしい。

シャーリーズ・セロンが女スパイを演じる。ジェームズ・マカヴォイとビル・スカルスガルドが出ているが、マカヴォイはイケメン枠ではないと思う。
他、ジョン・グッドマン、トビー・ジョーンズ、エディ・マーサンというアクの強い俳優が揃っている。

以下、ネタバレです。









シャーリーズ・セロン演じるMI6のロレーンが任務について報告しているのを上司とCIAが聞きとりをしているという作りなので、本編中にロレーンがピンチになっても、でも過去の出来事だから死にはしないんだなと思いながら観ていた。

東西冷戦のスパイ物というとちょっと重めだったり暗くなったり地味になったりしそうだが、この映画は色合いが青みがかっていたりと独特でおしゃれ。
また、曲がいいと聞いていたので、わざとサントラの曲目は見ずに臨んだら(ライブ前に他のライブハウスのセットリストを確認しないのと一緒)、一曲目からニューオーダーの『ブルーマンデー』で盛り上がった。他、デヴィッド・ボウイやジョージ・マイケルなども使われている。
色合いや曲から、所謂冷戦物ではないなと思ったが、最初にベルリンの壁が崩壊した時のレーガン大統領の演説を流して、これとは関係ないですと言われていたので別物なのかもしれない。

シャーリーズ・セロンのアクションも恰好よかった。
仲間らしい仲間は出てこず、常に単独で複数を相手にするバトル。でも、女一人で複数の男を倒さなくてはならないので、単純に銃や腕力というよりも、相手が持ってる武器を奪ったり、避けた拍子に流れで攻撃したり、鍵で顔を刺したりと、知恵を絞っていた。
中盤のスパイグラス(エディ・マーサン)が撃たれてからの長回しは迫力があった。7分半らしいがもっと長く感じた。ロレーンもかっこいいだけでなくさすがに疲弊してきていて、なんとなく『フリー・ファイヤー』を思い出した。這いつくばって銃を撃つあの感じ。顔や服も汚れてくるし、殴る時には声も漏れる。体裁など気にしてられない。ズタボロになりながらもなんとか攻撃する。

ジェームズ・マカヴォイは少し前まで可愛い系のイケメン俳優のイメージだったけれど、『フィルス』っぽい役が増えてきていて、今回もそっちです。サイコっぽい。髪型はシニード・オコナー(と映画内で言われてた)。スキンヘッドですね。最初にベルリン支部にこんな男がいるよって紹介ではイケメンマカヴォイだったんですが。

代わりといってはなんですが、ビル・スカルスガルドが恰好よかった。そこまで出番のないサポート役ですが、仕事が確実そうで信頼できる男役。
ビル・スカルスガルドは『IT イット“それ”が見えたら、終わり。』もそろそろ公開される。ほぼピエロメイクだと思いますが…。

ソフィア・ブテラはフランスのエージェント役として出演。ソフィア・ブテラは『キングスマン』のガゼル、『スター・トレック BEYOND』のジェイラ、『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』のアマネットと、素顔を見せかったり、少し変わった役が多かったけれど、今回は諜報員になりたての女の子ということで、私が見た彼女の中では一番キュートな役だった。
一応、ロレーンと関わりのある男性としてはマカヴォイとスカルスガルドなんですが、シャーリーズ・セロンとこの二人よりも断然ソフィア・ブテラとのベッドシーンが見たいよな…と思っていたら、ちゃんと入っていて大満足でした。

ロレーンが主人公でシリーズ化もできそうだなと思ったけれど、彼女はMI6ではなくCIAだったという一応のオチがついてしまったのでここでおしまいっぽい。でも、真実を知らされたところで、そうですよねという感じもする。というのも、シャーリーズ・セロンはどう考えてもイギリス人ではないし、イギリス人っぽくもないから、トビー・ジョーンズの部下としてMI6で働いているという設定からして違和感をおぼえたからだ。
そして、KGBとMI6との二重スパイでもあったということで、壁崩壊にも一役買っていたという…。序盤で関係ないよと言われていたが、やっぱり関係あった! 結局冷戦物だったが、映像・音楽のスタイリッシュさからか、またグラフィックノベルが元になっているからなのか、重厚さはなく、軽いかなと思う。冷戦スパイ物だと思ってしまうと物足りないが、ストーリーよりはシャーリーズ・セロンの美しさなど、映像や音楽で堪能できる部分が多かった。




BBC Oneにて放映中のトム・グリン=カーニーが出演しているドラマ。アデン危機の話。全六話の四話感想。

一話、二話感想
三話感想


以下、ネタバレです。





前回の最後でさらわれたハリー少佐の息子ジョージ捜索回。
ハリー少佐はつかまえられているゲリラに息子の居場所を聞くが、それなら国から出て行けと言われているようだった。テロリストと交渉するか否かは次回の焦点になるのかも。

エドはジョージに関しての危険な取引をしていて、情報を得て行動する。ジョージを一旦発見するが、結局撃たれてしまう。重症。

ジョーはジャーナリストから情報を得ようとするが失敗していた。それどころか、ジャーナリストが泊まっているホテルに入っていくところをBPクラブにいた人(?)に目撃されてしまう。

オナーはアリソンと同じく、仕事重視の夫に不満を持ち始める。イギリス兵士の死体が写っているフィルムについての話は聞くが、破棄したという言葉が信じられずに探して見つけてしまう。これは絶対に後のいざこざの元になりそう。

アリソンが双子を妊娠していることが明らかになったが、死んだ大尉の子らしい。自分で棒か何かをつっこんで流産させようとしていたができなかった。マーティン大尉の妻オナーと一緒に病院に行っていた。初回の時点ではこの二人が友達になることで、何か悪いことが起こるのではないかと思っていたが、いい方向へ進んで行っているかもしれない。

トニー(トム・グリン=カーニー)はもう今回は笑顔はないです。
前半は砂嵐の中、マスクをしてユースラの住む家を捜索。悩みながらも母と兄(弟?)を逮捕。その影で父親を撃ち殺しているので、二人からイギリス側への信頼はない。たぶん、ユースラもこの事実を知ったらトニーのことを信じられなくなると思う。
ジョー・マーティン大尉にユースラと手紙のやりとりをしていたことを知らせていた。それと同時に、彼女のことが好きだったことや、彼女は悪くないようなことも言っていたようだった。しかも、命を賭ける、と。簡単にそんなこと言っちゃいけないよ。青臭い…(かわいい)。
大尉にも言われていたけれど、恋心由来であまりにも幼いと思う。若手らしいし、純粋で可愛いけれど、信じすぎるのは命取りなのかもしれない。
今回も一人でユースラの家に行っていた(母と兄(か弟)には追い返されていた)が、次回予告を見ると、銃を向けられながら敵の只中に一人で入っていくシーンがあった。文字通り命を賭けるのか…。
エドは撃たれただけで死んでしまったかどうかは今回の時点ではわからないけれど、主要キャラがわりとどんどん死んでいくスタイルのドラマなので、次回のトニーは大丈夫なのだろうか。心配。
今回はひたすらつらい回だったけれど、タバコシーンはありました。

というか、ジョージの誘拐をこのドラマの中心に置くならば、愛の力で交渉を試みるトニー・アームストロング(トム・グリン=カーニー)が実質主役でもいいんじゃないですかね…。



現在丸の内ピカデリーにて行われている爆音映画祭に行ってきました。
『インセプション』自体は好きなので家でも何度も観てるんですが、映画館で観るのは久しぶり。たぶん、『ダンケルク』絡みだとは思うけれど、とりあげてもらって嬉しかった。
映画の内容にも触れますので一応、以下ネタバレありです。









まず、最初の制作会社のロゴが出て、次第に音が大きくなっていくところからして迫力。普通に聞いていてもちょっと割れ気味だけれど、さらに強調されていた。
サイトーの屋敷から一階層上がった場所での暴動と爆発も迫力があった。

テーマ曲が最初のキックに向かって盛り上がっていくのも堪能できた。このテーマ曲は後半の第一階層でユスフが橋から飛び、第三階層でフィッシャーがモルに撃たれてインセプションが失敗するまでの間、ずっと流れているんですが、それも曲がより強調されているようで、階層同士がばらばらではなく全て繋がっているのがよりわかってよかった。
『インセプション』、好きなんですが、ハンス・ジマーのスコアもとても好きなのだというのをあらためて思った。

アリアドネと一緒に夢の中へ行った時に、動揺して周囲が爆発しますが、そこのポスン、ポスンという音も意外と軽い音でおもしろかった。爆発するけど轟音じゃないのが夢の中っぽい。

モンバサもおもしろかった。最初の音楽が一旦静まって、コブがカフェのような場所でコーヒーをくれと店員に言うがうまく言葉が通じないのか逆に騒がれてしまい、追っ手に見つかってしまうシーンがある。そのあと、モンバサのテーマ曲がひときわ大きくなるのが興味深かった。また、ここは銃撃戦(というか一方的に撃たれるだけですが)があるが、銃声がクリアになっていてこだわりを感じた。多分、これは『ダンケルク』の爆音上映もいいに違いないと思いました。

あとは、フィッシャーを救いにコブとアリアドネが虚無(Limbo)に落ちるシーンですね。ブォーン、ブォーンという音がばりばり言っていて、さあここが最終地点ですよ!感でかなりの盛り上がりを演出していた。

ラスト、飛行機から降りて入国スタンプを押してもらった後のスコアも次第に盛り上がってくる系のものですが、ここでもその盛り上がりの幅が強調されているようで良かった。ジェームズとフィリッパが振り返る前までのところです。最後のコマのシーンに向かって音楽が小さくなっていくが、その前のシーンが過剰にドラマティックになることによって、違いが出て、ラストが強調されていると思った。

エンドロールのエディット・ピアフもクリアに聞こえて、満足感が高かったです。

エンドロール中もコマの回る音は続いていて、エディット・ピアフで目を覚ますというようなことがよく言われてますが、その辺はよくわからなかった。

あらためて観て、やっぱり最高におもしろいと思った。アイディアの宝庫で、本当によくこんなこと考えつくな…というのの連続で、なんども観ているのに驚いてしまう。後半なんて10時間寝てるだけなのに、全部夢の中であんなに豊かな世界が作り上げられている。

第一階層でユスフがシャンパンを飲みすぎたせいで大雨が降っているのも面白いんですが、第二階層の瀟洒なホテルはどうですか。キャラクターもスーツを着て、髪をまとめているのも良い。第三階層は雪山ですよ。お揃いの白いスキーウェアと白い毛糸の帽子もお似合いですね。虚無の無機質感あふれる建物も素敵。
どこを見てもいいものしか映っていない。うっとりしてしまう。

前半の仲間探しもおもしろい。アーサーは想像力がないと言われていたけれど、本当に想像力がない。作戦をストーリー仕立てで考えることができないんですね。人の気持ちを考えられないというか。だから、無重力でのキックは一人でよく思いついたと思う。
アーサーと正反対なのがイームスで、フィッシャーはこうこうこうしたらこうなるはずだって全部考えられるんですね。第三階層でもフィッシャーが撃たれ、サイトーが死にそうで、コブとアリアドネが虚無に落ちても一人で立ち回っていた。メンバー内で一番よく働いている。

それより何より、イームス時代のトム・ハーディがすごくチャーミング。最近『ダンケルク』ばかり観ているせいで、ついファリアと比べてしまいますが、ファリアの無骨さも好きだけれど、イームスはいたずら心もあって、飄々としていて、でも仕事はしっかりきめるあたりがいいキャラ。あと、トム・ハーディ自体が細く、笑顔が可愛かったり、全体的に美形として通用する。

また、キリアン・マーフィーにしても、『ダンケルク』の不安定でかわいそうな役もいいんですけれど、市場を独占しようかという巨大企業の社長の一人(たぶん)息子ということでおぼっちゃんでとてもいい。夢の中から抜け出そうと、銃で頭を撃とうとするけれどぷるぷる震えていたり、第三階層の雪山で「どうせならビーチの夢にしてくれ!」ってサイトー突き飛ばしたり。

キャラクターもいい、話もおもしろい、美術も良ければ音楽もいい。本当に好きな映画です。