1990年の映画のリメイク。原作はスティーブン・キングの小説(1986年)。
一言で言ってしまえばピエロが怖いホラー映画だけれど、本作はその実、青春映画である(旧作は未見)。
特に、今年公開された映画『パワーレンジャー』のような、それぞれに悩みを抱えたスクールカーストでも下のほうになりそうなはぐれ者たち(この映画では“Losers(負け犬たち)”と言われている)が好きな人にはたまらないと思う。また、彼らがまだまだ少年なのもたまらない。

ただ、ピエロが怖いことには変わりないので、ペニーワイズ役のビルスカルスガルドの素顔(イケメン)を思い出して乗り切りました。

以下、ネタバレです。











『パワーレンジャー』はヒーロー物でありながら、彼らがなかなか変身しないことで賛否両論だったようだが、私はもういっそのこと、返信しないで彼らの日常だけ見せて欲しいというくらいに思っていたので賛成側でした。今作もホラー要素はもっと少なくしてくれても良かった。

いじめっ子から逃げたり、いじめられているところから助けたりして、はぐれ者たちが次第に集まっていく展開も良かった。全員揃ったところで、川に飛び込むシーンの甘酸っぱさには泣いてしまった。『パワーレンジャー』でも水に飛び込んでましたね。水に飛び込む青春映画は良作という法則ができつつある。『スイス・アーミー・マン』然り。

ただ、こうゆうきゅんとしてしまうような日常シーンの合間合間にホラーというか、非日常のピエロが混ぜ込まれているので余計に怖い。

ベバリーの家の洗面台の排水溝から声がして覗き込んでいたら髪の毛が中から出てきて引っ張られるシーンは本当に怖かった。その後、大量の血が排水溝から噴出して、バスルームが血まみれになる。個人的にはここが一番怖かったかもしれない。

でも、その風呂も友達みんなで掃除をする。そして、そこで流れるのがThe Cureの『Six Different Ways』という…。これが青春映画じゃなくてなんなんですか。

そのあと、みんなで不良グループに石を投げるシーンがあるんですが、その時の曲がANTHRAXという。XTCも使われてました。80年代が舞台ということでこのような選曲になっているのかもしれないけれど、良かったです。

怖かったシーンは他に、止まらなくなったスライドのシーンでしょうか。これは予告にも出ていて、風で女の人の髪の毛が舞い上がって顔が隠されているのですが、次第にピエロの顔が見えてくる。予告の時点で怖いと思っていたのですが、この後、スクリーンから巨大なピエロが出てきてさらに怖い。
あと、個人的に動きが速くなるのが怖いんですが、結構何度か出てきて怖かった。

屋敷探索のシーンでも、ところどころに出てくるのが怖い。あんなに怖くなければ子供たちの肝試し感覚でほっこりシーンとして見られるのに。
ただ、びっくり表現(急に大きい音とともにバン!と出てくるやつ)はあっても、基本的に出てくるものと思って構えているから、椅子に座りながらビクッとすることはなかった。もっとタチが悪い驚かせ方をしてくる映画はたくさんある。

結局、大筋は主人公のビルが行方不明になってしまった弟のジョージーを探すことが目的なので、他の友人たちは巻き込まれた感はある(ちょっと『インセプション』で結局コブが入国するためにみんなが付き合わされただけでは…みたいなのを思い出した)ので、ラストの「僕を置いて逃げて!」という場面ではどうするのかと思った。でも、リッチーが熱い言葉を吐いて、みんなで協力して恐怖に打ち勝つ。私はリッチーが一番好きでした。ドラマ『ストレンジャー・シングス』にも出演しているとのこと。

ただ、ビルがジョージーを探すためにピエロを倒すという単純な話ではなく、その裏に、子供達による恐怖の克服という面もある。
一人一人の日常はそれはつらいのだ。悩みもたくさんある。怖い絵や病気、両親を火事で亡くしたこと、親からの虐待、いなくなってしまった弟…それぞれが抱えている暗い出来事や心の闇。
それは友達と一緒なら忘れられるし、克服もできる。

それでも最後にそれぞれが散り散りになってしまう切なさは少年期の終わりを意味しているのかもしれない。
最高のジュブナイルムービーなのに、これがR15というのはもったいない。怖くない版を出して欲しい。でも克服する恐怖の象徴としてのピエロだから、ホラー要素を除くわけにはいかない。

黒人のマイクやラビの息子スタンリーについてはもう少し掘り下げて欲しかった。
軽口をたたいて乗り切るリッチーについても掘り下げももう少し欲しかった。のらくらかわしながらも、最後でぐっとくるセリフを吐くというキャラクターの時点でいいんですが。

そして、最後に第1章という文字が出る。
少し前に二部作だとは聞いていたんですが、一応終わるし、最後にやっと第1章と出ることから考えても、二部作というのは事前には知りたくなかった。最後にタイトルと一緒に第1章と出た時点で絶望感に包まれたかった。最後にピエロの笑い声も聞こえる。まだ死んでないよー終わってないよーというお知らせでもある。

でも、大人になってはいても、またLosers clubのあいつらに会えるというのは嬉しい。はやく観たい。
(『パワーレンジャー』の続編も待ってます)

俳優関連では、すごく怖いいじめっこのヘンリーを演じていたニコラス・ハミルトンは『はじまりへの旅』の一人だけ妙にさめてる弟さん役だった彼でした。確かに同じ顔。少し意地悪っぽい顔だと思っていたけれど、こんな本格的ないじめっこの役をやるとは…。
(自分が書いた『はじまりへの旅』の感想を読んだらニコラス・ハミルトンについて、“小さい頃のリヴァー・フェニックスにも似ている。テオ・トレブス系の顔”と書いているけれど、もうちょっと意地悪顔方面に育っちゃったかなーという印象…)






MCU17作目、『マイティ・ソー』としては3作目。
とはいえ、『マイティ・ソー』の前2作とは作風もだいぶ違うし、復習の必要はなさそう。でもそれよりはMCUを観てないとわからない部分がいくつかあるが、そっちの復習のほうがソー・シリーズを振り返るより数倍大変。
でも、中でも『アベンジャーズ』シリーズだけでも観ておいたほうが楽しめると思う。笑いどころが過去作関連だったりするので…。
でも『アベンジャーズ』シリーズを観るためにはどちらにしてもMCUを振り返っていかないとわからなかったりするのでどうにもならない。『アベンジャーズ』の一作目だけでもという感じはする。

監督は『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』のタイカ・ワイティティ。
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』は未見なのですが、本作はおそらく監督の色が濃く出てるのではないかと思う。系統としては『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』です。あれも、ジェームズ・ガン色なので。

以下、ネタバレです。











『マイティ・ソー』の前2作は、アスガルドから地球に来た王子が女性を好きになって…という感じで、ラブストーリー風味が強かったように思う。
それでも2作目は王子様のイギリス観光メイン(という印象)なのと、ジェーンの家の入り口のフックにムジョルニア(ソーのハンマー)を引っ掛けるなどコミカルな面もあった。

ただ、ソー自身の馬鹿真面目さが作品のトーンになってしまっていた。それは王子として必要ではある真面目さなのだと思うけれど、ちょっとかたい印象だった。もしかしたら、ジェーン役のナタリー・ポートマンのせいかなともちょっと思う。

本作では前作でジェーンと別れたのでナタリー・ポートマンは出てきません。地球もほとんど出てこない。これも良かったと思う。
オープニングからソーが網の中に捕まっていて、しかもこれはワザとだというようなことをカメラに向かって話しかけてくる。さながらデッドプールである。

そして、鎖に吊るされたまま悪いやつの口上を聞いていたのだが、その鎖が回転しちゃって、ごめんちゃんと聞いてなかったみたいなことになって…。
そのシーンいる?という無駄感とくすっと笑っちゃう感。最初のこの雰囲気が作品全体のトーンになっている。

そのあとに入るアスガルドで上演されているロキを讃える芝居もめちゃくちゃ。趣味の悪い、ロキのでかい銅像の下でロキの死を美談として受け継ぐ芝居が屋外劇場で演じられている。ここでのソー役がクリス・ヘムズワースの実際の兄のルーク・ヘムズワース、ロキ役がマット・デイモンというこのふざけ方。最高です。
演じさせていたのがオーディンに化けたロキだったんですが、今回、ロキがとにかく可愛い。

今まで、悪役なんだけどなんかかわいそうだった…という印象だったけれど、今作ではロキの愛されキャラっぽさが作品の中でとても目立っている。たぶん、監督がロキを好きなんだと思う。

悪いやつなんだけど、結局イタズラの範囲なんですね。しかも、兄の気を引こうとしてやってるフシがある。
あと、弟ならではのちゃっかりさと狡猾さを持ち合わせている。

本作はアスガルドで姉のヘラが大暴れしてるんですが、兄弟は辺境の地サカールへと飛ばされる。
そこでロキはちゃっかりしてるからグランドマスターの懐にすっと入ってしまう。ソーは闘技場で戦わされてるというのに。
でも、ああ、ロキならそうするだろうなーというのがよくわかる。
ハルクが出てきて怯えるのは『アベンジャーズ』一作目でのことを思い出してるのだと思いましたが、ハルクがソーの足をもって左右の床にバンバン叩きつける様子で「イエー!」となっていたのも一作目の自分が受けた仕打ちを思い出していたのだと思う。

ソーが話す「8歳のとき、蛇が好きな俺のもとに蛇に化けたロキが来て、近くで元の姿に戻って刺した」というほっこりエピソードも、映像はなく語られるだけだけどその様子が容易に想像できる。子供の頃から、今まで何回もそんな目に遭ってたんだろうし、はたから見ていると、結局じゃれているようにしか見えない。
そして、この語られるエピソードはクリス・ヘムズワースのアドリブだという…。

最近だと『お!バカんす家族』や『ゴーストバスターズ』でコメディっぽい役もやていて、意外さとギャップで笑ったんですが、もしかしたらすごく愉快な人なのかもしれない。

ホログラムのロキにぽいぽい石を投げつけているのもおもしろかったけど、本人がそこにいるか確かめるために別のシーンでも物を投げつけるのもおもしろかった。がつんと当たってた。
そのシーンでは笑うんですが、最後に「ここにいたらハグするのに」と言って投げた物をキャッチして「いるよ」というシーンはグッと来た。物を投げつけるのが三回出てくるのもおもしろいんですが(天丼…)、ここではいなかったりがつんと当たったりはせずにキャッチするのもいい。この後、ちゃんとハグしてもらったんでしょうか。

結局、ソーとロキは仲がいいですよね。兄弟だもんね。
助けて作戦もすごく笑った。ロキがぐったりしてて、ソーが「怪我人なんです!助けて!」と言って相手が油断したところにロキを投げつけるという。
これ、兄弟が協力しないとできない技だし、話しっぷりからして今までも何回もやってきてるようなんですね。今までの作品以上に二人の一緒に過ごしてきた時間の長さと絆の深さが感じられた。
しかもこれが壮大な話ではなく、ちょっとしたエピソードやくだらない話を通して感じられるのがうまい。

今までのアベンジャーズシリーズやソーシリーズを観ていて、ロキについては様々なおかしな想像をしていたけれど、想像の上をいく可愛さだった。

ソーはきっとここまでもロキに相当苦労させられていたんだろうなというのも想像に難くないんですが、今回はハルク/バナーもかなり面倒。
ハルクとバナーはどうもお互いを嫌い合ってるみたいで、ソーはハルクの機嫌をとるために「バナーより君の友達だよ」と言い、バナーの機嫌をとるために「ハルクより君のほうが」と言う。どっちも大事だろうし、協力してもらいたい気持ちが本心でも、どっちも大事では彼(ら)は納得しない。だから「君のほうが好きだ」と嘘をつく。
ハルクもバナーも、「どうせ僕なんて…あっちのほうが好きなんでしょ?」みたいな感じでまるで面倒くさい彼女である。「そんなことないよ!」と必死で取り繕うソーの苦労が見えておもしろかった。ただでさえ、ロキ(と今回はヘラ)に苦労させられているのに大変。

ハルクについては予告にもバンバン出ていたから知っていたのですが、本当なら知りたくなかった。本編では、闘技場でのソーの相手、グランドマスターの隠し玉についてはだいぶもったいつけられるので。
ただ、バナー姿のシーンがあんなに多いと思わなかったからそれは嬉しかった。今回もハルクのモーションキャプチャーもマーク・ラファロなんだと思いますが、緑の粉末みたいなのをかけられたバナーは本当にハルクに見えてなるほどと思った。

バナーが出てきたときにすごく怯えていて、それが違う星にいるからだとわかったときには納得した。地球の普通の研究者が目覚めたら違う星にいるんだからそりゃそうですよね。なんとなく、『スター・ウォーズ』とか違う星で人間と宇宙人が普通に暮らしていてもおかしくないファンタジーSFのつもりで見ていた。
スタークの服を着てるバナーも可愛かった。デュラン・デュランの『RIO』のアルバムジャケットTシャツだった。とてもスタークっぽい。

本作はどちらかというとキャラ萌え映画だと思うんですが、サカールを抜け出すとき、宇宙船での撃ち合いではなく、追っ手の宇宙船の上に乗って生身の人間が戦うというアクションも楽しかった。

また、序盤でムジョルニアを壊されているから、ソーには武器がない。だから、自身が最終兵器というか、力を解き放って雷を操りながら戦うのもかっこよかった。短い髪も似合ってる。

ただ、それでも全員束になってかかってもヘラには敵いそうにない。それで、最初に倒した敵をアスガルドに復活させ、星もろとも滅ぼすという…。乱暴だけれど仕方ないのか。宇宙船で逃げ出した民たちは故郷を失い、難民になってしまった。

予告でレッド・ツェッペリンの『移民の歌』が使われていて、本編中でも戦いの盛り上がるシーンで使われていて恰好良かった。最近は予告で使われていても本編で使われないことも多いからうれしかった。
和訳を見ると、本編の内容とも合っていて、まさに主題歌である。

ソーは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で帰ってくる、とのことでMCUはまだまだ続く。一応、2018年4月27日公開予定とのこと。
そういえば、今回、ドクター・ストレンジもちょっと出てきた。『ドクター・ストレンジ』の本編のおまけ映像で、ストレンジがソーに魔法の力でビールを注いであげるシーンがあったけれど、本作ではあれが本編に入ってました。おまけシーンがそのまま本編に入るのも珍しい気がする。
それ以外にもストレンジの魔術に翻弄されるソーがおもしろかった。ソーはビールこぼしまくるし、ストレンジのアジトの物を壊しまくる。雑。性格が合わなそう。

MCUとしては次は2018年3月1日(日本公開日。アメリカは2月16日)の『ブラックパンサー』かな。最近公開になったポスターも恰好良いし楽しみです。



BBC Oneにて放映中のトム・グリン=カーニーが出演しているドラマ。アデン危機の話。全六話の最終話感想。

一話、二話感想
三話感想
四話感想
五話感想

以下、ネタバレです。











前回の最後で逮捕されたジョーの裁判が中心の回。
逮捕されたのはフィルムを隠していた件かと思っていたけれど、ゲリラ(NLF?イエメン国民解放戦線)のリーダーを解放した件だった。エドはハリーの息子を助けるためだったと証言していた。
クリスマスの日にジャーナリストの女と会ってた理由も聞かれていて、関係ないだろうに…と思ったけれど、前回オナーが単独でジャーナリストに会っていたから、余計なジェラシーもなく。しかもオナーの人懐っこい性格のせいか、意気投合とはまではいかないけれど、ちゃんと信用してもらっていたのがよかった。フィルムを返したせいかも。結局、彼女の助けでジョーも無罪に。このジャーナリストは本当に厄介だと思っていたけれど、最後には男らしい(女性だけど)面を見せた。利害が一致すれば強い。
これで、大団円かと思いきや。

今回、最序盤でトニー(トム・グリン=カーニー)がユースラを探しに基地を出ていってしまう。
ユースラの家が燃やされているのを見て取り乱すが、前回出てきた情報屋のような男性がユースラはここにはいないと言う。
ターバンを巻いて(ターバン姿も恰好良い)探しに出て、一話で逃げてすっ転んでたあたりかな。簡易的な家を作っているユースラを見つける。
見つけた瞬間にいきなり「I love you」と言っていた。英語ではなくアラビア語です。
ここにいちゃいけないとか、あなたには危険な場所だとかいろいろ言われてもそばにいるのが男らしい。

そして、最後のほうにはキスシーンも! トニーどうなるかと思ったけれど良かった…。
というか、このキスシーンがちょっと稀に見る綺麗さで驚いた。後ろから夕日が当たっているというシチュエーションも神々しいまでなんですが、トム・グリン=カーニーが贔屓目で200パーセントくらいアップしてるにしてもめちゃくちゃ美しい。
傾けた顎のラインに惚れ惚れしてしまって、一時停止して30分くらい眺めていました。素晴らしい。こだわりがないとあの角度では撮れない。

このキスシーンにしてもそうなんですが、一話の転んでの大股開きとか前回のやさぐれとか、トム・グリン=カーニーに関してはもう全体的にちょっとフェチシズムすら感じられる撮られ方をしていた。
贔屓目だけではないと思うけどどうだろうか。

しかし、そのキスの後、油断もあったのかもしれないがユースラは丘の上で何者かに撃たれる。たぶんNLFだと思うけれど、正体は明かされない。同じ場所にトニーも出て、「僕のことも撃てよ!」と叫ぶが弾は飛んでこない…。ユースラが殺されたこともつらいが、自分は死ぬことすら許されないつらさ。

ジョーたちの隊はイエメンを離脱する。旗をおろしていたし、交代ではなくイギリス軍自体が撤退するのかもしれない。
けれど、トニーは戻ってこず、ジョーが「カモン、アームストロング」と呟くシーンで終わるという…。
全六話といっていたし、次回予告がなかったからこれで最終話ですね。

トニーだけ残されてしまうのだろうか。
それとも、あの後、一話のようにふらふらと帰ってくるのだろうか。それで、一話のジョーに「遅いぞ。アームストロング」と言われるのだろうか。

このあとはあなたたちの想像におまかせしますということなのか、二期に続くなのか不明。
アリソンの子供もどうなるのだろう。今回、ほとんど裁判だったからアリソンが酒飲んでタバコぷかぷかやるシーンがないのが物足りなかった。
ここまでアリソンのことを好きになるとは思わなかった。トラブルメーカーかと思ってた。

トム・グリン=カーニーに関しては上で書いた通り、申し分なし。
女性陣濃すぎる…と思っていたけれど、彼女たちも全員好きになってしまったし、60年代の服装がおしゃれで可愛かった。
軍服も半袖半ズボンで良かったです。というか、軍服とかイギリス軍とか書いてますが、ロイヤルミリタリーポリスが軍なのかいまいち不明。ミリタリーだから軍でいいのかな…。
英語でしか見る手段はなかったのでわかりにくい部分がありつつもおもしろかった。つらい部分は多いですがそれも含めて良いドラマだった。

二期、あるとして残されたトニーがイエメンでゲリラ側についたりしたらおもしろいな…。元々はハリーがユースラを守ってくれなかったのがいけないんだし。
でも一応実話ベースだしないだろうけども。
というか、全員イギリスに戻るみたいだったし二期が作りようないか。




監督はスペイン出身のナチョ・ビガロンド。
スペインとカナダの共同製作。
アン・ハサウェイ演じるアル中寸前のダメ女が巨大モンスターとシンクロしてソウルの町を壊しまくる…というあらすじだけ聞いていて、荒唐無稽でおもしろそうと思ってたけど、それとは少し違うタイプの映画だった。でも、想像していたよりもおもしろかった。

以下、ネタバレです。










アン・ハサウェイ演じるグロリアは、酔っ払って朝帰りし、同棲している彼氏に怒られて捨てられる。既視感というか、あるあるな気持ちになったのがちょっと厳しい。
この彼氏役がダン・スティーブンスなんですが、圧倒的に言ってることは正しいし怒る気持ちもわかるけれど、まともで真面目すぎる感じ。結局、彼女のことは考えずに自分のことを中心に考えているのかなと考えてしまうような男性でダン・スティーブンスに合っている。

グロリアは同棲していたニューヨークのハイソなマンションから、昔住んでいた田舎町へ戻る。そこで小学校時代の同級生オスカー(ジェイソン・サダイキス)に再会し、テレビをもらったり、自分のバーでの仕事を紹介してもらったりする。
このまま、田舎での暮らしが順調に行くのかなと思ってたところに、急遽ソウルに出現したモンスターが彼女の動きとシンクロしていることに気づく。

最初は驚いていたけれど、酔った勢いでオスカーとオスカーの友人にシンクロしている姿をダンスしたり変なポーズをとって見せていた。
突然手に入れた不思議な能力を無邪気に使う様子はアニメ版の『時をかける少女』の真琴を思い出してしまった。他人や他の事象に影響を与えない、些細に遊ぶ感じが可愛い。悪い人が能力を手に入れると悪いことに使うけれど、グロリアも真琴も根がいい子だからこんなことをして遊んでしまう。主人公にさらに愛着がわく。

ところが、グロリアは酔っていたので、転んでしまう。ソウルではモンスターが転んでいるのだ。被害を与えてしまったことを反省して、グロリアはもうしませんと韓国語で教えてもらってモンスターを操ってソウル市民に謝る。

これでめでたしめでたしの映画なのかと思っていたのだが、ここからがストーリーが動く部分だった。

なんと、オスカーも巨大なロボットとシンクロしてソウルの町に現れる。それだけではなく、そこから徐々にオスカーが豹変して行く。
オスカーの友人とグロリアが寝たのがきっかけだったのかもしれないけど、オスカーの中のタガがはずれる。

酔った勢いでロボットとしてソウルの町へ。グロリアはもうしませんしたのにこれはまずい。でも、追い出せるのは彼女しかいないから、モンスターになってロボットをソウルから追い払う。
ネットで配信もされてるから、良いモンスターが悪いロボットを追い払ったみたいな図が出来上がっておもしろかった。
公園でグロリアがオスカーにビンタすると、近所のネット配信でソウルの様子を見ているだろう家々から歓声が上がる。わざわざソウルの町を映さなくても、ソウル側の動きが想像できるのがうまい。

けれど、それと同時にオスカーは悪いロボット=悪い人間ということが露呈していく。バーではグロリアに無理な仕事を押し付ける、グロリアの家に勝手に入っているなどかなり怖い。

オスカーは小さい頃からずっと同じ田舎町にいて、その中では大将なんですよね。ただ、くすぶってる部分もあって、ニューヨークで成功したグロリアが許せないし、グロリアのことも支配したい。
言及はされないけど、グロリアと寝た友人もグロリアが何言われても黙ってたし、酔ったオスカーの助手席に座ったりしていた。無言で従っているのだ。たぶん、ここまでの間に従わないと殴られたりしていたのだろうと思うとつらい。殴られるだけならまだしも、あの様子だと殺されかけたのかもしれない。逆らえない。

だから、グロリアも言っていたけれど、最初はオスカーはグロリアのことが好きで、優しく面倒見てやったのに友人のほうと寝やがってこの恩知らずが!みたいな気持ちかと思ったけれど、そうではなくて、グロリアだけでなく、友人と寝たことも許せない。自分に黙って勝手なことをされるのが許せないのだ。

小学生の頃にグロリアの作った町のジオラマを踏み潰したのも、俺より上手いのは許せないみたいな気持ちなのだろうか。子供の頃からそんな感じで、大人になるに従ってその支配欲や権力志向は強くなっていったのだろう。
狭い世界の中なら、他人を従わせるのも簡単だったはずだ。

そんな人が簡単に町を破壊できる能力を手に入れたらどうなるかは簡単に想像できる。その力を使って、グロリアを脅してニューヨークに戻さないようにする。こうしてやるぞ、と言いながら、実際に町を破壊していた。

グロリアがモンスターになってロボットを止めようとしても、結局は生身の男女の取っ組み合いだから力では勝てない。
それでもソウルのことは放っておいてグロリアはニューヨークに帰ってしまうのかなと思った。勝ち目がないし。
けれど彼女が向かったのはソウル。ソウルとあの田舎町がシンクロしているなら彼女がソウルに行けば、田舎町にモンスターが現れるのだ(多少強引だけどまあ)。

逃げ惑うソウル市民の中、一人巨大ロボットに向かって行くグロリアはヒーローのようだった。そうだ、いい奴が悪い奴を倒す、この映画はヒーローものだったのだ。
オスカーを手で掴み、食べそうなくらいに口に寄せて脅したあとでぽいと遠くに放り投げていた。もうオスカーの姿もロボットの姿も見ることはないと思う。
悪者がやっつけられた時の爽快感もヒーローもののそれとまったく同じである。

ダメ女グロリアがモンスターの力を使って自分の道を切り開き立ち直る話かと思ったけれど、モンスターの力は戯れにしか使わず、中盤でまともになるのが良かった。
そして、そのあたりからのオスカーの豹変っぷりはさすがのジェイソン・サダイキス。なぜ彼がキャスティングされたかわかった。ただの親切な男なわけがなかった。

ラスト、悪者を倒したグロリアは、ソウルの店に入る。多少興奮気味に「すごい話を聞かせてあげるわ」と言う。店員さんに「お酒は?」と聞かれて、飲めるものなら飲みたいけど飲めないんだったわという顔をするのがめちゃくちゃキュート。

あんな時、ぜっっっったいにお酒飲みたいもの。ヒーローもので最後に打ち上げがない状態ですね。耐えられない。
でも、彼女と酒の関係は通常とは違う。あそこでお酒もらったら台無しである。ふりだしに戻ってしまう。
だから、酒を飲まなかったあたりで彼女がちゃんと一歩先に進んだことがわかるようになっているのだ。うまい。




フランスCanal+、イギリスSkyの共同制作のドラマ。トンネルってタイトルはドーバー海峡のトンネルのことだった。もともとはデンマークとスウェーデンの共同制作で『The Bridge』というドラマだったらしい。
見たのは2013年のシリーズ1(全10話)。来年シーズン3が放映されるとのこと。
ジャック・ロウデンが出ているので見ました。

以下、ネタバレありです。









ジャック・ロウデンはシーズン1にしか出ないみたいなのに主人公の息子役ということは、犯人か死ぬかどちらかだな…と思いながらの鑑賞だった。あんまり調べなければ良かった。
一話は1分ないくらいですが、出番は最終話に行くにしたがって少しずつ増える。

ドーバー海峡のトンネル内で死体が見つかる。退かそうとすると、上半身下半身が分かれていて、しかも別人ということがわかる。片方は議員、片方は売春婦。イギリスの刑事とフランスの刑事の共同捜査が始まる…という導入部分。

すごく猟奇的だし、一話で3人以上は死ぬという感じで連続して見ると自分の精神状態がまずくなってしまうような感じだった。社会問題を正すようなメッセージがありつつの殺人で、しかもイギリスとフランス両方を巻き込んでいっているのでどうなるのだろうと思っていたが、途中から話が小さくなっていき、結局個人的な恨みだというのがわかるので結末はどうかなと思った。残念ながら6話くらいからわくわく感が薄れていく。

主人公の妻役どこかで見たことがあると思ったら『魔術師マーリン』でグウェン(グィネヴィア)を演じたAngel Coulbyだった。あと、ジョン・シム出演のドラマ『Prey』に出ていたAnastasia Hilleが出てきた(この方はフィン・ホワイトヘッド出演の『HIM』にも出ているらしい。観たい)。あと、同じくジョン・シム出演の『Intruders』に出てきたJames Frainが出てきた。
この方は、調べると『ゴッサム』やら『エージェント・カーター』やらにも出ていて、意外といろんなものに出ているのに主演ではなく途中からあやしい感じで出てきた…と思っていたら本作の犯人だった。やはりあまり調べないほうがいい。

ジャック・ロウデンはイギリス側の刑事役の息子のアダム役。アダムは働きもせず家の手伝いもせず親とも不仲、音楽のポスターなどが貼ってある部屋でパソコンをいじっている。ニートかなと思ったんですが、途中で明らかになる(というか最初から隠されているわけではない)んですが18歳だった。年の割に幼いという役柄かと思ったら、本当に子供だった。今よりちょっと体がぷよぷよしてそうだけどそこまで風貌は変わっていないので18歳には見えない。今27歳のようなので、実際には23歳のようです。それくらいに見える。

家にいるからパジャマとは言わないけどゆったりした服を着ている。首元がわりとだらしない。『ダンケルク』だと軍服をきっちり着ているから新鮮です。
首元もそうなんですが、顎の下にもわりと肉がついていて、色も白いのでもちもちしてそうな感じ。一回、フランス側の刑事の家に泊まっちゃったりするんですが、その時は上半身裸なんですよね…。筋肉がほぼついていない。おなかとか二の腕とか触りたい裸だった。仕草も家の中で家族相手に会話をしているのでゆるゆるというか、リラックスしていて可愛い。

8話の終わりでアダムがずっとチャットをしていた元恋人のベッキーが実は犯人だったと判明して、見ながら「やだー!」と言ってしまった。ここまで、そのチャットを生きがいしにしていたみたいだし、心の拠り所が奪われてしまったらアダムはどうなるんだ。でも父との不仲も解消してきたみたいなので良かったね…と思っていたら、9話の終わりではうきうきで待ち合わせ場所に出かけていってしまう。またここでつらい気持ちに。
もちろん10話ではさらわれてしまう。そして、モルヒネを打たれて殺されてしまう。「数カ月眠ってもらう」と言ってたから大丈夫かと思ったのに…。
なんか結局可哀想なだけの役だった。これなら犯人だったほうが良かったかな…。途中からイギリス側の刑事(アダムの父)への恨みなのでは?というのが明らかになってきたときに、嫌な予感が増してきて、8話終わりからはひたすらつらかった。

ジャック・ロウデン自体の風貌はとても可愛いけれど、最後は可哀想なことになってしまうからおすすめもしづらい。
事件も序盤の雰囲気から尻つぼみになってしまうのが残念。
つまらなくはないし、フランスの女刑事エリーズ役のClémence Poésy
(クレマンス・ポエジー)の冷めていて人付き合いが苦手でみだしなみに気をつけてなくて、でも仕事はできるというキャラクターが魅力的です。でも、イギリスの刑事側に話が移るので、その面でも終盤は脇役のようになってしまう。

シーズン2もドーバー海峡のトンネル関係の話なのだろうか? エリーズ側の話なら見たい。



現在丸の内ピカデリーにて行われている爆音映画祭での上映に行ってきた。
その他、スクリプトの感想も少し。

映画の内容にも触れますので、以下にネタバレがあります。









まず最初の、兵士たちが町を探っていて急にバンバンバンバン!と銃声が鳴る部分の音はかなりびっくりするような音。知らなかったらビクッとしていたと思う。

呼吸音が聞こえやすいとのことだったので気をつけていたのですが、最初のほうのトミーとギブソンが担架を運ぶところでだいぶ目立っていた。ただ、意識して聞いたのが初めてだったので別にいつも聞こえてたのかも。
また、商船の中でのシーンは陸の人たちが唯一会話があるシーンなのですが、ここでも呼吸音が気になった。

ファリアが一人残って、残燃料と相談するシーンは誰と会話するでもないけど表情は迷っていて、音も静かだ。
そして結局高度を上げていくときのエンジン音が力強かった。まるでファリアの気持ちが示されているようだった。

コリンズが「カモン、ファリア」と言ってる終盤あたりで陸海空の時間が重なるんですが、そこは画面が変わってもずっと同じ音楽が流れていて一番緊迫感がある。陸海空それぞれが大変な目に遭っているシーンです。
『インセプション』の各階層で各々がやるべきことをして戦ってるシーン思い出す。第三階層でフィッシャーがモルに撃たれて失敗するまでの盛り上がりの部分です。

ハイランダーズがホスピタルシップから乗り換えた船が魚雷で攻撃されるシーン、ギブソンが扉を開けて沈む時に、ブオンブオンと反響するみたいな音がなっていて、その低音がすごく強調されていた。

また商船(トロール船)が沈むときにもおなじような音が鳴っていて、これも反響してるみたいな音だけど、魚雷で攻撃された船が沈む時よりも速い音でびりびりいっていた。音とともに絶体絶命感も強調されている。
そして、ここから画面が変わって桟橋に行き、桟橋でも絶体絶命。不協和音のような音がしていて、もうこれどうにもならないのでは…と思ったところで、市民たちの民間船がかけつけてくるのをボルトンが発見する。
ボルトンが「Home.」と言った後で音楽も一気に優しいものに変わって、見ている方も安堵の息を漏らす。

ここも爆音上映『インセプション』のときも思ったけれど、より落差が付いていて観ている側の感情の振り幅も大きくなった。

『インセプション』同様、銃声がかなりクリアで鋭角な音にされている印象だったのですが、爆音職人が一番盛り上がってるなと感じたのが、桟橋に多数の兵士がいて、スツーカが来たのに徐々に気づいて、ホスピタル船が爆撃されるシーンです。ここの音が一番迫力があった。

爆音以外の感想ですが、もう気付いたことはそれほどないんですが、ファリアが機体を三回揺らすのが言われてわかった。
コリンズが水面に不時着するときに、ファリアがグッドラックというように右手を三回動かすんですが、その時に機体も動かしていたのかな。別の時かもしれない。
スクリプトも読んだのですが、この時にコリンズは迫ってくる水から逃げようともがいているのですが、機体を三回揺らすのは見ていたらしい。

あと、魚雷に攻撃されたとき、ギブソンは律儀に一回戻ってトミーたちのために扉を開けてあげるんですが、商船に水が入ってきたときもアレックスはギブソンを救うために一回戻っていた。あれだけギブソンのこと責めてたのに。
銃を突きつけはしたけれど、アレックスが直接殺したわけではなく、ギブソンは逃げ遅れたんですよね…。
また、スクリプトだと、この時、アレックスはギブソンの肩を掴んでるようなのですが、直接触れてる感じはなかったと思う。もう一度観たい。

スクリプト関連だと、ギブソンとトミーが桟橋の下に隠れる時にトミーが音を出してしまって、ギブソンが人差し指を口に当ててしーっってやってるんですが、それは絶対にない。やってたらさすがに覚えてる。

また、ドーソンとピーターは仲が悪かったのではないかという話も出ていて、そうではないと思っていたけれど、ピーターが最後にジョージの記事の載った新聞をドーソンに見せたときに、顔を見合わせて頷くんですが、そのあとピーターだけもう一度ドーソンを見ていた。
あの二度見は、ジョージが怪我した時にすぐに戻っていてくれたらジョージは救えたかもしれないのにという怒りが入っていたらどうしようと思った。

でも、字幕だとあの時のセリフが「手遅れだ」になっていたけれど、これもスクリプトを読むとイギリス側とフランス側を見て、結構イギリスからは離れちゃったのでもう戻るには時間がかかってしまうよということだったらしい。
ただ単に「手遅れだ」だと、ピーターはそんなの医者でもないのにわかるのか?と怒りそうだけど、場所のことを出しているならそれもそうだと納得したかもしれない。
だから仲が悪かったとかドーソンに怒っているとかは思いたくない。

また、トミー、ギブソン、アレックスが魚雷で攻撃された船から浜へ戻ってきた時の寝姿が三人三様でおもしろかった。
トミーは大の字で、ギブソンは横向きで丸まった胎児の姿勢。アレックスはうつ伏せでもしかしたらスフィンクス型と呼ばれるような膝が曲がった形だったかもしれない。いつでも起き上がれるようにという警戒の意味もあったのかなと考えてしまった。ハイランダーだし。少なくともあの場で大の字で寝るのはトミーくらいのものだろう。

このシーンのあとで、トミーが何かの缶詰に穴をあけて汁を飲もうとして、ギブソンがちょうだいと両手を伸ばすシーンがありますが、あれは野菜の缶詰だったらしい。スクリプトを読むと直接内容に関係のないけれど詳しい部分がわかっておもしろかった。
ジョージとアレックスがだいぶ動くしよく喋ると思った。




低予算ながら全米週間興収で1位をとったり、批評サイトでもでも高評価だったとのこと。
ジャンルとしては、ホラーとかスリラーになると思うけれど、監督はコメディアンのジョーダン・ピール。キー&ピールって何か聞き覚えがあると思ったら、『キアヌ』の主演二人組のうちの一人だった。本作が監督デビュー作とのこと。
確かに、ホラーなのに、不謹慎すれすれだったり、笑える要素もあった。

ネタバレ厳禁ものなのでなるべく早めに観た方がいいと思う

以下、ネタバレです。













ネタバレが怖かったので、何も情報を入れないまま鑑賞。
最初、夜道を歩いていた黒人男性が車で誘拐されるのだが、その時に車で流れているのが、なんとも愉快な音楽なのが怖い。普通なら緊迫感があったりおどろおどろしい音楽が流れるシーンである。

しかも、なんだかわからないまま舞台が変わる。
瀟洒なマンションで音楽もおしゃれ。黒人の男性クリスと白人の彼女ローズは幸せそうで、彼女の両親に紹介するために実家に行くところらしい。
最初に誘拐されていたのは薄暗かったしクリスなのかなとも思うが少し違いそうな感じもする。

車で向かう途中に鹿と衝突する事故を起こし、車に血はべったり付くし、不吉な予感。警察も来るが、警察(白人)は運転していないクリスにも免許証を見せろと言う。
無いなら身分証でと言っていたが、私は別にこれは普通のことだと思ったけれど、ローズはクリスが黒人だからね?と言って異常に警戒する。
守ろうとしたと言っていたが、クリスが黒人だということを過剰に意識することで逆に差別している気がして、ローズはあやしいなと思いながら観ていた。

というか、ホラーとかサスペンスだとどうしても何のかはわからなくても犯人さがしをしながら観てしまう。

ローズの家に着いたら、黒人差別をしないという両親の家には黒人の召使いが二人いる。これって現代の設定ですよね?と思ってしまった。今でも金持ちの白人の家では黒人を使役することがあるのだろうか?
わからないけれど、これで「オバマの3期目があったら投票する」と言われても、嘘だろうと思ってしまったし、これで差別してないと言われても…と思った。

けれど、そんな観ている側の気持ちを察するように、父親自ら、二人を雇っている理由を説明していた。それほど納得できるものではなかったが。

母親も催眠療法を使うということで相当あやしい。二人の黒人はどこか不気味な雰囲気だったし、きっと催眠術にかけられて雇われているんだ…と思っていたら、それも見すかすように、クリスの友人ロッドが催眠術にかけられて性奴隷にされているんだ!と言っていた。
こう考えていることを先回りされてしまうと違うのかと思ったが、結果的には性奴隷ではなかったけれど、彼の言っていることは正しかった。

ローズの家に滞在中に両親の知り合いを呼んだパーティーが開かれる。この客人たちも白人ばかりでいよいよあやしい。
ローズの弟もそうだったけれど、気軽に体にぺたぺた触ってくる。確かにクリスは綺麗な筋肉をしているが、何か、「(黒人だから)身体能力が高いんでしょう?」とでも言いたそうだった。また、「時代はめぐっている!今は黒の時代だ!」とも言われていた。
歓迎ムードだし、けなされているわけでもない。けれど、ここでも特別扱いというか、白人の中に一人だけ黒人が混じっているのを腫れ物を触るがごとく対応されていた。

何かわからないけれどとても注目されている感じとか、場違いとか居心地の悪さを感じる。嫌でも他の人と違うことがわかってしまう。「黒の時代」とか言わなくてもいい。

しかも、やっと仲間がいたと思って話しかけた黒人は様子がおかしい。
自分の感じている居心地の悪さをまったく感じていない。白人のだいぶ年上のご婦人と親しげにしているからだけではない。あの不気味さは、白人だらけの状況で穏やかで幸せいっぱいの表情の黒人はいないという強烈な皮肉だったのかもしれない。

今まで、黒人差別はいけない!というメッセージのこめられた映画はいくつか観てきた。けれど、当事者の気持ちがわかったのは初めてだった気がする。
それは、なんとなく自分にも身に覚えがあることだったからだ。飲み会でもなんでもいい。行った先で、よくわからない場違い感をおぼえ、はやく帰りたいと思ったことはないか。やっと知っている人を見つけて話しかけたら他人みたいな顔をされたことはないか。

クリスは結局ローズの家に捕られてしまうのだが、そこで調査に乗り出すのが友人のロッドだ。黒人である。ロッドのノリを見ていると、白人のご婦人といた黒人男性の異常さがよくわかる。

ロッドは最初から「白人女の実家になって行くな」と言っていて、それが正しかったのだ。
連絡がとれなくなったので警察(黒人)に届け出るが、「白人女にからかわれてるのよ」と笑って相手にされない。ここでも、そんなことよくあることという皮肉がきいている。

黒人男性が行方不明で白人女性が関わっているとこんな対応ととられるのか。もどかしい。

よく、子供が警察に行って状況を伝えても、「はいはい(笑)」みたいな蔑ろな態度をとられて、映画を観ている側は本当のことだと知ってるから、本当のことなのにー!ともどかしい思いをすることがあるけれど、黒人も同じような態度をとられるのか。しかも聞いている警察の方々も黒人である。あの状況に慣れてしまっている。

ホラーとかサスペンスの形をとりながら黒人差別の実態をリアルな形で見せる手法がおもしろい。直接的ではないあたりがうますぎる。

ただ、黒人差別の話だけではなく、ホラー部分も伏線が回収されていくのがおもしろかった。
単純なところだと車で逃げようとしたら、あの最初に出てきた愉快な曲が流れ出して、この車だった!とわかったり。もうあの曲自体が怖い。あんな愉快な曲を流すなんて、誘拐自体をなんとも思っていないか慣れているのだろう(曲のタイトルが『Run Rabbit Run』。余計に怖い)。

クリスを落札したのは盲目の画商で、クリスの写真を褒めていたけれど、あとで君の目を通して世界が見たいと言っていて、才能は本当に買っていたのかと思った。

また、最初にあやしいと思っていたローズがやっぱりただのクリスの彼女ではなかったが、身分証の件は、来る途中のあんな人通りのなさそうな場所でクリスの身元が警察に割れたら行方不明になったときにすぐにバレてしまうからかとあとで気がついた。

もっとたくさん気づいていない細かい伏線がありそう。最初に轢いた鹿と捕らえられていた部屋の鹿の首は何か関係があるのだろうか(轢いた鹿とクリスの母親が轢き逃げされた件がかかっているのではないか…との話もあるみたい)。

家に雇われていた黒人二人はいずれも頭の傷が痛々しい。男性のほうはフラッシュで正気を取り戻してから、ローズを撃ち、自分に銃口を向けた。あまりにもつらい。

そしてラスト、撃たれてもなお起き上がろうとしたローズの首を絞めるクリス。そこへパトカーが…。
周囲には他にも死体が転がっていて、血まみれの黒人男性が白人女性の首を絞めている状況。せっかく逃げてきたのに終わったと思った。
前のシーンで、警察に黒人男性の人権が軽んじられているような発言をされていたのを聞いたせいだけではない。黒人の不当な逮捕はニュースでもたびたび報じられている。

しかし、パトカーは空港の警備にあたる車であり、乗っていたのは空港警備員の友人ロッド! 良かった! ほっとした。もう本当に、最初からこの友人の言うことを信じていればよかった。きっとクリスがローズと付き合っている最中にも、ロッドはローズのことをボロクソに言っていたと思う。

これが、元々は逮捕されるラストだったらしい。現実でたくさんこのような事件が起きてしまったために敢えて変えたとか。DVDにはアナザーエンディングとして収録されるらしい。

多少、びっくり表現(大きい音が鳴って怖いものが映る)があったり、グロテスク描写もあるけれど、そこまでホラー色は強くないと思う。
それが主体ではなく、黒人差別問題が、説教くさくなく、でも私にもリアリティを持てるように作られているのがおもしろかった。
悲痛さというよりは、淡々と、そうゆうものだと描かれているからリアリティがあったのかもしれない。
あと、コメディ要素(特にロッド関連)もあったのに、笑いは全然起きてなかった。私もにやにやするのに止めておきました。もっと笑って大丈夫です。監督コメディアンだし。