『テッド』


『トイ・ストーリー』のような、『ザ・マペッツ』のような、『宇宙人ポール』のような作品でした。
以下、ネタバレです。










子どもの頃に親しんだおもちゃとの別れだと『トイ・ストーリー』だけど、それよりは、幼い頃から一緒に育ってきて、恋人と結婚する(=大人になる?)にあたって、旧友であるおもちゃと別れるというのはそのまんま『ザ・マペッツ』。マペッツはおもちゃではないですが。

昔の80年代と90年代の映画、海外ドラマ、俳優、音楽の小ネタが満載で、そのあたりが『宇宙人ポール』に似ていたし、ポールと同じく、字幕監修が町山智浩さんだった。この系統の作品の字幕は彼の専売特許ですね。
小ネタは実はほとんどわからなかったのですが、字幕でだいぶ工夫をされているのを感じた。「あの司会者アルフと勘違いしてやがんだ。目がテンになったぜ!」はわかる人だけわかるニヤリ。中の人ネタで絡めてきた。
ただ、星一徹はまだしも、くまモンは急に出てこられると、まさかあの熊本のゆるキャラだとは思わなかったものだから、一瞬会場内のドッというウケに乗り遅れた。
どちらかというと、私はテッドの動きなどのわかりやすい下ネタで笑ってたんですが、顔射のあたりでは一人で笑っていて恥ずかしかった。

下ネタとサブカル小ネタで笑わせる作品だと思っていたので、サブカル側の知識が無かったのでそれほど理解できなかったために、半分くらいしか楽しめなくて、人に感想を聞かれてもそのように答えてたんですが、他に観た人の話だと、泣ける部分が良かったみたいですね。あと可愛いと。
私もラスト付近のところは泣いたけれど、別に目新しいところはないありがちな展開だと思うし、この作品のみどころがそこだとは思わなかった。



そういえば、知り合いが「『テッド』、子どもと行こうとしてるんだけど」と話していたので止めました。なぜR15なのか聞かれて「下品だから」と答えたんですが、「クレヨンしんちゃんみたいな感じじゃないの?」と。下品は下品でも種類が違う。テッドは子どもに見せられないというより見ても意味がわからなそう。

『蛍火の杜へ』


2011年公開。原作緑川ゆき、『夏目友人帳』のアニメスタッフ製作。ということで、『夏目友人帳』と雰囲気は同じですが、夏目好きならきっと好きだと思います。

妖怪も出てくるし、ギンも姿や喋り方が夏目(でもキャストは神谷浩史ではなく内山昂輝)。夏休みの森というノスタルジックな風景も夏目で出てきそう。

夏目と一番違うところは、ラブストーリーがメインということでしょうか。
しかし、妖怪と人間の女の子の恋なので、触れると消えてしまうという設定と、片方は歳をとるがもう片方は時が止まったままという縛りがある。女の子が成長するにしたがって、恋愛という感情がわかるようになって、ギンに触れたいと思い始める。切ない。ギンの優しさがよくわかるラストも良かったです。


予告で観たのとは、話の印象がだいぶ違っていた。
以下、ネタバレです。





予告だとアクション大作!みたいな売り方でしたが、どちらかというとヒューマンドラマでした。話のメインである親子が予告にまったく出ていなかったせいだと思う。予告では、どちらかと言うと主人公と未来の自分がメインだった。近未来が舞台のいい話。大作という感じでもなかった。

思っていたのと話の雰囲気が違ったのは別にいいんですが、観る前から心配していたJGLの特殊メイクは、やっぱり観ている間もずっと気になってしまった。メイクだけではなく、首の傾け方も物真似にしか見えなかった。
その物真似も、がリンカーンに似てるみたいな感じではなくて、コロッケが美川憲一の真似をしているような、多少デフォルメされたような感じ。

こうなると、JGLである意味はあったのか?と思ってしまうけど、どうやら脚本がJGLあてがきだったらしい。ならば、逆に大人になった主人公がブルース・ウィリスである必要はあったのか? それはなんらかの事情があったんですかね…。JGL自身はそのブルースに似せた特殊メイクを大絶賛してたけど、だったらそのすごい特殊メイクで老けメイクをして一人二役(というか青年と大人)でやれば良かったんじゃないのかな。そんなこと、私が言ってもどうしようもないことだけど、それくらい違和感があったし、ずっと気になった。JGL好きなので余計にそう思った。

序盤に出てきたJGLのお友達がポール・ダノに似てると思ったらポール・ダノだった。本当に序盤で離脱してしまうので、友情出演程度の出番しかない。もっと観たかった。

『アウトロー』


ジャパンプレミアに行ってきました。
私史上、もっともトム・クルーズに近づいたひとときでした。とはいっても、顔がわかるかわからないかくらいの遠い席だったので、脳内のトム・クルーズを補完しながら見ていた。でも、離れていてもスターのオーラみたいなのがひしひしと感じられました。背の低さは関係ない!
簡単なインタビューがあって、アクションシーンをスタントに頼まず自分でやることで有名なトムは車を八台壊したらしい。ゆっくりゆっくり、単語で区切りながら、わかりやすいように話してくれたので、通訳無しでも聞き取れた。戸田奈津子さんが隣りにいらっしゃいましたが。
帰り際に、舞台の袖でもう一度手を振ってくれるあたりも、スターだった。きらきらしていた。年齢も関係ないです。

以下、映画の感想。ネタバレです。







何部作かになるらしいですが、序章も序章というか、主人公ジャック・リーチャーのキャラがよくわからないまま終わってしまった。感情の起伏が乏しく、声の抑揚もない。画面が暗いシーンが多く、夜の闇に隠れているようだった。
ただ、個性を出さない、キャラをぼんやりさせているのも意図的なのかもしれない。法が関係ないようなことを言っていたので。バットマン風だと思っておけばいいのか。
キャッチコピーが“その男、行き着く先に事件あり。”だったけれど、実際は逆でした。事件が起こったところにどこからかふらっと現れてた。

ストーリー自体は面白かった。アクションはあるけれど、推理と謎解きものです。少しわかりにくかったけど、今回の件は一段落なのかな。あまり気持ちのいい一件落着ではなかったけど。

最初のしばらくセリフがないシーンも良かった。

あと、ファイトシーンとカーチェイスでほとんどCGを使っていないそうです。その、トムが八回車をパーにしたところですね。カーチェイスシーンにもセリフが一切なく、ふかすエンジン音のみで緊迫感と臨場感があったけど、いかんせん暗かった。映画館じゃないところで観ていたせいもあるんでしょうか?

本当にかなり地味なため、トム・クルーズでなくてもよかったのでは?と思ってしまう役だったけど、身体能力とか考えるとトムしかないのだろうか。あと、やっぱり派手さはなくても、職人技というか、アクションうまさはわかった。シリーズ化したときに化けてくれたら…。この段階で評価をくだすのは危険。

ジャパンプレミアにはヒロインを演じたロザムンド・パイクも来ていたんですが、ヒロインらしくないというか、特にラブロマンスらしきものは無かった。この辺も続編で観たい。


ただ、あとから出た話だと、続編は日本と韓国と中国での興行成績次第らしいですね。がんばってほしい(けど地味)。


連続ドラマ化に先駆けてのテレビ放映。瑛太、松田龍平主演。豊田監督の映画でもよく共演していた二人ですね。『ナインソウルズ』の金子兄弟最高。

短編をいくつか集めたオムニバスでした。これが原作通りなのかもしれないけど、全体で一つの話をやってくれたほうが良かった。あまり起伏がなくて、盛り上がるかなと思われたところで静かに終わっていく。でも、もしかしたらあまり盛り上がらないゆるさが売りなのかもしれない。それでも、短編なのにだらだら長く感じさせるのは問題だと思う。キャラクターが魅力的なだけに残念です。一時間弱くらいがちょうど良さそうなので、テレビドラマには向いてそう。

途中でドラマ版のCMが入ったけれど、新井くんが出たり、映画に続いて高良くんが出たりするみたいなので楽しみ。キャッチコピーの"最弱のふたりが帰ってきた!"というのは、映画の『最強のふたり』とかけてるのかな。

クライマックスに瑛太の長セリフ長回しがあったけど、表情とかはうまいにしても、いくらなんでも言葉で全部説明しすぎ。小説が原作だとこうなってしまうのも仕方ないのか。

「♪あなたが噛んだ〜小指が痛い〜」「噛んでないっ!」のくだりなど、友情というよりはもう少しこえたブロマンス的な表現が多かったが、大森立嗣監督だったので納得した。『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』も中盤やラストはケンタとジュンの国だったもんな。
あと、大森南朋と麿赤兒が出演しているのもなるほど。


できれば吹き替えで観たかったんですが、字幕しかやってなかった。吹き替えはソフト待ちで。
以下、ネタバレです。





オープニングとそこに繋がる直前のシーンの流れが素晴らしい。
ボンドを誤射してしまったイヴから「007、落下」と報告を受けたMが窓の外に目を向けると、強い雨が降りだす。その雨音に滝の音が重なって、滝つぼにボンドが落ちていく。そこへアデルの『Skyfall』のピアノのイントロが流れ出す。歌い出しが「This is the end.」なのもグッとくる。
二回目だと、オープニングの映像内に本編に関わるモチーフが散りばめられているのがわかる。燃える屋敷、立ち並ぶ墓、銃とナイフ。隠れて穴から覗いている少年ボンド。曲のラストにも覗くボンドが出てくるが、それは大人ボンドになっている。

思えば、最後の最後にナイフに頼るボンドというのも007らしくない。私は特にこだわりはないけれども、007ファンの人からすると、この辺もどうなんでしょうか。
ただ、こだわりはないとは言っても、アストンマーチンが出てきて007のテーマ曲が流れるシーンはやはり盛り上がる。

今回は構図も気をつけてみていたのですが、人物を真ん中に置いてのシンメトリックな画が多かった。
マカオのカジノへ舟で向かうシーンは黄金郷のような妖しい建物がどんどん近づいてくる様が見事、ユニオンジャック棺がいくつも並ぶ場所で中央に立つMが静かに怒りをたぎらせているのがわかる、新しく地下にかまえたMI6の広さもよくわかる。
単なるアクション映画ではなく、構図や映像美にもこだわりが見えるのが嬉しい。