『マラヴィータ』


2013年公開。リュック・ベッソン監督作品。
アメリカ版だと『The Family』というタイトルらしい。フランス版は同じく『マラヴィータ』。イタリア語で“暗黒街での生涯”とかの意味らしいですが、主人公家族の飼っている犬の名前がマラヴィータなのでそれだと思う。別に犬は活躍しません。
『隣りのマフィア』という小説を原作にしているとのこと。
そのタイトルだとわかりやすいけれど、FBIの証人保護プログラムを適用された元マフィアの家族が、マフィアであることを隠しながら普通の人々と触れ合いつつ、普通に暮らしていこうとする話。
こちらは本物の家族ですが、身分を偽っているところで少し『なんちゃって家族』を思い出した。

一般人のようにおとなしくひっそりと暮らしていこうと思うけれど、保守的な住民にスーパーで悪口を言われた妻は店を爆破し、学校でナンパをされた娘は男子生徒をボコボコにし、濁った水道の相談をちゃんと聞いてもらえなかった夫は役員を車に縛り付けて走らせる。どうしても、目立ってしまう。

そして、元マフィアの家族の家長をロバート・デ・ニーロが演じているのがずるいというか、それだけでおもしろいというか、他に誰が演じるんだという感じがする。これほど似合うキャストもいない。

引っ越してきた彼との交流するための映画上映会で、間違って届いてしまった映画が『グッドフェローズ』。ロバート・デ・ニーロがマフィアを演じている。
主人公は映画を観た後で映画についての講釈をする役割で呼ばれているんですが、この時に、「お前は自分のファミリービデオについてコメントするのか」と一緒にいるFBI職員が言うのですが、普通のマフィア映画ではなくこの作品を持って来る事で、メタ的な意味合いも持たせていて面白い。
ちなみに『グッドフェローズ』の監督、マーティン・スコセッシはこの映画でも製作総指揮をつとめている。

“風が吹けば桶屋が儲かる”というか、ピタゴラスイッチというか、不思議な縁の重なりで、彼らの住処がライバルのマフィアにバレてしまう。
そのバレ方はまさにギャグのようだったし、マフィアが住んでいる町に電車で来て、降り立つ時にはGorillazの『Clint Eastwood』が流れて、とてもスタイリッシュでかっこいい映像になっている。

けれど、その様子を見た息子や妻は、涙を流して怖がる。
警察や、家族を監視していて次第に仲良くなっていたFBIもあっけなくどんどん殺されていく。家族とも死闘が繰り広げられる。

今までがコメディ色が強かったため、ここで急に普通のマフィア抗争ものになってしまう。どんな気持ちで観たらいいかわからなくなる。
どうせなら、家族四人、それぞれの力を発揮するとかして、楽しく恰好良く倒してほしかった。
能ある鷹は爪を隠す。ここまで爪を隠して、時には暴れたけれど、基本的には大人しく暮らしてきた家族の本領発揮の部分ではないのか。

銃などもないだろうし、おとなしく暮らしていたから戦い方もわからなくなっているのかもしれないけれど、なんとか勝ったという感じだった。

ここまで楽しく観て来たから、同じトーンで最後の戦いもやってほしかった。コメディとして徹底してくれても良かった。
原作があるものだから原作通りなのかもしれないけれど、なんとなく水を差されたような気持ちになってしまった。

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