『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』



『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の始まる前、“遠い昔、はるか銀河の彼方で…”のあとの文章で、反乱軍のスパイがデス・スターの設計図を盗み出すことに成功したと書かれていますがその話。

このスピンオフも三部作なのかと思っていたけれど、一作で完結。

監督は『モンスターズ/地球外生命体』『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズ。

以下、ネタバレです。








ネタバレも何も、反乱軍のスパイが設計図を盗むのに成功することはわかっているし、反乱軍が甚大な被害を被ることもわかっていた。結末は明らかである。それでも十分に楽しめました。

中盤くらいまでは、おもしろくはあるけどスター・ウォーズっぽくないなと感じた。最初に“遠い昔、はるか銀河の彼方で…”の文章は出るが、あのテーマ曲は流れない。文字も流れてこない。この辺はスピンオフだから区別したのかもしれないが、なんとなく気持ちがスター・ウォーズに乗り切れない感じにはなる。

あと、なんというか、少し地味に感じた。惑星間移動はするけれど、空中戦がなかったからだろうか。なんとなく、連続ドラマでも良かったのではないかとも思ってしまった。
ただそんな中でも地上戦でのドニー・イェンは素晴らしかった。ドニーさんがこの作品に出演が決まって以来話題沸騰という感じだったが、アジア映画をあまり観ないので、ドニーさんの作品も観ていなかった。でも、こんなにバシッときまるアクションを見せてくれる人だとは。多人数に囲まれて同時にやっつけるシーンが本当にかっこよかった。
もっと長い時間アクションが観たいので、彼の主演映画も見てみたい。

個人的にはマッツ・ミケルセンが出てくることはなんとなくでしか知らなかったので、こんなにちゃんとした役で出てくるとは思っていなかったので嬉しかった。ちょっと悪役かとも思っていたけれど、主人公の父親役だった。
イードゥのシーンはいらなかったんじゃないかみたいなことも言われていたけれど、マッツの見せ場なのでいります。若い頃の、軍服で子供と戯れるマッツも恰好良かった。
『ファンタスティック・ビースト』のエディ・レッドメインはイケメン役ではなかったのでファンが激増はしないと思うけれど、これはマッツファンが増えてしまうと思った。
また、奥のリアクターに魚雷を打ち込むと連鎖反応的な爆発が起こって破壊されるというデス・スターの弱点はエピソード4(1977年)の時点で明らかになっていたことだけれど、これを仕込んだのもマッツだった。マッツというか、マッツが演じたゲイレン・アーソだった。ああ、あなたが…と思った。

思ったことがすぐに口に出てしまうドロイドのK-2SOも良かった。あまり愛嬌のある形ではないし、これもちょっと地味だと思った。顔が小さく、肩幅がある。ラピュタのロボット兵にも似ている。
しかし、思ったことが口に出てしまう=遠慮のなさがとても良く、緊迫した場面で少しの笑いをもたらしてくれる。“いいロボット(ドロイドだけど)が出てくる映画はいい映画”の法則がここでも発動。
また、形は帝国軍のドロイドだから、それが潜入作戦などに生かされるのもなるほどと思いながら観た。

反乱軍が設計図を盗み出すということだったけれど、主人公のジンは反乱軍という感じではなかった。反乱軍の人間とつながりのある外部の人間だった。まあ同盟軍なのでそれでもいいのかもしれないけれど、一員にはなっていなかったのが意外だった。ドニーさん演じるチアルートとも出会ったばかり。そのせいもあるのか、デス・スターの奥に弱点があって、そのために設計図を盗みに行きたいと評議会で発言をしても聞いてもらえない。いまいち信用してもらえていない。

けれど、少しの間行動をともにしたキャシアンはジンの話にのってくれて、キャシアンの仲間のならず者のような連中を連れて、承認を得ないまま、設計図のあるスカリフへと飛ぶ。
いままで一人だったジンが孤独じゃなくなるこのシーンが良かった。キャシアンもいままで暗殺なども手がけてきたし、明るいヒーローというわけではない。チアルートとベイズも故郷を帝国軍に破壊されている。帝国軍から脱走したパイロット、ボーディーももちろん見つかったら殺される。全員、もう前に進むしかない人たちなのだ。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のようなお気楽さはないけれど、同じようにはみ出し者である。反乱軍の制服も着ていない(でもあれはパイロット用のものなのかも…)。出会ったのは最近でも、帝国軍に対する怒りが彼らを結びつける。ジンも一人の力では怒りをためこむことしかできなかったけれど、行動に移すことができる。

このスカリフに乗り込んでいくあたりからのストーリーが加速度的に盛り上がる。盛り上がりはラストまでずっと続く。

ただ、キャシアンの連れてきた仲間などは上からの命令ではあるけれど汚いことに手を染めていて、後ろ暗いところのある輩どもだったから、この人たちはいつ死んでもおかしくないという気持ちで乗り込んでいくのだろうし、実際、反乱軍側に甚大な被害が出ることを私は知っている。ああ、きっと無事に戻っては来ないのだろうなと思う。

人数が少ない中、どうやって対抗するか。ジンとキャシアンとK-2SOが設計図が保管されているタワーへ、ボーディーは宇宙船に残り、チアルートたちは兵士を引き付けるための撹乱作戦を地上で行う。散り散りになっていく。

反乱軍の基地はジンたちが出て行ったことを知って援軍を送り出す。ここで交わされる会話がエピソード4を見ていることを前提としていて、しっかりと繋がっていくのを感じた。設計図を“彼女”に託し、クローン戦争にも参加した“彼”に渡してもらう。もちろん、彼女はレイア姫、彼はオビ=ワン・ケノービである。そして、姿こそ出てこないが「行くぞ、アンティリーズ」というセリフ。ウェッジ・アンティリーズはこの戦いにもちゃんと参加していたのだ!ファン向けではあるが嬉しい描写である。

タワーでの設計図奪還作戦と、地上での撹乱作戦と、空中戦が同時に繰り広げられる。特に空中戦だけとったらエピソード7よりも派手だったと思う。
盛り上がるが、仲間がどんどん死んでいく。主要キャラが容赦なく倒されていく。知ってはいたけれどつらい。

タワーではK-2SOをコントロールルームに残し、ジンとキャシアンが二手に分かれる。ここで、もしかしたらジンとキャシアンや他の仲間は全員死んでしまって、K-2SOだけが残ってデータを送ったりするのかな…と思った。けれど、倒れるのはK-2SOが先だった。ストームトルーパーから集中砲火をあびて、「さようなら…」なんて。でも、その前に設計図のありかはちゃんとジンたちに伝えた。

ボーディーも電源コードをつないでから、チアルートもマスタースイッチを入れてから倒れる(ちなみにこのマスタースイッチの形状があんまりにもチープなのではという意見もあるみたいだけれど、エピソード4に続く世界なのだからわざとなんじゃないかと思う。設計図もクレーンゲームを横にしたみたいな機械だったけれど、こうゆうのをあんまり最先端というかシュッとしたスマートなものにしてしまうと、世界観に違和感が出てしまう。良いほうに考えすぎかもしれない)。ジンも設計図のデータを無事に送信した。

結局はスカリフ自体がデス・スターによって破壊されてしまうのだ。それでも、全員がやるべきことをやって、希望をバトンのようにして次の人に繋いでから倒れる。

この先、受け取った兵士たちも同じです。データをディスクに保存し、レイア姫に届けなくてはいけないが、帝国軍とダースベイダーに追われ、次々に倒されていく。開かないドアの隙間からディスクだけ渡し、ドアの向こうの兵士は撃たれてしまう。けれど、受け取った兵士は無事にレイア姫に届けた。

このディスクはエピソード4でR2-D2に託され、オビ=ワンに届けられ、ルークが魚雷をぶちこみ見事にデス・スターは破壊される。
登場人物がこれほどまでに死んでしまう話は珍しいと思う。悲しいし、つらいし、ボロボロに泣いてしまう。けれど、私たちは未来(エピソード4以降)を知っている。設計図という名の希望はしっかり反乱軍に渡り、未来は続いていく。

エピソード4の前の話というのは聞いていたけれど、本当にエピソード4の直前である。おそらく5分も経っていない。『クライシス コア-ファイナルファンタジー7-』を思い出した。前日譚というにはあまりにも近すぎるので続けて観たくなる。

本作を観た後だと、何度も観たエピソード4の重みが変わってくる。今までだと、前文を読んで、それを情報として頭に入れた上で、ああいきなり佳境から始まるなと思っていた。でもこれからは、なんでこんなに佳境なのかもわかる。でも、もしかしたら、エピソード4の印象を変えてしまうことを良しとしない意見もあるかもしれない。
それでも、大きなお世話だとは思うけれど、エピソード4が好きな人には本作を観てもらって、この設計図を奪う過程でこんな犠牲が払われていたのだということを知ってほしい。

映画化されなかったら日陰者たちの活躍はずっと日の目を見ることはなかっただろう。こんなことがあったのを知ることができて良かった…という、実話感覚になってしまった。
後付けなのはわかってる。けれど、エピソード4(しつこいが1977年)の時点では、“彼ら”の活躍は文章だけで済まされ、脚本の陰に隠れていたのだ。
それにこのようにスポットライトが当たったのが嬉しい。エピソード7の時も思ったけれど、今回も作ってくれてありがとうございますという気持ちでいっぱいです。

もっといろんな、埋もれている話が観たい。ロード&ミラー監督のハン・ソロの若い頃の話も楽しみ。

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