『バトル・オブ・ブリテン〜史上最大の航空作戦〜』



いわゆるロードショー公開はされない注目作を上映するのむコレ2018にて上映。
今年公開された映画らしい。

あまり内容を調べずに観たので、タイトルと、主演が『ゲーム・オブ・スローンズ』のラムジー役でお馴染み、ウェールズ出身のイワン・リオンだったため、RAFのイギリス部隊の話かと思っていた。
しかし、原題がまず『HURRICANE』。戦闘機の名前だった。そして、イワン・リオン演じるヤンは、最初、イギリス人のつもりで見ていたので、ドイツ軍に対して「スイス人で時計を売りに来た」と言っていて混乱した。それは中立国のふりをする嘘だったのですが、それで本当は何人なのかが途中までわからなかった。

結局ポーランド人だったんですが、映画自体もドイツ軍に故郷を追われたポーランド人がイギリス空軍でさながら傭兵のように活躍する姿を描くものだった。RAFはRAFでも、イギリス人ではなくポーランド人の話。ハリケーンも彼らが乗っていた機種だった。

バトル・オブ・ブリテンに外国人部隊が参加していたことは『空軍大戦略』(1969年)でも取り上げられていましたが、まさかそこが描かれた作品なのだとは思わなかった。
個人個人はもちろん実在しないけれど、このポーランド人の部隊、第303戦闘機中隊が最高の撃墜記録をあげたことは実話らしい。

以下、ネタバレです。









ポーランドの飛行機乗りたちは、イギリスに亡命して来て、最初は野蛮人などと呼ばれているし、英語の勉強をしなくてはいけないし、余所者ということで差別のようなものを受ける。しかし、腕は確かなので、一目置かれるようになり、プロパガンダ広告に使われたりと、パーティーに呼ばれるようになる。
全編を通して、イギリス人とイギリスという国の身勝手さが目立つ内容で、イギリス人中心の話だと思っていたのに真逆で驚いた。

特にラスト、ポーランド人のヤンと、RAFにいた女性とのメロドラマ的な展開があり、これは必要だったろうか…と思いながら観てたんですが、「結局君は俺についてくることなんてできない。ロロ(RAFのイギリス人)のことが忘れられないからだ」というセリフがあって、この女性もイギリスを表す符号でしかなかったと痛感した。

あれだけ活躍した303中隊のポーランド人たちは、戦争が終わったらイギリス国外に追放されたらしい。世論も、56パーセントが出ていってほしいとの考えだったようだ。追放された後に国に戻れば処刑されるか、強制労働をさせられたらしい。
現代の移民排斥や不寛容社会にも似ていて、もしかしたら、2018年の今、この映画を作った意味はこの辺なのかもしれないと思った。
ちなみに、303中隊を描いた『壮絶303戦斗機隊』(1960年)というポーランド映画もあるらしい。これも、ポーランド部隊の武勲について描かれているのか、その後の酷い仕打ちについても描かれているのか気になる。

全体的にイギリス人はひどいという映画だったが、製作国がイギリスとポーランドなことに驚いた。ポーランドが一方的にイギリスを糾弾する映画ではないのだ。ちゃんとイギリスも反省しているようです。

ポーランド人たちは、国に侵攻され、家族や仲間を殺されたのだから、ドイツ軍への恨みは人一倍なのだ。だから、士気が高く、撃墜数が多かったというのも納得である。もちろん腕もあるのだろうが、なんとしても倒したかったのだろう。
けれど同時に、国で酷い目に遭い、祖国もなくなってしまっているため、トラウマも抱えている。この映画では兵士たちの持つ心の傷についても、描かれていた。

また、兵士たちの死に方については、燃料不足でホワイトクリフにぶつかって機体が大破というのが一番辛かった。撃墜されたわけではないのだ。生き残って、帰って来て、祖国を目の前にしての無念の死。
また、ハリケーンに乗った兵士がトラウマのフラッシュバックでぼんやりしているときに、パラシュートで脱出した兵士に近づきすぎてしまい、プロペラがパラシュートを切り裂き、パラシュートの兵士が落下というのも辛かった。

主演はイワン(イヴァン)・リオンは『ゲーム・オブ・スローンズ』のラムジー役で有名ですが、あれは嫌な部分しかない役で、『インヒューマンズ』もまあ悪役だったので、なんとなく嫌な奴のイメージでしたが、今回は主役だしそんなところはなかった。
特別良い奴といった感じではないけれど、世捨て人っぽく、欲望も何も消えて、ただ目の前の敵を倒すのみといった役柄が良かったです。

0 comments:

Post a Comment