『ザ・コンサルタント』



ベン・アフレック主演。公式サイトや予告だと、会計士には裏の顔があって…?みたいな書き方だけれど、そんな単純なギャップ萌えの話ではなかった。でも、ネタバレっぽいものがある話だし、ちょっとこれくらいの書き方でいいのかもしれない。

監督は『ウォーリアー』のギャビン・オコナー。
以下、ネタバレです。





最初、昼は実直真面目な会計士、夜は殺し屋というような話なのかと思っていた。ネタバレをぼやかすためだと思うけれど、公式サイトのあらすじだと『しがない会計事務所へ舞い込んだ大企業の調査依頼』と書いてあるけれど、舞い込んだというか、自ら飛び込んでいった感じが強い。また、事件に巻き込まれるような書き方だけれど、それも、巻き込まれるっちゃ巻き込まれるけれど、自分で頭をつっこんだ感じである。あと、巻き込まれるというと一般人がひょんなことから裏世界に…といった印象になるが、この会計コンサルタント、クリスチャン・ウルフは最初から裏世界の住民っぽい部分が匂わされる。巻き込まれ上等といった雰囲気。

ウルフが持っている携帯には非通知で着信があり、そこで謎の女性から依頼を受けて動いているようだった。相手の顔、名前が出てこないところと、万能感から、少しノブレス携帯のジュイスを思い出してしまった。
ウルフは後ろ暗いところがあるようで、政府の一部からも目をつけられていたりする。映画を観ている側はこの主人公にどう向き合っていいのか迷うが、どうも携帯の向こうの万能な存在に従って、義賊的なことをしているのではないかと思われた。

思っていたのと一番違ったのは、最初に示される情報だが、主人公が高機能自閉症という点である。数字(というか数学?)に特別なこだわりがあるようだったので、会計士には向いている。
また、父親が軍人で、一人でも強く生きていけるようにという育て方をしたために、銃の扱いや格闘技などが身についていて、戦闘能力が突出している。最初はあの父親はどうなんだろうと思っていたけれど、結果的には正しい育て方だったということか。

仕事を完了させないと落ち着かないという面があるせいか、格闘シーンの確実な殺しっぷりが恰好良かった。殴って相手が倒れても上から銃で頭を一発、銃で仕留めても念のためもう一発。
ほぼ無表情で戦う様子も恰好良い。必死な顔にならないので何気ない動作に見える。

無表情なのは人と接するときも同じなのですが、好意を抱いたらしいデイナに対しては少し笑顔がこぼれていたり、不器用ながらも必死で伝えようとする様子が可愛くも見えた。
デイナを演じたのがアナ・ケンドリック。『バッドマン vs スーパーマン』の影響かもしれないけれど、やたらと筋肉質になったベン・アフレックに比べて小さくて可愛い。でもトイレのフタで悪漢を殴ったりと奮闘する。無駄に出しゃばって足を引っ張る場面がないのも良かった。

ベン・アフレック演じるウルフのキャラクターがとても魅力的だったので、本作は彼だけを中心にして欲しかった気がする。彼の過去と、一つの事件の解決で良かったのではないか。
なかなか最初から三部作構想もできないのだろうけれど、本作は要素がつみこみすぎではないかと思った。少しもったいない。

ウルフは影で一つの事件を解決しながらも、人も殺しているし、財務省犯罪捜査部に追われている。引退間近のレイモンドと犯罪歴のあるメリーベスというこの二人も濃い。二人ともの過去の話も出てくるが、ほぼ語りだけで済まされてしまう。この二人の側から見たスピンオフも作れそうである。それか、本作では政府も謎の男(ウルフ)を追っているという話を少し出して、二作目で本格的に追う様子を描くとか。

そして、三作目で満を持して弟の登場である。本作でもなかなか出てこなかったから満を持して感はあったけれど、ちょっと小物すぎてがっかりしてしまった。政府組二人やデイナの口からも過去の話が語られて、それを聞くとキャラクターに深みが出るが、弟はこれといったことを語らない。子供の頃はいつもウルフと一緒にいて、父親もウルフの友達は弟だけだと言っていたが、弟は子供の頃にも特に何も話しておらず、本当は何を考えていたのかわからなかった。

母の葬式にウルフと父親が二人で行ったことに怒ってはいたけれど、それよりも再会を喜んでいたし、きっと子供の頃から本当にウルフの友達だったのだろう。裏や確執などない。大体、本当に恨んでいたら、再会時に殺す手を止めることなんてしなかったはずだ。

でも、弟にも何かしら重要な役割を与えてあげてほしかったし、兄弟の確執が見たかった気もするのだ。最強のライバルであってほしい。それを三作目でじっくり描いてほしかった。ラスボスが弟でもいい。
ただ、確執があるとすると、本気で殺し合うことになるし、本気で殺しあったらきっと弟が死んでしまう。しかし、ウルフが弟を殺せるとも思えない。それに、殺させてはいけないとも思う。

そして、最後の最後に携帯の謎の声の主が、ウルフが子供の頃に行った施設の女性だったことがわかる。声もパソコンを使った音声だった。電話で「ため息だわ」と言っていた時に、なんでそんなこと言うんだろうと思ったけれど、絵文字みたいな感覚なんでしょう。

人物関連のことはおおよそ明らかになったし、丸くおさまったと言えなくもない。けれど、弟も生きているし、ウルフはまた次の事件へ向かっていくようだったし、続編がいくらでも作れると思う。是非、シリーズ化してほしい。

女性がパソコンでハッキングをして、携帯で連絡してウルフが動くという連携プレーはいつからとられたのか、そうなったいきさつや転機みたいなのもあったはずなのだ。二人が交わす秘密の契約。やはり、パズルの最後のピースを渡してもらったことがきっかけになっているのだろうか。彼女の部屋にあの時完成したパズルが飾られているのもぐっときた。


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