『ドクター・ストレンジ』



MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)14作目。14作目とはいっても、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のようないきなり観てわからないような続きものではないです。
 
私は、原作は他のアメコミ映画同様未読、キャラクター自体もやっぱり他の映画と同様、『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』で見たというくらいたったけれど楽しめました。
ヒゲ、ロマンスグレーという風貌から、ベネディクト・カンバーバッチが主演という話を聞いた時にイメージがわかなかったが、とてもよく合っていた。

監督は『地球が静止する日』のスコット・デリクソン。

ちなみに、本作のパンフレットはとても充実した内容だった。
原作の解説から、衣装や小物の説明、撮影秘話などのプロダクションノート的なもの、キャストやスタッフのインタビューと読み物が多く、本作の独特の映像手法っぽい文字組みが使われていたりと愛を感じる作りとなっていた。

以下、ネタバレです。






『ホビット』で竜のスマウグを演じたベネディクト・カンバーバッチを観た時に、竜の姿をしていても面影があるなとか似てるなと思っていたのですが、それに対しては、演じているのに失礼ではないかという意見もあった。
今回は人間役だけれど、スマウグよりもベネディクト・カンバーバッチっぽくはなさは少なく感じた。

前半、不慮の事故に遭う前の医者パートはいつものベネディクト・カンバーバッチだった。隠しきれない気品というか、上品さやエレガントさが医者っぽかったし、傲慢で高慢な態度は少しSHERLOCKを思わせた。

カマー・タージで修行がうまくいかず、他の修行している人たちの中、一人だけ曼荼羅みたいなマークが出せずに必死になっている様子は少し意外だったのだ。もう少しすましたキャラクターなのかと思っていたら、汗をかいて頑張って、焦っている。
こんな役もできるとは意外だった。

そもそも、天才外科医でありながら両手が使えなくなって焦っている点が人間臭い。そこから、才能を認められて、両手を治すか世界を救うかという選択から世界のほうを選ぶ。本作開始時の彼からは想像のつかない成長を遂げる。
普通、人物成長ものだと少年である場合が多いが、立派なおじさんでも成長するのだ。

ちょっと、ベネディクト・カンバーバッチが演じる中では珍しい役だったのではないかと思う。
まあ、単純に、外見のヒゲがカンバーバッチっぽさを隠していただけかもしれないけれど。

スティーヴン・ストレンジは軽口を叩く軽妙なキャラクターでもある。
パンフレットの表紙やポスターではキメキメだけれど、映画内ではまだそれほど魔術を使いこなせているわけではない。
本作はまだプロローグなのだと思う。スットコ魔術師奮闘記といった感じだ。
きっとこの先、自体はもっと深刻化していくだろうし、本作ではとんち合戦みたいにして危機を乗り越えたけれど、今後はストレンジが直接手をくだす場面も多くなるだろう。
それでも、本作のような軽妙さは残してほしいと思う。

赤いマントを付けた姿のドクター・ストレンジがせり上がってきた時に、やっと知っている姿になったと思って感動した。
序盤の医者姿から、修行をするために道着に着替え、両手がうまく使えないからヒゲを生やし、髪も伸びる。そして、仕上げにマントだ。少しずつ、現実の姿からファンタジーというか漫画の登場人物の姿に変わっていっていた。違和感なく魔術の世界と現実の世界が融合していた。

このマントが可愛い。マントが可愛いというと柄がとか形がかと思われると思うが、意志をもって動くのだ。ストレンジはまだまだ未熟である。その彼を時にサポートし、時に励ます。喋ることはないけれど愛嬌がある。
良いロボットが出る映画は良い映画という法則があるが、その亜種だと思う。

役者さん関連だと他には、ティルダ・スウィントンも良かった。
カーマ・タージの指導者、エンシェント・ワン役。原作ではおじいさんらしい。一体何歳なのかわからないというのは彼女のはまり役だろう。謎めいた雰囲気もいい。

エンシェント・ワンの弟子モルド役にキウェテル・イジョフォー。頭の固い善人役がうまい。真面目ゆえに、信じていたものから裏切られた時に受けたショックからの反動が大きい。本作ではいい人でしかなかったけれど、、おまけ映像の感じだと次作で悪役になりそう。
なんと原作では元々悪役らしい。

公式が“女性が好きな恋愛要素を売りにする”というようなことを言っていて少し荒れたりもしましたが、そこで初めてストレンジの相手役というのがいることを知ったくらい予告編には出てきていなかった。元恋人役にレイチェル・マクアダムス。序盤にやや湿っぽい別れのシーンがあったものの、それ以降はちょうどいいさじ加減だった。
ヒロインと言っていいのかわからないくらいの出番。でもいたほうが面白くなるくらいには出てくる。また、『ザ・コンサルタント』と同じく、主人公の足を引っ張らないので見ていてイライラしない。

悪役カエシリウス役にマッツ・ミケルセン。そのままでも恰好いいが、目の周りのメイクはより恰好よく見せるためのメイクに見える。
凶悪だけれど、直接対決ではないにせよ未熟者魔術師にやっつけられるというのは案外弱い? 単にストレンジが頭がいいということだろうか。

『ステート・オブ・プレイ』や『逃亡者 デッドエンド』でジョン・シムと共演していたベネディクト・ウォンが結構重要な役で出てきた。エンシェント・ワンとモルドが去った続編でも、是非、ドクター・ストレンジをサポートする役で出てきてほしい。

『ドクター・ストレンジ』はここから始まるし、最初はヒーロー物といった感じでもないし、ストーリーはとっつきやすいと思う。MCUの他の作品を観ていなくても大丈夫そうな敷居の低さがある。

それに、ストーリーだけでなく、本作は映像や視覚効果も見どころの一つだと思う。
覗いた先の景色が万華鏡のようになるスコープがグッズになっていたが、まさにそのような世界が目の前で展開される。

これは、元々の原作コミックスでの表現の映像化らしい。63年に初めて発表された作品のようなので、60年代といえばサイケデリックが流行ったし、同じようにトリップ感の味わえる映像なので納得した。

IMAXカメラで撮ったシーンではスクリーンが上下に広がるタイプなので、できればIMAX鑑賞がいいのだと思う。そして、3Dでないと、この映画の魅力が半減してしまうのではないかと思うくらい圧倒された。しかし、少し酔います。

病院でのバトルも面白かった。幽体離脱のように、肉体からアストラル体だけ離れて、壁をすり抜けながらバトルをする。
ファンタジーっぽくはあっても、病院は現実世界で地続きなのを感じる。

香港の住民たちの中でのバトルも、時を止めて、その中でストレンジやカエシリウスだけが動いているというのも面白かった。背景が日常生活で、その中で繰り広げられる非日常バトル。
時を止めるだけでなく、時を戻し、建物などを修復しながらのバトルも見ていて混乱するが面白かった。
是非二作目でもこの斬新な映像たちも見どころにしてほしい。

マーベル映画のお楽しみのおまけ映像にはソーが登場。次作は2017年11月3日に現地での公開が予定されている『ソー:ラグナロク(原題)』なのかなと思ったが、その前に5月5日(日本では5月12日。案外早い)『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』の公開が控えていた。『スパイダーマン:ホームカミング』も7月7日(日本では8月11日。まあまあ早め)とソーより早い。

ソーは「地球にも魔術師がいるのか」と言いながらドクター・ストレンジと向かい合って座っていた。飲み干したビールをストレンジが時を戻すことで増やしてあげるサービスも。
戦いの時にはサポートするというようなことを言っていたので、もしかしたらドクター・ストレンジも出てくるのだろうか。それとも、2018年公開予定の『アベンジャーズ』続編での共演だろうか。

二人でロキの話をしていたが、ロキとドクター・ストレンジの共演となると、トム・ヒドルストンとベネディクト・カンバーバッチということで、『戦火の馬』のイギリス軍コンビである。
また、『アベンジャーズ』に出て、ロバート・ダウニー・Jrとベネディクト・カンバーバッチの共演ということになると、映画版とBBC版のシャーロック・ホームズが揃うことになり、これはこれで楽しみである。

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