『オリエント急行殺人事件』



言わずと知れたアガサ・クリスティの小説が原作。1974年にも映画化されていて、今回はケネス・ブラナーが監督をし、ポワロ役も彼がつとめる。

以下、ネタバレです。










1974年の映画を観たのか小説を読んだのかは忘れてしまったけれど、犯人と殺害方法は知っていた中での鑑賞。
本作ではいきなり列車に乗るわけではなく、オープニングで軽く一つの事件を解決する。
そのシーンだけでも、ポワロは飄々としていてとてもやり手には見えないけれどすごい速さで解決するし、その手腕の確かさがわかる。
また、探偵ものの常套句でもあるのかもしれないし、イギリスものだからかもしれないけど、持ち物や身なりを観察してその人の職業などを当てる様子は、シャーロック・ホームズを思い出してしまった。

オリエント急行に乗り込むシーンはとてもわくわくした。ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、ウィレム・デフォー、ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファーと、こうあげていくだけでもめちゃくちゃ豪華な出演者の軽い自己紹介めいたことをしながら列車に乗っていく。
あと、オリヴィア・コールマンが出ているのを知らなかったので嬉しかったです。伯爵役のセルゲイ・ポルーニンは知らなかったけれどかっこよくて、身体能力がものすごく高そうと思ったら俳優ではなくバレエダンサーらしい。軽い格闘シーンがキレキレでした。肩にヒース・レジャーのジョーカーの刺青を入れてるあたりもそそられる。

また、ポワロが乗り込んでからは、カメラが列車の外から彼を追いかけるのも凝っていると思った。
列車が発車する時に駅にいる子供などが手を振っているのも、これから始まる感が高まって良かった。

ラチェットが殺されたことがわかるシーンも上から撮られているのがおもしろい。ポワロが自室を出て、廊下からラチェットの部屋を覗いているのを真上から撮っている。しかし、ラチェットの部屋の中には入らない。ポワロの部屋は真上からのショットがある。メッタ刺しの遺体を映さないためかなと思ったけれど、あとで映っていたので違うようだ。

中盤の聞き込みは、少し退屈に思えてしまった。列車は雪崩で脱線してしまったため動かない。雪山の中なので動きがとれない。殺人事件が起こっているので全員容疑者ということで、列車の中からは出さず一人一人聞き込みをする。
ラチェットの過去と乗客の過去が次第に明らかになっていくが、仕方がないけど画面に動きがなく、しかもなんとなく知っている事柄だったので話を聞いているだけという風になってしまったのだ。

ただ、全員が刺したという結末は知っていても、犯行を告白するシーンと犯行時の回想は泣いてしまった。あんなに悲しい殺人シーンがあるのだろうか。音楽のせいかもしれない。告白シーンはさすがに豪華俳優が揃えられているだけある。特にウィレム・デフォーとミシェル・ファイファーがうまかった。あとペネロペ・クルスはここではそこまで演技をしないが、ここ以外のシーンでうまいなーと思って観ていた。魅力的でした。

カメラワークで凝っているところはあっても、演出はクラシックだったかなと思った。豪華列車などの美術のせいかもしれない。
また、最後に次作『ナイルに死す』への橋渡しとなるシーンがあるけれど、最近の演出だったら、“エジプト”とか“ナイル川”とかの単語が出てきた時点でジャジャン!と印象的なSEが使われて、ポワロの顔がアップになりエンドロールに入るみたいな終わり方になりそうだが、本作ではそこでは終わらず、走り去るオリエント急行と車窓から乗客たちがポワロを見下ろしている様子が映り、情緒が感じられた。
最近の演出にしちゃうと本当にシャーロック・ホームズになってしまいそうだし、こっちのしっとりとした終わり方で良かった。


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