『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』



去年公開された『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』はスピンオフで、本作は正式な続編の8作目。
いろんな事柄が思っていたのと違う方向へ進んで行くので、新鮮な気持ちで観ました。過去作に照らし合わせながら展開を予想していると、まったくそちらへは進まない。

以下、ネタバレです。『ブレードランナー2049』のネタバレも含みます。










本作は、大きく分けてレイとフィンとポー・ダメロン、それぞれを主人公とした三つの話が同時進行で別々に動いていく。

ポー・ダメロンが主人公の話は彼の成長物語だと思う。宇宙を舞台にしていて、優秀なパイロットなのは誰もが認めるところだけれど、スタンドプレーが多く、自分の力を過信している。
レイアのことを尊敬しているようだけれど、言うことを聞かないし、自分が一番正しいと思っているのは若さゆえかもしれない。

また、レイアが倒れている間の仮の指揮官ホルドの言うことはレイア以上に聞いていなかった。私もあの人は怪しいと疑ってかかっていた。けれど、途中でちゃんとした作戦があることがわかる。周りを信用することも大切だと気づかされる。大体、レイアが任せたんだからしっかりした人に決まっている。
突撃してくだけるではなく、守ることもおぼえたと思う。石の惑星では敵を前に撤退していた(フィンはつっこんでいってたけど)。たぶんひとまわり大きくなったのではないだろうか。

カジノの星に潜入していくフィンパートは、この映画がスター・ウォーズでなくても面白いと思った。これだけで一つの映画にできそう。
スター・ウォーズでよく出てくる、バーにいろんな惑星の住民がいるシーンはわくわくしますが、カジノも人が集まる場所だし、その雰囲気があった。今までカジノが出てきたことはなかった気がするので新しい。プリクエルのことはあまりよく覚えていないのでわかりません。

ここにはファースト・オーダーの部屋に侵入するためのコードを破れる人物を探しに行くんですが、その目印が胸元にプロムのバラ。その人物は見つかるけれど協力してもらえず、代わりにベニチオ・デル・トロ演じる謎の人物(DJという名前らしい。映画の中に名前は出てきたかな)が協力する。彼もコード破りに関してはかなりの腕の持ち主だったので、実は彼が最初から探していた人物だったというオチかと思った。胸元にバラの刺青を入れていて、あとでそれがわかるとかの展開を待っていたのに、あっさりと裏切ってしまう。そこでもまだ信じられずに、裏切った奴は終盤のピンチの場面で助けに来る法則が発動するかと思ったらそれもなかった。

カジノの星は、戦争で私腹を肥やした武器商人が集まっていて、DJが盗んだ船も武器商人のものだった。その船の持ち主はファースト・オーダー側だけではなく、レジスタンスにも武器を売っていて、善と悪で単純に二分できないというか、本当に悪い奴って誰なの?ということを考えさせられた。武器商人を出すというのは今時の映画っぽい。

また、金が貰える方へあっさりと鞍替えしたDJもいわゆる善悪とは別のところで動いていそうだったので、次作での出番があったりしてと思った。

レイの話にも善悪のことが繋がってきている。
普通なら、レイとルークは善でカイロ・レンが悪、善が悪を倒すという単純な話になりそうだがそうはならない。それぞれの人物が光と闇を抱えている。

レイに関して、彼女について私たちも前作1作品でしか知らないため、本当にいい子なのかはまだわかっていない。
カイロ・レンを作ってしまったルークも完全なる善ではないのかもしれない。光か、闇かという本作のポスターでも、闇側にもルークが写っている。

一番よくわからないのはカイロ・レンだ。スノークに関しては見た目からして完全に悪ですが、カイロ・レン演じるアダム・ドライバーは悪い奴に見えない。どちらかというと優しい顔である。だから余計に心が揺らぐ。

結局、私はダースベイダーの亡霊にとらわれてるのだ。けれど、カイロ・レンはダースベイダーとはだいぶ違うキャラなのが今回よくわかった。
本作でカイロ・レンは序盤でマスクを外す。それ以降まったく顔を隠さない。その様子からも、このキャラはダースベイダーとは違いますよというメッセージが感じられる。
ちなみに前作『フォースの覚醒』では、逆に終盤までマスクをつけたままだった。しかも、ダースベイダーの真似をするかのように声を少し歪ませている。

前作で父であるハン・ソロを殺した時に完全にダークサイドに堕ちたのかと思っていた。
けれど、レイとは精神的につながっていて心と心がふれあい、孤独な魂が惹かれ合い、互いを求めている。この描写はダークサイドではない。指先と指先も触れ合わないかと思ったが触れ合っていた。

二人の間にあるのは恋愛とは違う。やっぱり兄妹なのかな?とも思ってしまったけど、それはないのは前回でわかったことだ。それじゃあ、ルークの子なのかなとも思ったけどそれでもないようだった。
カイロ・レン(というか、あのシーンでは本名のベン・ソロ)がレイの出自を明らかにした。名もない普通の両親だと。お金のためにレイは売られたと。
この、特別だと思いたかったがそうではなかったというのは『ブレードランナー2049』のKを思い出してしまった。
ベンというか、本当だったら悪とされるカイロ・レンの言うことだからもしかしたら嘘かもしれないとも少し思ったけれど、その前のシーンでルークがフォースは特別な力じゃないと言っていたので、別に血ではないのかもしれない。
それにもしかしたら、選ばれた特別な人間ではないレイが主人公なことにこの三部作の意味があるのかもしれない。

『フォースの覚醒』を見返してみると、マズがレイの両親について「待っている人はもう帰ってこない」と言っているのでやはり名もなき人たちなのも本当かも。それに、フォースは誰にでも備わっているというようなことも言っていた。

ベン・ソロ(カイロ・レンではないと思いたい)がスノークを殺し、レイと二人でスノークの部下と戦っていたとき、この二人は旧作でいうルークとレイアなのか?とも思ったけれど、レイはお姫様というガラではない。
レイアも守られているわけではなかったけど、ライトセイバーをぶんぶん振り回すタイプではなかった。
それで、この映画は、別に本作は旧作でいう誰々と当てはめなくていいのだと気付いた。前作はどちらかというと旧作ファン向けだと思ったが、本作はまったく新しい映画なのだと思う。もちろんスター・ウォーズ続編ではあるけれど、それだけではない。

カイロ・レンはダースベイダーの役割ではないし、レイはルークの娘ではない。レイとカイロ・レンは両方ともフォースを使えても、家族ではない。ポー・ダメロンは腕の立つパイロットだが、ハン・ソロではない。前作はドロイド(BB-8)に地図のデータを託す様子が、旧作のドロイド(R2-D2)にデス・スターの設計図を託す様子と同じだと思ったが、本作に関しては何も旧作になぞらえなくていいのだ。

監督は『LOOPER/ルーパー』のライアン・ジョンソン。普通のSF映画として面白かった。なんと『ブレイキング・バッド』有名なハエ回(シーズン3第10話)の監督も彼でした。

ベンとレイが共闘したあと、この調子だともしかしたらカイロ・レンが最大の敵ではなく、二人で何かもっと巨大な敵を倒すのではないか?とワクワクしたけれど、結局二人は離れていく。一度触れ合った心が離れていくのは悲しい。でも、恋愛でも家族の情でもない、見たことのない不思議な関係の二人は離れていても繋がっている。
それは運命とかそういう風にしか呼べない関係で、次作でどうなっていくのか気になって仕方がない。

ルークですが、どんどんルークになっていくのが素晴らしかった。勿論最初からルークなんですけど、顔つきが変わってくるのはマーク・ハミルの演技力なのだろうか。
かつての相棒ドロイドたちにウインクするのも素敵でした。
特に最後、カイロ・レンに向かっていく後ろ姿は髪型も一緒でルークそのものだった。

ヨーダに話しかけるルークが2017年の今、観られると思わなかった。もうそれだけでお腹いっぱいです。優しい顔をしていた。
あと、レイアと二人のシーン。結局、ホログラム的なもので実態は来ていないけれど、額にキスをするのがぐっと来た。
本作は過去作関係なくおもしろかったけど、泣いてしまったのは過去と関係のあるこのようなシーンだった。

終盤で避難した石の惑星は、塩と言っていたと思うけれど、白いが、踏んだり上から圧力をかけて潰すと赤くなる。
よく雪のシーンで人が撃たれたり、白い服の人物が刺されたりと、赤と白の組み合わせは血でよく出てくるが、それとは違う形で見せていた。
特にモノスキーと言っていたと思うけれど、乗り物から一本だけ下に下ろして進むと、乗り物の軌道が赤い筋でわかる。上空からの映像が綺麗だった。IMAXで観た甲斐があった。

ポー・ダメロンとフィンは別々に動いていても何度か合流するが、レイが合流するのは映画の本当に終盤だった。そこでポー・ダメロンとレイが初めましてという感じの挨拶をしていて、初対面なのが意外だった。前作『フォースの覚醒』を観てみると、確かに会っていなくてびっくりした。
レイとBB-8も本作ではここで初めて対面する。前作ではレイが何度かアンテナを直してあげるシーンがあったけれど、ちゃんとそれに倣ってアンテナどう?と見せているのが可愛かった。
前作からの繋がりはレイアの「髪型を変えたのよ」にも表れていた。いきなり本作から観る人もいないかとは思うけれど、前作を観た人へのサービスである。

前作でハン・ソロが殺され、本作ではルークが犠牲になった。レイアは物語の中では生きていたが、レイアを演じたキャリー・フィッシャーが亡くなってしまったので次作には出てこないと思われる。次作はまったく新しい展開になりそう。
キャリー・フィッシャーの役名の上に、“愛する私たちのお姫様”と書かれていて、そこでも号泣してしまった。

今作は軽いギャグ要素も多かった。
ネタバレを入れないようにしていたけれどグッズからキャラを知ってしまったポーグですが、ただのほんわかギャグ要員だった。もっとストーリーに関わってきてしまったら嫌だなと思っていたけれど、それほど出てこなくて良かった。ジャージャー・ビンクスの悪夢が忘れられない。

目をつぶって手を差し出しているレイの手にルークが草をさわさわやって、「フォースを感じる!」と言わせるのもおもしろかった。
ルークとレイの気が合うんだか合わないんだかわからない関係も良かった。途中まで本当に親子なのだと思っていたけれど、故郷はどこだ?と聞いていたし、親子よりは遠い存在のように思えた。でも師弟ほども近くないかな。

『フォースの覚醒』の最後ではレイが無言でライトセイバーを受け取れとルークに差し出すが、本作ではルークはそれを受け取ってポイと捨てていて笑ってしまった。あんなに重要そうに渡そうとしてたのに。なんだったんだ、あのラストは。

今回のフィンの登場シーン、BB-8が「フィンが裸で漏らしてる」と言っていたけれど、確かに裸でチューブから水をびゅーびゅー漏らしててそこも笑った。

BB-8は本作でも愛すべきキャラクターだった。
コインを悪者に向かって連続で吐き出してから、銃口に息をふっと吹きかけるような動作をしていた。かわいい。
『フォースの覚醒』の前には、あの丸いのはなんなのか、ドロイドはR2-D2とC-3POだけでいいのでは?と思っていたけれど、動きがなんともかわいくて好きになってしまった。本作も良いです。

最後に出てきたレジスタンスの指輪をしていた少年が気になった。見間違えでなければ、ほうきをフォースの力で引き寄せていたようだけれどどうだろう。

本作は『最後のジェダイ』というサブタイトルですが、ルークの言葉には「ジェダイは滅びない。最後のジェダイではない!」という意味がこめられていた。
フォースの力は誰にでも備わっていて、その力を良い方へ使うか悪い方へ使うかはその人次第なのだ。良い方向へ使えばジェダイになる。フォースの力を使えるらしい少年は、レジスタンスの指輪をしていたくらいだからレジスタンス側へつくのだと思う。そうすればジェダイにもなれるかもしれない。

あと、ハックス将軍ですが、今回死ぬのではないかと思っていたけれど、しぶとく生き残っている。序盤からポー・ダメロンにからかわれてましたが、小者感が強調されていた。このタイプは最後まで生き残るのではないかという気もする。

どちらにしても、次が三部作の3作目である。はやく次作が観たい。再来年まで待てない。
でも来年の若いハン・ソロのスピンオフも楽しみ。ハン・ソロ役は『ヘイル、シーザー!』の「だがに」のカウボーイ役だったアルデン・エーレンライク。

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