『COLD WAR あの歌、2つの心』



アカデミー賞、監督賞、撮影賞、外国語映画賞の三部門ノミネート。
監督は『イーダ』のパヴェウ・パヴリコフスキ。
以下、ネタバレです。







モノクロ、スタンダードサイズ。1949年から15年間の話ということでスクリーンサイズからも雰囲気が出ていた。

説明が最低限なので、セリフなどからいろいろ考えながら観ていたのですが、映画館ロビーのレビューを読んでやっと理解できました。集中して観ていても、少しわかりにくかった。

タイトルが『COLD  WAR』なので、もっと冷戦について前面に出ているのかと思っていた。東西ドイツの壁を隔てていて、会いたくても会えない二人のメロドラマを想像していた。
そうではなくて、思ったよりも会えているのと、会えない間にも互いに恋人を作っていたりして、あまりあなただけという感じではなかった。
映画のラストに“両親へ”といった言葉が出るが、監督のご両親がまさにこの感じのくっついて離れてだったらしい。モデルにもしているとのこと。

ヴィクトルがピアノを弾いているせいだけではないと思うけれど、『ラ・ラ・ランド』を思い出した。西側に憧れるヴィクトルはチャラい音楽に身を落としたセブに見えた。バーでピアノを弾いている様子も似ていた。でも、セブは嫌々やっていたけれど、ヴィクトルはやはりそちらの音楽が好きでもあると思う。

何度か出てきた『2つの心』という曲は元々は民謡のようで、使われている言語もですが、歌の合間に入るオヨヨイと聴こえるスキャットのようなフレーズが物悲しさを感じさせてたまらなかった。しかし、フランス語に訳されたジャズバージョンではこのフレーズがない。ズーラは訳詞が気に食わないと言っていたけれど、それ以上に私は曲の良さはこのスキャットだと思ったので、それがないとなると一気に良さがなくなってしまうのではないかと思った。ズーラもレコードを投げ捨てていたし、気に食わなかったのだと思う。訳したのがヴィクトルの元恋人だからかもしれないが。

二人とも音楽をやっていて、音楽の趣味が合わなかったらうまくいかないのではないか。そこからすれ違いが始まりそうな気もするが…。
それとも、ヴィクトルは亡命先からポーランドに送還されて、強制労働をしたことで手を負傷し、音楽ができなくなったからすれ違う要因がなくなったのだろうか。

15年間という長期間の物語でその中で、愛し合って、別れて、また愛し合って…というのも好みだし、救って救われる話も好きです。
何より、ズーラ役のヨアンナクーリグがとても魅力的だった。少しレアセドゥを思わせる風貌と、歌とダンスが素敵。
最初の歌のテストのシーンから、民族衣装を着ての舞踊団のステージのシーンもどれも惹きつけられるし、酔ったバーでBill HaleyのRock Around The Clockが流れた時に、店の男性を次々変えながら踊るのが奔放で素敵だった。
でもやはり多少西の音楽に対する恨みを感じた。

ラスト付近でも商業的なメキシコの音楽を無理やりやらされていて、吐きそうだと言っていた。小さい子供もいて、明らかにヴィクトルが拘束中に生まれている。拘束期間を短くするためにズーラは何かしらをしたようで、あの副大臣と親しいと言っていた男性と結婚して子供が生まれたのかもしれないし、商業的な音楽だって、無理にやらされていたのだと思う。ズーラは才能はあるし、きっとなんでもソツなくこなすはずだ。それに、ヴィクトルのことを思えばこそだと思う。

映像は綺麗だったし、ズーラは魅力的だった。民族的な音楽や衣装などが見られたのもおもしろい。最後の結婚式のやり方も変わっていた。
けれど、肝心なところですが、ズーラがなぜヴィクトルに惹かれたのかがいまいちわからなかった…。

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