『ファンタスティック・フォー』



2015年版。ストーリーや雰囲気など、2005年のものとはだいぶ違うようですが、そもそも、原作が違うとのこと。

以下、ネタバレです。









普通に生活をしていた人たちがある原因で体に異変をきたし、特殊能力を手に入れるという大筋と、登場人物の名前は同じだけれども、他は全く違います。
前作だと宇宙船で宇宙嵐を浴びて、という原因だったけれど、今作では異次元に瞬間移動していた。
その瞬間移動も、装置完成記念というか、前打ち上げというか、酔っぱらった勢いでのものである。
天才科学者のリードと、同じく天才のヴィクターも一緒に酒を飲んで意気投合しかけていた。ジョニーと幼馴染みのベンとともに、酔った勢いで、完全に調子に乗って楽しくなった状態で、おふざけ半分で異次元へ飛ぶ。
見事飛べたものの、向こうで事故に遭い、ヴィクターだけを残して三人で帰ってくる。
その事故が原因で、三人の体に異変が起こる。もちろん、大変な異変だし、自分のことで手一杯になってしまうのもわかる。リードにとってはベンが幼馴染みで親友だし、体を元に戻してあげたいと必死に研究をするのもわかる。

でも、置いてきたヴィクターのことを誰も気にしていない。異次元に行く前の飲み会では友情すら芽生えかけていたのに。
崖に落ちていたし死んだのかと思ったのかもしれないけれど、自分たちがこうなってしまったということは、ヴィクターにもなにかしら異変があるだろうし、なにより異次元に一人残してしまうのは危険すぎる。まず異次元へ戻り、ヴィクターの状態を確かめに行くのが最優先だろう。
それなのに、誰も気にしていない。生きている死んでいるの話にも言及しない。
『火星の人』を最近読んだせいかもしれないけれど、責任を持って迎えに行ってあげてほしい。

ヴィクターはのちにドゥームになるので、仲直りなどしようもないのはわかっている。
でも、それならば、ヴィクターは前半でリードに嫉妬したり、それ以外にも負の感情を抱いていそうだったので、それが原因で敵になったら良かったと思う。それが単なる事故。置いていかれたことを恨んでいたようでもなかった。

『ファンタスティック・フォー』を冠している以上、異次元で事故にあった三人と研究所にいながらにして事故にあった一人の四人と、ドゥームが戦うのはわかっていた。でも、まったくその気配がない。
90分しかないのにこんなことやっていていいのかなと思っていたら、ほとんど唐突ともいっていい感じで異次元で戦いが始まる。異次元空間は薄暗いし、周りには人の住む建造物などもないし、誰にも迷惑がかからずに思いきりバトルができるからスリルがない。何を守って戦っているのかも明確になっていない。そもそもヒーローっぽくは見えない。

ヒーローというのは、やはり民衆から頼られてこそなり得るものだと思う。周囲が囃し立てて、ヒーローが作られるのだ。
彼らの存在は、民衆の前には出ていなかったし、具体的に民衆を何かから救うということもしていない。一部のお偉いさん方には存在が知られていて、軍で利用したいなどという提案が出されていたが、そういうことではない。
挙げ句、“ファンタスティック・フォー”という呼び名も自分たちで考えていた。誰もファンタスティックとは言ってくれないから自分たちで名乗るなんて悲しすぎる。

リード(Mr.ファンタスティック)役にはマイルズ・テラー、その幼馴染みベン(ザ・シング)役にジェイミー・ベル。この二人の少年時代の話も良かったし、大学生になってからもぼんくら科学オタクっぷりが良かった。変身してからが良くなかった。
特にジェイミー・ベルは元々アクションができる俳優なのに、彼の身軽さというかすばしっこさがまったく生かされていなかった。なんせ岩である。見た目にもジェイミー・ベルの名残がまったくない。
名残がないといえば、ヴィクター役のトビー・ケベルそうだ。同じ悪役でも『猿の惑星;新世紀』のコバとは大違いだ。今作だと、トビー・ケベルもジェイミー・ベルも、彼らで会う必要が無い。

元も子もないことを言わせてもらうと、『ファンタスティック・フォー』ではなく、同じ俳優さんたちを使った学園ものが観たかった。

そんなことを考えてしまったのだが、監督が『クロニクル』のジョシュ・トランクで納得した。結局私はこの監督さんの作る『クロニクル』と同じ系譜のものが観たかったのだ。

主人公リードは科学に関しては天才だけれど、人付き合いは下手。幼馴染みのベンだけは、彼に付き合っている。科学の才能も認めていて、コンビのような形で研究を続けている。
ある日、美人で科学の才能もあるスーザンに出会い、恋をする。彼女の弟、ジョニーは学園の人気者で生徒会候補(演じているのがマイケル・B・ジョーダンなので『クロニクル』から設定をいただきました)という点でもリードは萎縮してしまう。
更に、スーザンは幼馴染みのヴィクターと何か関係がある様子。ヴィクターは影のある不良タイプで、同じ学校だけれど、来てはいないようだ。見た目腕っ節ともにリードはかないそうにない。けれど、ヴィクターも科学に精通している。ヴィクターからも、科学やスーザンの件両方で、リードはライバル視される。
リードとヴィクターは、スーザンを賭けた科学バトルをすることになるが…といった内容のほうが観たい。科学バトルは学園で行われる科学コンテストとかでもいい。二人の賭けの対象にされたスーザンが、怒って自分もコンテストに参加してもいい。
それで、全員の発明品がとんでもないもので、事態が大きくなってしまい、結局なんやかんやで地球の平和を守るまでに発展してもいい。

マイルズ・テラーはアーロン・テイラー=ジョンソン、ジェシー・アイゼンバーグが失った童貞俳優臭があるのでそこを生かしてもらいたいのだ。特に前半のメガネが良かったので、本当ならずっとメガネでいってほしかったくらいだ。学園ものならずっとメガネでもいけるはず。

『クロニクル』系のこじらせ男子ものなら、ヴィクターが主人公でもいい。ベンのような相棒もいないし、何せ、トビー・ケベルが何かひどいことを企んでいそうな顔をして、コンピューターに一人で向かっている姿は良かった。

俳優、監督、題材のすべてがかみ合っていない印象を受けた。次作はもう少し話が動くのだろうか。

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