『スター・トレック BEYOND』



リブート版(クリス・パインがカーク艦長役)三作目。
『スター・トレック』と冠してあると、過去作を見直さなきゃいけないのではないか…と考えてしまい、ハードルが上がってしまうかもしれないけれど、過去のスター・トレックシリーズはもちろん、リブート版の過去二作を観ていなくても楽しめる。
単体で、構えず軽い気持ちで観ても大丈夫だと思う。
もちろん、知っていると楽しいという隠し要素もあったのだと思います。

以下、ネタバレです。








狛犬のようなエイリアンを見上げながら、カーク艦長が何やら交渉をしているシーンから始まる。声も低いし、勝手に大きいサイズを想像していたら、交渉が決裂して襲いかかってきたのは子犬サイズのエイリアンだった。命の危険は大量に襲いかかってくるため鬱陶しい。結局、二、三匹連れたまま転送されて事なきを得る。
このコメディ風味のオープニングで本作のカラーが大体わかった。

軽快なやりとりや軽口のたたき合いが今まで以上に多い。これは、脚本にサイモン・ペグが関わっているからではないかと思う。しかも、だいぶ彼の色が多く出ていると思った。

別の星に墜落し、機体ばらばら、クルーは一部捕虜になってしまい、それ以外の無事だった人たちもばらばらになってしまう。
しかし、クルーをばらけることで、キャラが見えやすくなるし、少人数の方が会話も楽しめる。

また、捕虜の奪還作戦においては、少人数が役割分担をし、エンジニア、医者などその人が自分の仕事をこなすということで、現在よくある形の個人がそれぞれ精一杯のことをするお仕事映画でもあると思った。

これはこれでおもしろいのですが、陸上戦でもあるため、少しこぢんまりしてしまっているかなとは思った。

この後、宇宙に出て行って、混乱させて敵の連携を崩すために大音量で音楽を流すという作戦を立てる。かなり盛り上がるシーンである。ここで何を流すんだろうと興味津々だった。そこで、「ビートと叫びよ」と言って、プレイボタンを押して流れ出したのは、ビースティ・ボーイズの『Sabotage』! 他のどの曲にも間違えようがない、あのめちゃくちゃかっこいいイントロ! 思わず映画館のイスに座り直してしまった。
これ、予告編で使われなくて本当に良かったと思う。サプライズでこの曲がくるからこそ効果がある。
ここまで、おもしろいけれどちょっとスケールが小さいかな…と思いながら観ていたけれど、最高の場面で最高の曲が流れ、本作の私的評価が一気に上がった。

戦闘は宇宙からコロニー内に入っていく。ここで出てくる都市がリングの内側に住居があるというか、重力が無視された上も下もない空間なので、そこを飛ぶのは狭いせいもあるけれどスリリングだった。

敵の正体は結局、かつての宇宙探査船の艦長だった。カークと同じ立場である。カークは本作で冒頭から悩んでいて、艦長の座を退こうとしていた。けれど、悩んだ末に悪の道へ進んでしまった元艦長を諭しながら、自分をも諭していたのだと思う。

この元艦長役がイドリス・エルバでびっくりした。謎の物体に包まれながら宇宙空間へ消えていき、あの胸に付けていたバッジがぽつんと残るという最期だったけれど、より凶悪な姿となっての再登場もあるのだろうか。

カークは今回の旅と戦闘を終えて、悩みを克服し成長した。最後には「次の旅に出るのが楽しみだな!」というようなことも言っていた。
それと同時にスポックも序盤はもうやめるというつもりでいたようだった。彼は亡くなった父に想いを馳せていた。
元祖スポックを演じていたレナード・ニモイが去年亡くなったが、亡くなった父の写真というのもレナード・ニモイであり、作品内で発せられた追悼のメッセージでもあったのだと思う。

そして、本作の公開直前にはアントン・イェルチンが亡くなっている。
最後のカークの誕生日パーティーでカークが乾杯の前に、「そして亡き友に」と言っていて、一瞬、アントンのことかと思ってしまったけれど、映画内で亡くなったクルーたちのことである。アントンは元気そうに、グラスを傾けていた。パーティーでもロシアジョークで女性を口説こうとしていた。

亡くなったなんて信じられないと思っていたが、最後に、“レナード・ニモイへ”という言葉が流れ、その後に“そして、アントンへ”と流れた。本当に残念でならない。

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