『高慢と偏見とゾンビ』



イギリスの古典文学、ジェーン・オースティンによる『高慢と偏見』(1813年)の世界にゾンビをミックスした作品。この原作も小説です(2010年)。

両方とも原作は読んでいません。1940年のローレンス・オリヴィエ版も未見。
1995年のドラマ版は観たのですが(過去の感想『高慢と偏見』)、2005年の映画版『プライドと偏見』は観ていなかったので、今回予習として観ました。

以下、ネタバレありです。
『プライドと偏見』についてのネタバレも含みます。









ダーシーがどこかの家(ベネット家ではない?)で、普通の人間に紛れていたゾンビをあぶり出して退治するというシーンから始まった。こんなシーンはもちろん、本家にはありません。なので、名前だけ本家と同じにして、ダーシーというゾンビハンターが活躍するストーリーなのかなと思った。

しかし、このアバンが終わり、オープニングが入って本編が始まると、「ビングリー邸に若い殿方が越してきたわよ」と母親が本編と同じセリフを色めき立って言う。ただ違うのは、それを聞いている5人姉妹がみんな銃を磨いているということです。この子たちも、ゾンビを倒すための訓練を積んでいる。

続いて、ビングリー邸の舞踏会へ参加するのも同じなのですが、ドレスの下にナイフを忍ばせている。

舞踏会でビングリーがジェーンを見初めるのも一緒、エリザベスがダーシーと会うのも同じである。
しかし、舞踏会にはゾンビが乱入してくる。それを5姉妹が中国で習った少林寺拳法を駆使して倒すのだ。クラシックな衣装のままやるのが面白い。
この、5姉妹がばったばったとゾンビを倒していくシーンが痛快だったし見応えがあったので、後半にもう一回くらいあると良かった。前半のここのみです。

話の流れは大体同じだし、名セリフはちゃんと残されている。コリンズ氏のプロポーズを断ったエリザベスに母親が激怒し、父親に「あなたからもなんとか言ってやってくださいよ」のシーンの「プロポーズを断ったら母さんと絶縁、受けたら父さんと絶縁だ」というセリフ。また、ダーシーとエリザベスの甘い言葉のやり取りの長いシーンが、二人で手合わせしながらになっているのも面白かった。

また、ドラマ版の『高慢と偏見』で話題になった水濡れダーシーのシーン。『プライドと偏見』にはなかったんですが、本作ではわざわざ加えられている。ちゃんと白いシャツに着替えていたけれど、飛び込んだ池が苔だらけですごく汚くて笑った。押さえるべきところをちゃんと押さえられていて、本家へのリスペクトを感じる。

基本的には『高慢と偏見』なんですね。でも、途中途中でゾンビが乱入してくる。だから、タイトル通り、まさに『高慢と偏見とゾンビ』だった。

キャサリン夫人は、ドラマ版でも映画版でもキーキー言ってて怖かったんですが、本作ではとてもかっこいい。伝説のゾンビハンターみたくなっていた。黒い眼帯姿です。

いとこのコリンズ牧師はベネット家の遺産相続人なんですが、ベラベラ喋るわ空気を読めないわで、憎めないところはあるけれど、結婚するとなるとちょっと…というキャラクター。ただ、場が和むというか、作品中で一番愉快なキャラクターでもある。
本作にも出てくるのかなと思っていたら、なんとこれがマット・スミスで驚いた。でも、マット・スミスは出てくるの知っていたし、途中まで出てこないからもしかして牧師なのかな…と思っていたら、本当に牧師で笑ってしまった。

『プライドと偏見』ではコリンズ牧師をトム・ホランダーが演じている。ダーシーと並んだ時にちんちくりん(165センチ)で、これはとてもかなわないなというのが見て取れる。
ただ、マット・スミスは182センチである。ダーシーを演じるサム・ライリーは185センチとそれほど変わらない。
元々マット・スミスが好きなこともあるけれど、ペラペラと喋る様子もキュートに見えるし、このコリンズ牧師なら全く問題なく結婚できると思ってしまった。

後半のリディアとウィカムの駆け落ちの後は、ゾンビ問題を片付けねばならないのでオリジナル展開だった。まあそうなるかなとは思うけれど、ウィカムが原作よりもかなり悪者です。
映画版『プライドと偏見』ではジェーンとエリザベス以外の姉妹にはほとんど触れられていなかったが、本作もほとんど出てこないし、見せ場(?)である駆け落ちもなんとなく問題が片付く感じでちょっとかわいそう。舞踏会でピアノを弾いて怒られるシーンも本作には出てこなかった。
だからこそ、ますます五人で戦うシーンがもっとあったら良かったのになあと思う。

悪役ウィカムを演じているのがジャック・ヒューストン。『キル・ユア・ダーリン』でジャック・ケアルックを演じていた(ちなみにウィリアム・バロウズを演じたベン・フォスターの出演する『インフェルノ』の公開ももうすぐ)。

ラストというかエンドロールのあたりのあれは、続編があるということなのでしょうか? それともあれはあれで終わりなのかな。原作だとどうなっているのだろう。

『高慢と偏見』にうまくゾンビが混じっているし、アイディアはとても面白いけれど、ゾンビ映画としてはどうなのだろう。別に怖くはないです。グロさもない。ゾンビ自体もゾンビというより大怪我をした人みたいに見えるし、コミュニケーションを取れたりもする。 知恵も使っていた。走ってくる。一応、脳は食べていたけれどゾンビっぽくはなかった。

パロディ元の『高慢と偏見』を知らずにこの作品をいきなり見た場合はどう思うのかわかりませんが、元の作品がよくできたラブストーリーだし、ラブストーリー部分はわりと忠実だと思うので、この作品だけ観ても伝わるのではないかと思う。けれど、ドラマ版か映画版、どちらかを観ていた方が楽しめる部分も多くあった。

個人的にはドラマ版が好きです。原作があるものだし、時間の関係もあるのだと思うけれど、映画版はドラマ版の総集編のように見えてしまった。
あとやはり、ドラマ版のダーシー、コリン・ファースがとても素敵です。






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