『ジェイソン・ボーン』



タイトルではわかりにくいけれど、リブートではなく、ボーン三部作の続編。
主演はマット・デイモン、監督は『ボーン・スプレマシー』、『ボーン・アルティメイタム』のポール・グリーングラス。

最初の『ボーン・アイデンティー』が2002年、『ボーン・アルティメイタム』ですら2007年公開であり、鑑賞したのはもっと後だったとも思うけれど内容はほぼ忘れてしまっていた。
本作を鑑賞した後、三部作を見直してみました。

結果、内容を忘れたまま、ボーンと一緒に記憶を辿る旅に出ながら観るのも楽しかった。けれど、ボーンの大体の素性とCIAとの関係くらいはわかっていた方が混乱しないかもしれない。

以下、ネタバレです。三部作についてのネタバレもあります。









一緒に記憶をさぐっていくとは言っても、『ボーン・アイデンティティー』で出てきた時にはまるまる何の記憶も無かったボーンですが、本作では色々と思い出してきている。私よりも事情がわかっているようだった。

CIAに作られた殺人マシーンというのも観ているうちに思い出したので、最初は、ボーンはCIAに属しているのかいないのか、そもそも、ボーンが主人公で善だとすると、CIAは本作では悪になるのかなどがよくわからなかった。
けれど、善悪というよりは、ボーンは元はCIAに属していたけれど、記憶を失ってからは過去を捨てたいと思っていて、もう戻りたくないと逃げ、CIAがそれを追いかけるという構図でした。

また、今旬の女優、アリシア・ヴィキャンデルがCIAの新人職員として出てきて、ボーンを影で手助けしていたので、きっと二人は恋仲になるんだろうなと思っていたらそうではなかった。

そもそも、ヘザー(アリシア)が接触を図ってきて、ボーンがヘザーのことを調べた時に、ヘザーの顔はそっちのけで経歴に注目していた。美人ですが、顔写真はパソコン画面でスクロールされてしまっていたのだ。
ボーンが顔なんて見ていないというのがわかる良い演出だと思う。

ヘザー自体も色仕掛けなど使わないけれど、ボーンも全くなびかないし、事態が収まってもキスなんてしない。
ヒロインとも違って、男でも女でもどっちでもいい役だったと思う。

結局、ヘザーも良心というよりは野心で行動していたのがラスト付近でわかって、これは小さなどんでん返しだと思うんですが、しかし、ボーンはそれすらも見破っていた!という大きなどんでん返しが控えているのが素晴らしい。
どこへともなく、一人去っていく背中が小さくなり、“お馴染みの”テーマ曲のイントロが流れてきて私は全てを思い出しました。

そうだった、共通のテーマ曲があるのだ。それがキメのシーン、思わずニヤリとさせられるシーンの後でイントロがかぶるように流れ出して、エンドロールが始まる。まるで連続ドラマのようだ。
同じ歌が始まって、そうだ、こうだったこうだったと思い出したので、音楽の力の強さを痛感した。

気になって見直した過去三部作ですが、ボーンの父親のことが過去作にも出てきているのかなと思ったけれど、今回初めてだったっぽい。あと、ヴァンサン・カッセルとかトミー・リー・ジョーンズとか豪華だけれど、今回初めて出てきていた。
ヴァンサン・カッセルは字幕では“作戦員”となっていたけれど、過去作でいう工作員なのだと思う。工作員という言葉が何らかの事情で使えなかったのか、はたまた誤訳なのかは不明です。そもそも、作戦員という言葉があるのかどうかもわからないけれど。

本作ではヴァンサン・カッセルが作戦員(工作員)、トミー・リー・ジョーンズがCIA長官だったけれど、過去三部作でも、工作員をクライヴ・オーウェンやカール・アーバン、CIA長官をクリス・クーパーやブライアン・コックスが演じていたりとそれぞれ豪華。

改めて過去作を観てみると、CIAがボーンを追い、ボーンは逃げるが仕向けられた工作員と戦うことになる。ラストはまた一人、影の中へ消えていくという流れが同じであり、それは、本作にも引き継がれていた。
あと、カーチェイスがある。

本作のカーチェイスは工作員がSWATの装甲車を盗んでゴリゴリ走っていく。公道で普通の乗用車が蹴散らされていてパワーがものすごかった。しかも、そのままカジノに突っ込んでいく。そんなだから、車はどんどん壊れていく。

このシーンだけではないのだけれど、ポール・グリーングラス監督の特徴でもある手持ちカメラが多用されている。特にカーチェイスから殴り合いのシーンは、酔いはしないものの、ひと段落して画面が暗転した時に、目がほっとしていた。ちょっと疲れました。

一作目の『ボーン・アイデンティティー』の別パターンのエンディングがDVDに収録されていたので観たのですが、マリーの元にボーンが戻ってきて、長い長いキスをして、その周りをカメラがぐるぐる回って、感動的な音楽が流れているというロマンティックすぎるものだった。
採用されたのは、マリーの経営するレンタルバイク店にボーンがふらっと現れる。マリーは驚きながらも、レンタルの会員証を作りますか?みたいにわざと客に接するような態度をとると、ボーンが「身分証?持ってないんだ」と言うという、記憶をなくした男という面もちゃんと出しているし、ベタベタしすぎないし、完璧な終わり方だった。
ここでボーンのキャラが決定づけられたのではないだろうか。

マリーは次作の冒頭で殺されてしまうけれど、その先、ボーンは誰も信じない、ほぼ笑わない。硬派な一匹狼である。それは、9年ぶりに公開された本作でも同じだった。
つまり、ボーンを演じるマット・デイモンが、変わらず恰好良いのである。


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