『キング・アーサー』



ガイ・リッチー監督。
一応、アーサー王やエクスカリバー、キャメロット城などはでてくるけれどワードだけ借りたという感じ。円卓の騎士を知らなくても大丈夫だと思う。ただ後述しますが、知っているにこしたことはない。

最初のロゴが出るところから3D演出っぽいのだが、全国でも数えられるくらいの劇場でしか3Dでの公開はない。

また、最初はサブタイトルに“聖剣無双”と付いていたが、いつの間にか取られてしまった。内容がまさに聖剣無双だったので付いていて欲しかったけれど、権利関係だったのだろうか。

以下、ネタバレです。








最初に装飾を付けた巨大な象が大暴れしていて、なんとなく『300<スリーハンドレッド>』を思い出していたのだけれど、戦う人数が多い様子からも思い起こさせた。また、バトルシーンで急にスローモーションになる様子もザック・スナイダー監督のようだと思った。
大迫力のバトルで期待していたのだけれど、ドラマパートで退屈になってしまった。

ガイ・リッチー監督によくあるようなカット多めでちゃかちゃか進んでいくあの手法が何度か出てくる。最初、アーサーが幼児から少年を経て大人役を演じるチャーリー・ハナムになるまでが早かったのはテンポがいいなと思った。

過去の回想を現在の会話に織り交ぜながらやる手法や、これから起こる未来のこと例えば作戦などを話しながらその映像を入れていくのもとてもガイ・リッチーらしい。
しかし、本作では最初のアーサーの成長シーン以外は逆に動きが止まってしまったり、テンポが悪く感じてしまった。いつものガイ・リッチー映画なら好きな演出である。

理由はよくわからないのですが、作品のテイストと合わないのだと思う。両親を殺され、売春宿で育った男が復讐を果たす話だ。多少重めである。
ちゃかちゃかしたカット割りをするには粋さが足りない。軽いセリフまわしも少なかった。

だから、Sam Lee & Daniel Pembertonの『The Devil and The Huntsman』の地を這うようなメロディーと重々しい歌声は映画によく合っていた。
また、ラストで、父の背中に刺さるはずだった聖剣を寸前でがっと受け止めるシーンは感動的だった。
もっと重い作りにしてしまっても良かったと思う。

あと、いくらピンチに陥っていても、聖剣の力周囲の敵が一掃されたり、魔術師が巨大な蛇を出したりと、それがオッケーならなんだってできてしまうというのが後出しされて萎えてしまう場面もちらほら。
ただ、これもガイ・リッチーにはよくある力技かなとも思う。

思い切って、監督のいつものカラーは決して欲しかった。けれど、そうすると、ガイ・リッチーが監督をする意味がなくなってしまう。いつものガイ・リッチーは好きだけれど、その作風を持ち込んでほしくない内容だった。

アーサー役のチャーリー・ハナムですが、結構マッチョでもあるので、聖剣を引き抜くのも選ばれし者というより力ずくに見えてしまう。またそれほど細かい機転がききそうには見えないのだけれど、罠なのを察したりしていた。真っ先に突っ込んで行きそうなところを他の人に「罠だ!」と止められる側のキャラだと思う。

また、日本のキャッチコピーが“スラムのガキから王になれ!”だし、貧しい育ちという設定だから衣装が簡素なのは仕方ないが、アーサーが終始、寝間着みたいな格好なのはどうにかならなかったのだろうか。
チャーリー・ハナムの好きなのだが、華がなさすぎた。敵側のほうが恰好良く見えた。

部下の鎧も恰好良かったが、なにしろアーサーの父親ユーサーを殺した弟のヴォーティガン役のジュード・ロウが恰好いい。
『ピウス13世』のことを思い出すと、コスプレが似合うのかもしれないし、暴君役が似合うのかもしれない。王冠を退屈そうに手で弄んでいる様子なども良かった。

序盤で鼻血を出すシーンや泣くシーン、後半では返り血を浴びて血まみれになるシーンもあり、ある特定のフェチの人(私もそうです)向けのサービス映像だと思った。これは、ガイ・リッチーだからこそ入れたものかもしれない。

ただ、ジュード・ロウがこれだけ恰好良いのだから、ラストバトルはジュード・ロウの姿で戦って欲しかった。生贄をささげて悪魔の力を得るのはいいけど、姿まで悪魔になることないだろう。アーサーとの一騎打ちは美しいジュード・ロウで行って欲しかった。一番の見せ場を消してどうする。

父を殺した異形の者と同じ姿にしたかったのかもしれないけれど、なら、父を殺すのもジュード・ロウの姿で良かったと思う。どうせ後ろから狙っているんだし。何度か目を光らせていたし、姿を変えなくてもそれで悪魔に魂を売ったことはわかる。

剣と剣を交えさせたかったから筋肉質の大男的なものに変えたのかもしれないけれど、ジュード・ロウの姿で魔術か何かを使って剣術をさせることもできたはずだ。ここまで何でもありで来てるんだし。そもそも、大男との戦いも大した剣術じゃなかった。

なんでジュード・ロウ姿じゃないんだ…と思いながら観ていて、バトル後、ジュード・ロウの姿に戻ったときにアーサーが手の甲にキスをするシーンがあって、やっぱりジュード・ロウで観たかったと再確認した。残念だ。

ラストで一緒に戦った仲間をパーシヴァルなどと名付けていて、最後の最後で円卓が出てきてにやりとさせられた。
私は映画は終わり良ければ…派なので、途中が退屈でもこのラストで許したんですが、これはアーサー王関連の話を知っているからである。
だから、本作を観るにあたっては知らなくても大丈夫だと思うけれど、知っているにこしたことがないというのは最後でにやりとできるかできないかというところなのだ。

ところで、私はラストバトル中にピンチになったところにマーリンが参戦するんだと思ってたんですね。他にも、グィネヴィアやランスロットなど、『アーサー王の伝説』での有名どころが出てきていない。

円卓が出てきたのもラスト、名付けられたのもラスト、そして主要人物が不在…これってもしかして続編が作られたりするのだろうかと思って調べてみたら、続編どころか、全6部作構想らしい。

本作で一番良かったジュード・ロウは出てこない。けれど、アーサーも王になったし、もう少し華があるようになるかもしれない。一応復讐は終わったしストーリーのテーマもそれほど重くもならないかも…。そうすれば、ガイ・リッチーの作風と合うかも…。そもそもガイ・リッチーが続編も撮るのだろうか。
なんとなくの不安は残るけれど、おそらく次作からは円卓の騎士まわりの知識はあったほうが良さそうだとは思う。

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