『怪盗グルーのミニオン大脱走』



怪盗グルーシリーズの三作目。単体でも楽しめるとは思うけれど、登場人物のことを考えると一作目から観たほうがよさそう。
ちなみに『ミニオンズ』はまた別です。

吹き替えで鑑賞。グルー役の笑福亭鶴瓶が相変わらず合っていた。

以下、ネタバレです。









今回の悪役はかつて子役として人気だったが今では見向きもされなくなった男、バルタザール。
過去を引きずって生きているので、肩パットなどファッションが80年代風、武器や基地がルービックキューブだったり、ショルダーキーボードを持っていたりする。
序盤から『Take My Breath Away』や『Bad』が使われていて、他にも『Take on Me』『Into The Groove』など、80年代ソングもふんだんに使われている。
また、ルーシーが『Physical』を少し口ずさむシーンがあって、あ!これバルタザールが変装してる!とわかる仕掛けもあった。

ただちょっと悪役としては弱いかなあと感じた。相棒のアンドロイドも出てくるが、あまり活躍しないのも残念。

最後にグルーと対決はするけれど、そこに重きが置かれてはいないと思った。

一作目『怪盗グルーの月泥棒』では、グルーは三姉妹と一緒に暮らすことになった。
二作目『怪盗グルーのミニオン危機一髪』ではルーシーと結婚した。
そして三作目の本作ではグルーの双子の兄弟ドルーが登場。

私はこの弟が本作の敵なのかと思っていた。というか、予告編を見た時点では、本当の兄だとは思っていなかった。ただの他人の空似なのかと思っていたけれど、グルーの母親が序盤であっさりと認めた本物の兄弟だった。

性格は似ていなかったけれど、これまたあっさりと打ち解けていた。
カツラをつけて二人が入れ替わるシーンは、吹き替えのほうが楽しいと思う。オリジナルではグルーもドルーもスティーヴ・カレルだが、吹き替えはグルーは笑福亭鶴瓶、ドルーは生瀬勝久である。生瀬勝久が今回の吹き替え陣では抜群にうまかった。また、グルーの鶴瓶が関西弁、ドルーの生瀬が標準語なのもおかしさを倍増させる。
ぎこちない関西弁のグルー(生瀬声)、ぎこちない標準語のドルー(鶴瓶声)。カツラもズレているし、映像だけでも入れ替わっているところが丸わかりだし、三姉妹やルーシーは気づいていて白けている中、楽しそうにきゃいきゃいしている二人が可愛かった。

ただ、ドルーが悪党としての仕事をグルーと一緒にしたいのに対して、グルーは悪党からは足を洗っている。
その辺の齟齬から二人の間に亀裂が入り、ヘタレっぽく見えたドルーが本物の悪党として覚醒するのかと思った。
けれど、特にしない。バルタザールはかませ犬で、より悪い存在が出てくる(ドルー?)と思って観ていたから余計に弱く感じたのだ。

ドルーは悪党に憧れてはいるけれど最後までいい奴で、結局、グルーにはまた大切なもの、守らなくてはいけない人が増えた。
ただそうすると、グルーがどんどんいい人になっていき、Despicable Me(原題)でもなんでもなくなる。
本作では、序盤に、ドルーに誘われた時に様々な機能の付いている車で危ないドライブをするシーンが良かった。あの、昔の血が騒いでいるような悪い顔のグルーがセクシーで、ああ、私はこの姿が見たいんだなと思った。
このままだと、グルー自体が中途半端な存在になってしまう。

三姉妹、ルーシー、ドルーと登場人物が増えていったわけだが、忘れちゃいけない、最初からミニオンもいる。
タイトルにもなっている“大脱走”。脱走というよりは脱獄だけれど、刑務所に入るところから脱獄まで、一切グルーは関係ない。『怪盗グルー“と”ミニオン大脱走』にしたほうが良かったのではないか。今回、ミニオンたちはミニオンたちで別行動である。序盤に、悪党をやめたグルーにブーイングしながら出て行ったのだ。気持ちはわかる。

グルーがバルタザールのアジトへ忍び込む時に「ミニオンのほうが役に立つ」みたいなことを言っていてハッとした。私が観たいのはそっちではないか。ミニオンの脱獄をグルーが手伝うことはないし、ラストバトルで合流して一緒に戦うこともない。

ミニオンとグルーの戯れは今回ほとんどない。メルがグルーとの思い出を回想するシーンがあるけれど、これが無かったら完全に別々である。怪盗グルーシリーズにミニオンシリーズが割り込んできたようだ。はっきり言って、本作はミニオンが出てこなくてもストーリーに支障はない。けれど、キャラ自体が人気があるから無理やり割り込ませたように見える。

それに、今作では三姉妹とルーシーもグルーとはほとんど別行動である。アグネスとグルーがユニコーンいる?いない?みたいにベッドルームで話すシーンも良かったから、本当はこちらの戯れも観たかった。

グルーは本作ではずっとドルーと行動をしている。それはそれでおもしろかったからいいのだけれど、三姉妹とルーシー、そしてミニオンが別の話として進行していくのが少し寂しい。
かといって、グルーは一人だから、全員と戯れるわけにはいかない。だからもう、本当は別々の作品にしてほしかった。三姉妹とルーシーとグルー、ミニオンとグルー、ドルーとグルーという、グルーさん三本立てのオムニバスにしてほしかった。

ここで終わりとも思えなかったが、続編が作りにくそうだと思った。
これ以上、登場人物というか身内が増えてしまうと、グルーは更にいい人になってしまう。もっと姑息で意地悪なグルーが見たいのに。

ボスを探す習性のあるミニオンは、最後はドルーと消えていった。悪党になりたいドルー、そして、悪党をさがしていたミニオン。これ以上ない組み合わせだとは思う。
でも、ドルーとミニオンがわちゃわちゃやってて、そこにグルーが混じらないのも寂しい。

今作も決してつまらなくはないが、話のバランスが相当危ういと思っていて、続編も方向性によってはどっちに転ぶだろうと思ってしまう。うまくまとめてほしい。
それより前に、ミニオンズシリーズが来るのかもしれないけれど。



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