『バーフバリ 王の凱旋』



インド映画は少し苦手だったので躊躇していたのですが、あまりの口コミの勢いに押されて観に行った。ファンの声が大きい作品だと期待しすぎて白けてしまうこともあるのですが、期待以上だった。
2/21ともうすぐソフト化もされるようですが、アクション要素はもちろんなんですが、音楽がどれもこれも恰好いいので家のテレビで観るより映画館のほうがいいと思う。最初の曲から、鳴らされるドラムの音の響きで正解だったと思った。

前作は観ていないですが、5分でわかる前作『バーフバリ 伝説誕生』もYouTubeなどでも観られるし、劇場によっては本編前に上映される。
でも、時系列の関係から私は前作の映像は見ないほうが良かったと思う。本作は時系列では前作の過去であるということを知らなかったので、余計に混乱してしまった。

以下、ネタバレです。








最初の曲も良かったのですが、映像もめちゃくちゃ恰好いい。頭に火鉢を乗せたシヴァガミが儀式をしていて、足を止めてはいけないが象が暴れているというピンチ。そこに息子であるバーフバリが登場。
まず登場しただけで安心感がある。象相手でも建物を倒すなどしてやっつけてしまう。倒れた建物はシヴァガミの通る道だけを残す。
そして違う象は手なづけて、儀式も成功し、バーフバリは象の上に乗って象共々お祝い。
全体的に大げさであり、そんな馬鹿なという要素の連続なんですが、撮り方と画面の構図がいちいち恰好いいし、なんせ主人公のバーフバリの無敵加減が本当に恰好いい。最初の10分くらいだと思いますが、このシーンを観た時点ですでにバーフバリ!バーフバリ!と映画の中の民衆と一緒に称えたくなった。

バーフバリは王になる前に外の世界を見てきなさいとシヴァガミに言われ、従者のカッタッパと一緒に旅に出る。そこで出会ったクンタラの姫、デーヴァセーナに恋をするんですが、この出会いのシーンも素晴らしい。なかなかデーヴァセーナの顔が見えない中、舞う布がスーッと切られ、目の部分だけが見える。美しいし、これが運命の出会いなのがわかる。
この後、浮かれたバーフバリが浮かれたまま敵と戦うのも良かった。片手間でも大人数を相手に勝利する。
しかし、クンタラの中ではバーフバリとカッタッパは身分を隠さなくてはならない。何もできませんという風を装っている様子はコメディタッチで面白かったしキュートだった。
デーヴァセーナの従兄クマーラは教育係としてバーフバリたちに偉そうにしていたが、クマーラをこっそり手伝って武勲を上げるのを手伝っているのも良かった。クマーラはそうとは知らずに愚鈍な男などと呼んで蔑んでいたが、バーフバリはおとなしく従っていた。こう見ていると、私としてはバーフバリ、怒ってもいいのに……とも思ってしまったんですが、バーフバリは正体がばれたときにもクマーラに剣を授け、勇気を与えていた。結果、駄目な意気地なしだったクマーラも強くなった。バーフバリ、まさに、尊敬に値する王である。

クンタラが大軍に襲撃を受けた際、デーヴァセーナは弓の名手なので自ら敵を倒していたけれどとても追いつかない。そこで後ろから3本の矢が飛んできて、振り向くとバーフバリが三本一気に放っている。実は、このシーンは事前に映像を見ていて、これを見て映画を観ようと決心しました。
一気に3本矢を放って、しかもそれが全部命中するなんてこと、他の映画では観られないし、他の登場人物がやっても嘘くさくなるだけだけれど、もうこの時点でバーフバリならやるだろうという説得力があった。それを恋するデーヴァセーナに優しく教えてあげていた。指を4本、その間に矢を挟む。教わったところですぐにできないとも思うけれど、デーヴァセーナは弓の名手なのですぐ取得する。二人で6本の矢を放つんですが、そこの二人のポーズというかコンビネーションも美しかった。

大軍相手に牛飼いたちが僕らは農民だし何もできない…と言っていたが、ツノに火をつけた牛の大群を放っていた。それだけでも今まで見たことがない画面に笑ってしまうのですが、その走っている牛2頭の上にバーフバリが仁王立ちしていた。
そこで思い出したのが、『戦国BASARA』で走っている馬2頭に仁王立ちしている伊達政宗です。このシーンに限らず、大げさ具合と、そんな馬鹿なと思いつつも恰好良さが勝ってしまう感じはとても『戦国BASARA』っぽい。

大軍は水で一気に流していた。基本的にバーフバリが一人で活躍するので、大人数を倒すためにはそのような方法を使う。木を倒すとか、この先も火で焼くというのもあった。てんこ盛りである。

バーフバリはデーヴァセーナを妻として祖国マヒシュマティに帰るが、その時に乗っている白鳥の船も綺麗だった。インド映画らしく、恋のシーンは歌って踊る。白鳥の船も羽根の部分が帆になっていたけれど、その帆が下向きになって羽ばたき、空へと登る。イメージ映像です。
そりゃそうだとも思うんですが、インド映画の踊る歌うもイメージなんですね。ミュージカルと同じということか。ミュージカルも突然歌い出すのが苦手という人もいますが、私はミュージカルは別に平気なので、今後インド映画の見方も変わりそう。

この後、勘違いやデーヴァセーナの気の強さのせいで、バーフバリが追放されて兄が王になったりと少しだれるシーンが続く。だれるというかアクションが少なくなってしまうし、146分と長い映画なので仕方がない。

兄は最初はそんなことなさそうだと思っていたけれどどんどん悪いやつになっていった。
うまく策略を練られ、結局カッタッパがバーフバリを刺して殺してしまうんですが、これ、5分でわかるバーフバリ前作で観た…。その先のバーフバリの息子だけ逃すシーンも観た…。ちょっと混乱して、バーフバリが父と同じ運命を辿っているのかと思っていたんですが、そうではなくて、前作はその逃がされた息子が大人になって真実を知るまでの話なのだと思う。
本作は息子が逃がされた後、20年くらい時間が飛んで(多分これが前作)、大人になったバーフバリの子供が出てくる。

年をとったデーヴァセーナも出てくる。自分も酷い目に遭わされているし、最愛の夫を殺されたが怒りを通り越しているのか無表情である。

兄はマヒシュマティ王国で独裁国家を作っていた(これも前作でやったのかも)。自分の巨大な黄金の像も建てている。
兄が乗っている戦車が、回るカミソリが付いていて走ると周囲の人物を切り刻み、前面からは弓矢がヒュンヒュン出てくるという凶悪なものだった。これも『戦国BASARA』に出てきそう。また、雨のように降ってくる矢を盾を甲羅のようにして防ぐのは『300』を思い出した。あのやりすぎ感にも似ている。

城へ続く橋は上げられてしまった。さあ、どうしようというときに、しならせた椰子の木の枝に六人の兵士が乗り、びよんと飛ばし、それだけならまだしも空中で六人が盾を外に構えた爆弾のような形になって一気に乗り込んでいくのも面白かった。これも、他の映画で見たことない。

デーヴァセーナは無表情のまま、映画の最初でシヴァガミがしていた儀式を行う。無表情だが、強い意志が感じられる。
バーフバリの息子はバーフバリ兄との肉弾戦の一騎打ちを行う。建物のひびが入って、行くかなと思って見ていたら、趣味の悪い黄金の銅像が倒れた。デーヴァセーナの行く手を阻むべく橋が燃やされたけれど、銅像の頭がちょうどよくそこに収まって、彼女は顔を踏みつけて渡る。この一連の流れも美しい。戦っているのはバーフバリの息子だけれど、このシーンの主役はデーヴァセーナだ。
そして、薪の上に兄を乗せる。バーフバリの息子は動けないように足を剣で固定するまでのお膳立てを整える。とどめはデーヴァセーナが火鉢を放ち、復讐が遂げられた。

観終わった人が口々に「バーフバリ!バーフバリ!」と王を称えるのがよくわかった。必ず称えたくなる。王が立つとかすかに風が吹いて髪がなびいているのも恰好良かった。そして、誰にも負けない。強いだけではなく、優しくてお人柄も尊敬できる。

『キングスマン』の大人数を相手にしたアクションも格闘というより振り付けという話だけれど、バーフバリも動きが流れるようで、どちらかというとダンスに近い。武器の使い方もおもしろかった。

アクションシーンがどれも新しいもので、目の前で繰り広げられていることにそんな馬鹿なと笑ってしまう部分もあるけれど、結局恰好良すぎて涙を流していた。なんの涙だと思っていたけれど、たぶん感動していたのだと思う。恰好良すぎて感動することもあるのだ。

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