『デトロイト』



1967年に起こったデトロイト暴動を描いた実話。この時代の黒人が受けていた差別的な抑圧などは映画の冒頭でざっと説明される。
監督はキャスリン・ビグロー。彼女の過去作『ハート・ロッカー』、『ゼロ・ダーク・サーティ』と同じくドキュメンタリー調というか、騒動の渦中に連れて行かれたような作りになっていた。

出演は、ジョン・ボイエガ、アンソニー・マッキー、ウィル・ポールター、ジャック・レイナーなど。

以下、ネタバレです。









暴動三日目にモーテルで起きた騒動を中心に描かれる。
モーテルからおもちゃの銃で外に向かって発砲したところ、本当の狙撃だと思ったデトロイト市警の白人警官が押し入ってくる。

白人警官の一人が『シング・ストリート』のお兄さん役だったジャック・レイナーだったんですが、本編中は気づかなかった。『フリー・ファイアー』でもまったく違う役を演じていて気づかなかった。カメレオン俳優なのかもしれない。

白人警官のリーダー格というか一番暴力的な警官にウィル・ポールター。暴力警官役だとは聞いていたので人を殴りまくるのかと思っていたがもっと姑息な奴だった。ただ、序盤から逃げる黒人を後ろから撃って上司に怒られ、まったく気にせず他の黒人も撃って側にナイフを置いて正当防衛を装うなど卑劣。

モーテルのまったく関係のない客たちに対しても銃を突きつけて脅したり、殴ったりと人を人とも思わない行動をとっていた。

ほぼリアルタイムで進んでいくので、最近増えてきた形式の三幕構成ではない作りなのかと思っていた。『MAD MAX 怒りのデス・ロード』『ダンケルク』『新感染』のような、全編ずっと緊張感が続くタイプです。

ただ、緊張感は続いても、本作では他の映画のように極限状態から逃げ出すことはできない。壁に向かって手を上にあげているだけだ。逃げるどころか、抵抗すらできない。そんな無抵抗な黒人たちを脅しながら尋問する。

脅すつもりだったところを本当に撃って殺してしまい、白人警官たちは焦って黒人たちを解放する。
地獄の終わり。ここで映画も終わるのかと思っていた。

この後、ジョン・ボイエガ演じる警備員に罪が着せられて逮捕されてしまう。警備員はモーテルの客ではなかったから現場で脅されてはいなかったけれど、銃は持っていたのだ。何を言っても黒人であるがゆえに聞いてもらえない。

こんな後日談はひどすぎると思っていたら、リーダー格以外の白人警官が上司に自供する。良かった、とほっとしたのもつかの間、裁判では三人は無罪になる。これも、裁判官などが白人だったせいもあるのではないかと勘ぐってしまう。

解放されてほっとしたものの、地獄は終わっていない。日常的に続いている。
緊迫したモーテルのシーンの後に裁判を入れるのは、最近の流行りの構成を考えるとわざわざという感じがしてしまった。でも、普通なら、わざわざ入れるならば、暴力白人警官たちが有罪になるとか、観客にカタルシスを与える要素がありそうなものである。
しかし、これは実話なのだ。後味は悪くとも、キャスリン・ビグローは怒りを持って描いている。

また、デビュー前のドラマティックスのボーカル、ラリーはモーテルでの一件で白人に怒りを覚え、しかもトラウマまで植えつけられていたようだった。白人のための音楽を作るのは嫌だ、店で歌うのは嫌だと言って、グループには戻らず、教会の聖歌隊に入っていた。序盤で、一番デビューを熱望していたのは彼だったことを考えると悲しい。解放されてめでたしめでたしではない。一人の人物を変えてしまった。

映画を観ていて白人警官に怒りしか感じないのだが、中でもウィル・ポールター演じるリーダー格の警官は本当にひどかった。自分のことを常に正当化し、悪気すら感じていない。
ただ、ウィル・ポールター自体が好きな俳優なので、憎たらしいとは思いつつも、演技うまさに惚れ惚れしてしまった。彼は『IT』のペニーワイズ役の候補でもあったらしいけれど、笑うときに両方の口角がきゅっと上がっていて、まさにあの微笑みになっていた。
最近だと『メイズ・ランナー』で悪役というか悪い役、ひどい役を演じていたけれど、久しぶりに『なんちゃって家族』みたいなコメディにも出て欲しい。
また、身長が高い印象のあるキャスリン・ビグローと並んでいても更に高くて、調べてみたところ188センチもあるらしい。あの童顔でむちっとした体型なのに188センチというのは意外だった。この先も注目していきたい。

0 comments:

Post a Comment