『アウトサイダーズ』



イギリスでは2016年に公開されたようなので、少し前の作品。
主演はマイケル・ファスベンター、父親役にブレンダン・グリーソン。バリー・コーガンも出ていて、アイルランド俳優が揃えられている。
監督はケミカル・ブラザーズのヴィジュアルクリエイター、アダム・スミス。『ドクター・フー』もシーズン5の第一話(マット・スミスのドクターの初回)など、いくつか監督している。
音楽もケミカル・ブラザーズのトム・ローランズなので、ほぼケミカル・ブラザーズという感じ。ただ、音楽は確かにエレクトロニックっぽいものがありましたが、映像はスタイリッシュだったり、PVっぽかったりはしなかった。

決まった家を持たずにトレイラーハウスで暮らし、犯罪で生計を立てている家族の話。

以下、ネタバレです。








広場のような場所にトレイラーが停めてあって、マイケル・ファスベンダー演じるチャドたちはそこで暮らしているようだった。
最初からあまり説明はなかったので、全員家族なのかと思っていたけれど、エンドロールを見る限り、カトラーというラストネームが付いていたのが、チャドとその父親のコルビー、チャドの妻と二人の子供だけだったので、他の若者たちはどこかから連れてこられたのか、コルビーのやり方に共感した悪ガキたちなのかもしれない。
コルビーは家族や仲間の絆を一番大切にする人物のようだったので、おそらく仲間になったならちゃんと世話を見るのだと思う。

ただ、コルビーの言うことは絶対に守らなければならないし、息子のチャドならなおさらである。
チャドは自分が学校にも行かせてもらえなかったから、自分の息子には教育を受けさせたいと思っているし、犯罪に手を染めてもらいたくないと思っていたようだった。
でも、コルビーは自分の道を信じているし、息子や孫にも自分のあとを継いでもらいたいと思っている。だから、学校に行かなくてもいいと言っていた。親子で意見が食い違っている。

コルビーはキリスト教徒のようだったが、なんだかあやふやというか、独自に作ったキリスト教のようだった。警察に捕まった時にキリスト教について話していたけれど、いまいち何を言っているかわからないし、警察も少し馬鹿にしているようだった。でも、頑固は頑固だし、自分や自分のやっていることは正しいと強く信じている。
だから、チャドやその子供まで支配したいし、ファミリーから抜けることなど許さないといった感じだった。

チャドもコルビーには逆らえないから犯罪を繰り返していたけれど、なんとか反抗をしようとは試みていた。チャドの妻もファミリーから抜けたいと言っていた。
結局、コルビーからの命令で重大な犯罪に手を染めてしまうけれど、コルビーはチャドが抜けたがっているのがわかって、わざと申しつけたように思う。
ただ、チャドの弟も捕まったという話が出ていたから、それを考えると、単にコルビーが有能ではないだけかもしれない。しかも、トレイラーハウスの場所、彼らのアジトは警察に把握されているようだった。

すべて、コルビーが悪いのだと思う。でも、コルビーもその親からそう育てられて、なんの疑問も持たなかったのだから、この連鎖がいけないのだ。
チャドの場合は妻がいて、妻がまともなせいもあってファミリーを抜けたがったのだと思う。外からの意見は大切である。コルビーの妻(チャドの母)はどうなったのだろう。映画には一切出てこなかった。話にも出てこない。出て行ったか亡くなったのだろうか。

息子の誕生日に犬を譲り受けようとしたけれど、血統書付きだからという理由で、住所や名前などを書かなくてはいけないようで、チャドは戸惑っていた。
犯罪者だから身分を明かせないのかと思ったが、その前に、教育を受けていないから文字を書けないのだ。
それで、結局金を投げつけて犬を奪うという…。ままならなさはわかるが、八つ当たりめいている。

息子にこんな思いはさせたくないから学校に行かせたいと思っていても、結局、学校も退学させられてしまった。それも学力低下のせいと言われていたけれど、教師も犯罪者の家族ということであまり関わりたくないと思ってしまったのではないかと思う。
別の学校を紹介すると言われていたけれど、それもまともな学校なのかどうかあやしい。

代々続く犯罪一家、その連鎖を断ち切るのは簡単なことではないとわかってしまい、もどかしかった。チャドは逮捕されてしまったし、子供達はおじいちゃん(コルビー)に懐いているようだったし、中指を立てていたからどうなってしまうかわからない。チャドの妻がちゃんとしていそうだったから守れるだろうか。

犯罪だけではなく、貧困も連鎖がなかなか断ち切れないという話もよく見る。これは日本でもある話だと思ったが、この映画もイングランドのグロスタシャー州に実在したファミリーの実話に基づいているとのことだったので驚いた。そういえば、コッツウォルズも少し出てきた。
また、アメリカの片田舎を舞台にした映画はよく観るけれど、イギリスの片田舎映画は久しぶりに観た気がする。

また、カーアクションはほぼスタントなしでマイケル・ファスベンダーが行っていたらしい。プライベートでもレースに出場したことがあるとのこと。これは映画前に知りたい情報だった。

バリー・コーガン目当てでもあったんですが、出てはいるけれど後ろに映っているだけだったり、セリフも少ししかなくて残念。でも、いたずらっ子というか、小鬼みたいで可愛かったです。『ダンケルク』では天使でしたが。それで、来月公開の『聖なる鹿殺し』はたぶん悪魔なんですよね…。

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