『パシフィック・リム:アップライジング』



2013年公開、『パシフィック・リム』の続編。
監督はスティーブン・S・デナイト。
前作から10年後の話。戦死したペントコストの息子、ジェイクが主人公。
ジェイクを演じるのがジョン・ボイエガ、他スコット・イーストウッド、前作から菊地凛子など。

以下、ネタバレです。







父の後は継がないと荒れた生活を送っているジェイクと、廃品の部品でイェーガーを自作する少女アマーラが出会う場面から始まり、雰囲気が良さにわくわくした。
アマーラが自作したスクラッパーというイェーガーは、小型だから1人でも操縦できると言っていたけれど、イェーガーって小型とか大型とかでドリフトする人数が変わるんだっけ?とルールがよくわからなくなってしまった。
スクラッパーに2人で乗って、でも未登録イェーガーなので逮捕される(そういう法のある世界になってるのがわかるのはおもしろかった)んですが、ここで、2人でドリフトさせてみたらよかったのに…と思ってしまった。

というのも、本作を観ていて一番不満だったのが、ドリフトという絆の強さを示す便利な機能があるのに、それが一切有効的に使われてなかったことです。
前作ではベケット兄弟、中国の三兄弟、ロシアの夫婦は家族だし、いきなりドリフトできていても納得がいった。マコとローリーも苦労をして絆を深めてからドリフトした。

本作ではジェイクは追放されて戻ってきたようで、過去にネイトといざこざがあったみたいだけれど、ちょっと話出てきたくらいでちゃんとは描かれない。だから、本当はもっといざこざしていて欲しかったし、あっさりドリフトできてしまってカタルシスも何もない。いざこざからの仲直りでやっとドリフトできた!というような展開がよかった。

予告を観たところ、若い搭乗員たちが活躍するようで、もしかしたら『パワーレンジャー』っぽいのかなとも思ったけれど、訓練生たちの描写はほとんどなかった。
アマーラは訓練生として迎え入れられるが、簡単に入ってきたことでヴィクに恨まれる。2人は喧嘩をするけれど、仲直りしたんだかどうだかわからないうちに同じイェーガーに乗っていた。どうせならここも、喧嘩から仲直りして絆を深めてから乗せてほしかった。それも、3人乗りの機体だったのも不満です。2人で乗って欲しかった。ちなみに、小説で明らかにされている設定として、ヴィクは前作でチェルノ・アルファに乗っていたロシア夫婦の娘らしい。けど、なら映画内で触れて欲しかった…。

他の訓練生たちも急に実戦配備されてたけど、適当にそれぞれのイェーガーに割り振られたわけじゃないんですよね? ちゃんと、友達とか相性の良い2人なんですよね? でないとドリフトできないはずでしょう?
ただ、10年間で技術が進歩して絆が深まっていなくても、誰とでもドリフトできるようになったという説もあるらしい…。でも、それは理屈としてはいいけれど、パシフィック・リムの良さが消えてませんか。
ドリフト機能を使えば人間関係を簡単に描けるのにもったいないと思ってしまった。
訓練生たちについてちゃんとした描写がないので、最終決戦(しかも初実戦配備…)で駆り出されても、キャラに愛着がわかないので応援をする気にもならない。

また、途中でネイトが怪我をしてジェイクとアマーラがドリフトするけれどこれも、一回失敗してるところしか見せていないし、ネイトが都合良く怪我しちゃったな…としか思えなかった。
ジェイクとアマーラについては絆が深まってほしいとは思っていたけれど、そんな描写もないのにいきなりドリフトできていても首をかしげる。

アマーラはヴィクと2人でのドリフトでもないし、ジェイクとのドリフトも効果的に使われないなら、スクラッパーに乗ってほしかった。
最後、スクラッパーに乗っているのが違う人物でそこもどうしてそうしたのかよくわからなかった。アマーラの愛機ですよね? 最後にアマーラが自作の愛機に搭乗して戦ったら良かったのに。

バーン・ゴーマンのゴッドリーブ博士は活躍するんですが、チャーリー・デイのニュートの扱いも不満だった。
「アリスにも会って」と言っていたから、あれ?結婚してたんだ?って思ったけど、アリスは一作目で出てきたものと同じかどうかはわからないけれど、KAIJUの脳だった。
脳を繋げてこっそりドリフトしたくなる気持ちはわかる。一作目でしてたし、ニュートは病的にKAIJUが好きだったし。アリスという女性的な名前から、本当に妻のような気持ちで接していたのだろうし、ドリフトもセックスみたいな感じだったんだろうなとは思う。キャラのぶれはないと思う。
でも、その結果、脳を乗っ取られるというのはどうなのだろう。別にみんなドリフトしていても、人格が入れ替わってりはしていないと思うけれど。百歩譲って乗っ取られることがあったとしても、普通に英語を喋っているのがなんとも。
そんなことなら、いっそ、KAIJUに肩入れして悪い奴になってしまったほうが良かった。二重人格みたいにして、いい奴部分は残ってるのにそれが閉じこめられていて…みたいなのは違う。KAIJUにそんな知性みたいなものはないと思う。もっと野生なのではないか。
それか、ゴッドリーブがニュートの家に行って、アリスを見て、君の気持ちはわかるけどと理解を示しながら正気に戻してあげるような展開にしてほしかった。ただ、ゴッドリーブも人格者ってわけではないから難しいか…。

人間キャラ以外だと、いろんなイェーガーが見られるし、イェーガー対イェーガーという対戦が見られるのは良かったと思う。けれど、観たかった続編とは違った。
最初はこれは続編というよりスピンオフではと思っていたけれど、まったくの別物です。情緒がない。建物もバンバン壊されるし、景気はいいと思うけど、パニック映画色が強い。

『パワーレンジャー』は少年少女たちが絆を深めたり心を通わせたり成長するのに時間がかかって、変身するのが後半になってしまい、特撮ファンやロボ好きから文句をつけられていたらしい。私は日常パートが好きだったので満足でした。
それを思うと、本作もドリフトまでの過程をいちいち描いていたら文句が出ていたかもしれないので、もう私の観たいものが違ったというだけの話だと思う。

ジェイク役のジョン・ボイエガは良かった。序盤の不良黒人っぽさも、最近素朴ないい人役が多かったから新鮮だったし、後半のかつての父のような演説も良かった。ただ、生かしきれてはいなかったのが残念。ジェイクは演説よりも前のシーンで訓練生たちをまとめる役割を担って欲しかった。そのようなシーンがあったら、演説もより感動しただろうなと思う。演技としては良かったけれど、シーンとシーンのブツ切れ感が否めない。





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