『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』



『アベンジャーズ』としては意外と少ない3作目。MCUとしては19作目。本家の名前を冠しているだけあって、登場人物勢ぞろいでキャストがめちゃくちゃ豪華です。
それに、MCU1作目の『アイアンマン』が公開されたのが2008年ということで、10周年記念の作品でもある。

しかし、監督も「『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』以上に傷つくかも」と言っていたように、大変つらい作品だった。
お祭り騒ぎとは程遠い。

以下、ネタバレです。










豪華だけど、登場人物がとにかく多いので、三幕構成なんてことはやってられる余裕はなく、ずっとバトルです。
MCUとしての前作は『ブラックパンサー』ですが、ストーリーは『マイティ・ソー バトルロイヤル』の直後から始まる。
『バトルロイヤル』はタイカ・ワイティティ監督の色が濃く出た、とにかく楽しい作品だった。
ラストはアスガルド市民たちが宇宙船で滅んだ星を離れていく。そこでレッド・ツェッペリンの『移民の歌』が流れるのがすごく盛り上がるし、これからの希望のようなものが見えた。
しかし、エンドロール後の映像でその宇宙船を狙う巨大な宇宙船が現れる。

なんとなく不穏な感じではあったが、本作はその続きからである。
その続きというか、すでに襲撃されていて、すでに市民は殺され、虫の息のソーとロキがサノスの一団と対峙している。『バトルロイヤル』にあった楽しかったり呑気な雰囲気が断ち切られる。

監督の言葉もあったし、日本のキャッチコピーが『アベンジャーズ、全滅』だったので、誰かは死ぬのだろうなとは思っていた。しかし、まずこの場面でブルース博士を地球に飛ばしたヘイムダルが刺されて殺される。こんな冒頭で…。
そして、ロキは「兄の命かストーンか、どちらを取る?」とサノスに問われ、ソーを救って石を差し出す。やっぱり『バトルロイヤル』で完全に和解したんだ…と感慨深い気持ちになった。
しかし、圧倒的な力を見せつけられたせいか、ロキは笑みを浮かべてサノス側につこうとする。あー、いつもの裏切りで、また後半で戻ってきてピンチを救うのかな…と思っていたら、サノス側につこうとしたのが騙しで、ナイフで刺そうとしていた。やはり、完全に和解はしたらしい。
でも、これがきっかけで、ロキも殺されてしまう。まだ、タイトルすら出ていない…。

ちょっとこの先、メンバーの入れ替わりと動きが激しいので、自分メモとしてまとめ。

地球に飛ばされたブルース博士はドクター・ストレンジとウォンの元に駆け込む。トニーと合流、そこにピーターも合流。
ストーンを持っているストレンジが宇宙船にさらわれ、そこにストレンジ、トニー、ピーターも乗り込む。ブルース博士はスティーヴに連絡をとる。ウォンはサンクタムへ(離脱)。
ここで初対面のストレンジとピーターのやりとり、ここが偽予告(予告編のシーンで本編にはないものがあるとのこと)だったのかな。予告の方がもっと和やかな印象だったけど…。

ガーディアンズ御一行はアスガルドの宇宙船からの救難信号を受けて駆けつける。が時すでに遅し。ソーだけ救出。ここから、武器を入手するためにドワーフの星へ行くソー+ロケット+グルートと、石を持つコレクターの元へ行くクイル+ガモーラ+ドラックス+マンティスの二手に分かれる。
ちなみにドワーフの星の生き残りドワーフがピーター・ディンクレイジで驚いたし嬉しかった。出てるの知らなかった。しかも、巨大なドワーフという…。小さくて大きいピーター・ディンクレイジ、最高です。

ワンダと石を持つヴィジョンの危機に、スティーヴ、ナターシャ、ファルコン、ブルースが現れる。彼らはウォーマシンと合流。ヴィジョンから石を外して破壊したらどうかということになり、どこならそれができる?と考えて、スティーヴがひらめいた時に、『ブラックパンサー』の音楽が流れたのが盛り上がった。音楽だけで、あ、ワカンダに行くんだ!というのがわかった。
これで、ワカンダにブラックパンサー+ウィンター・ソルジャー+キャプテン・アメリカ+ブラック・ウィドウ+ファルコン+ヴィジョン+スカーレット・ウィッチ+ハルクになれないブルースが集結。さらにドワーフの星からソー+ロケット+グルートも駆けつける。

コレクターの星ではサノスにガモーラがさらわれる。タイタン?でクイル+ガモーラ+ドラックス+マンティスとストレンジ+アイアンマン+スパイダーマンが合流。

最終的にこの二隊になるので結局、『シビル・ウォー』で仲違いしたスティーヴとトニーは会っていない(ブルースは両方に会っている)。
また、今回、最初はニューヨークが出てくるけれど、ほとんどが別の惑星で、地球であっても架空の国ワカンダだった。

今回初対面組がいくつかいたり、久々の再会も何組かいるんですが、そのシーンはあまり細かく描かれない。各々について描いていたら、時間も取れないし、流れがいちいち止まってしまう。今作はほとんどずっとバトルです。

でも短い時間でもトニーとブルースのハグや、ブルースとナターシャの気まずさ、スティーヴとバッキーの「元気そうだな」「世界の終わりにしては悪くない」って台詞にはグッときました。
また、バッキーがロケットを片手で持ってロケットが銃をぶっ放すのはかわいい×かわいいという感じでかわいさが何倍にもなっていた。武器の情報を交換し合うのも良かった。似た者同士なのかな。
グルートの何かを訴えているらしい「アイ・アム・グルート!」に対して、「僕はスティーブ・ロジャースだ!」って自己紹介するのはすごくキャップらしい真面目さで笑った。
スティーヴはソーに「髪を切ったね」と言い、ソーはスティーヴに「ヒゲ、真似したな?」と言っていて微笑ましかった。
ソーがガーディアンズの船に乗り込んだ時に、クイルがソーにライバル心メラメラだったのも面白かった。太ってると言われてたけど、実際に太ってた感じがした。声を低くして話すのもおもしろかった。

初対面関連で一番笑ったのは、今回終始ハルクになれなかったブルースが、ハルクバスターに乗って、「ハルクにならなくても戦える!」って大喜びではしゃいでガシガシ走ってたら転んじゃって、オコエにめちゃくちゃ冷たい視線を向けられるところです。思い出すだけでも笑っちゃう。彼女もハルクになったところを見たらびっくりするだろうな…。

ただ、このような同窓会的なわちゃわちゃしたものはMCUをずっと追っていないとおもしろくないし、本作は途中から始まって途中で終わるという感じなので、単体では何もおもしろくないと思う。登場人物の紹介もないし(これもいちいちやってられない)。
しかも、前作の『ブラックパンサー』などは今年公開されたばかりでDVDにもなっていないことを思うと、リアルタイムで映画館で観ていないと追えない。その前の『バトルロイヤル』が2017年11月だったことを思うと、作品が公開される間隔も狭まっているように思う。ただ、次は『アントマン&ワスプ』で早いところで2018年6月とのこと(日本は8月)。
でも、ずっと追ってきている身としては、ここまでのクロスオーバーというのは今までないので、全員集合(アントマンとホークアイはいませんが)している様子はしみじみと見入ってしまう。

また、それぞれの登場シーンが絶妙で、今回の監督はルッソ兄弟で単体映画はそれぞれ監督が違っていても、テイストを受け継いでいる。
特に、宇宙船で歌いながら登場するGotG御一行様は選曲についても、ジェームズ・ガン監督に相談があったらしい。そして、監督がZune(前作でヨンドゥが遺したプレーヤー)に入っている曲だと明言していました。
ピーターが学校の課外授業へ行くバスの中で宇宙船を見て、スパイダーマンになって行かなきゃと考えた時にネッドに「大きな声で騒いで!」とだけお願いするシーンも、それだけで何も聞かずにネッドは察していた。信頼関係ができている。
『スパイダーマン:ホームカミング』のラストで婚約会見を開いた(開かされた?)トニーとポッツも結婚式についての口喧嘩をしていて相変わらず。
『ブラックパンサー』の面々は、映画の最後で国を開く決断をしましたが、キャップたちを受け入れる時に、「こんなことのために国を開く決断をしたわけじゃないのに。もっと、スタバとかできるのかと思った」と文句を言っていておもしろかった。

登場シーンについても長くダラダラとやるわけではなくてさっと済まされるけれど、ちゃんとテイストがわかるようになっているのが素晴らしい。だけど、その辺もやはり、過去作を全部追ってきていないと駆け足すぎてわからないかもしれない。

インフィニティ・ストーンをすべて手にしたサノスは、指を鳴らして宇宙の人類を半分にしてしまう。ガモーラが序盤に「指を鳴らしただけで」と言っていたのは比喩かと思ったけれど、本当にそれで人口が半分になってしまう。
それはヒーローたちも例外ではなく、ワカンダ組ではヴィジョンは石のために殺され、ブラックパンサー+ウィンター・ソルジャー+ファルコン++スカーレット・ウィッチ+グルートが塵になるように消えてしまう。
キャプテン・アメリカ+ブラック・ウィドウ+ソー+ブルース+ロケットが残る。オコエも残っていた。
タイタン組ではアイアンマン以外のクイル+ドラックス+マンティス+ストレンジ+スパイダーマンが全員塵になってしまう。

バッキーも「スティーヴ!」と叫んでいたし、ピーターもトニーに抱きつきながら「トニーさん、死にたくない!」言っていた。消えるときに消えるのがわかるのはつらい。
また、地球ではニック・フューリーとマリア・ヒルも塵になってしまった。

はっきり言って映画次回作がすでに発表されている面々もいるし、ヘイムダルやロキのように刺されたり首を絞め殺されたりしたわけではないので、どうにかして大復活はできるんだろうなとは思うけれど、今まで単体映画などでも活躍して、強いヒーローとして応援してきた面々が簡単に塵になってしまうという映像自体がかなりショッキングである。

さすがに全滅ではなかったけれど、ほとんどが消えてしまい、これが映画のラストだから本当に次作に続くという感じである。
エンドロールも悲しい音楽で、黒地に白い文字でタイトルが出て、まるで葬式だ…と思っていたら、その文字も塵のように消えてしまってつらかった。
こんな状態で次作まで待つのか。

エンドロールによく出てくる『○○は帰ってくる(○○ will Return.)』の文字、単体の映画なら、○○にアイアンマンとかスパイダーマンとか入って、続編!って盛り上がるところですが、今回は『サノスは帰ってくる』となっていて、驚いてしまった。今回の主役ってもしかしてサノスだったのでは(と思っていたら、パンフレットにも書いてあった)。

サノスは全宇宙の人口を半分にするという野望のために、インフィニティ・ストーンを集める。今回のストーリーの主な部分は石集めである。また、野望についても凶悪なようでいて、その理由は枯渇する食料や資源のために半分にする、しかも貧富の差はなくランダムでという一見ちゃんとした理由があった。
しかし、皆殺しではなく半分は生き残るというのは合理的なようでいて、当たり前だけれど、半分は死ぬのだ。誰かの愛する誰かも無作為に選ばれてしまう。それは、映画のラスト付近の「スティーヴ!」という悲痛な叫びにも代表されている。別れが描かれている。

実は序盤のロキが兄を救うためにサノスに石を渡すという部分からそうなのですが、映画内では二者択一で片方が愛する人というシーンが繰り返し出てくる。
ネビュラを救うためにガモーラはサノスについていった。
ストレンジも序盤では「石を守る場面では君たちを見捨てる」と言っていたけれど、結局トニーたちを守るために石を渡した。

クイルはガモーラに「捕まったら私を殺して」と言われてガモーラを撃とうとした(直前にサノスによって弾がシャボン玉にかえられた)。
サノスは石を手に入れるために愛する人(ガモーラ)を崖から突き落とした。
ヴィジョンはどうしようもなくなったら額の石を破壊することをワンダに頼んだ。

最初は何回も同じような展開が出てくるのは人数が多いし仕方ないのかなと思ったけれど、たぶん、これが主題で狙い通りなのだと思う。

本作は、アクションとかバトルものの皮をかぶった紛れもない愛の話なのだ。愛の話というのは、ラブストーリーというわけではないです。
『エイジ・オブ・ウルトロン』のキャッチコピーが“愛を知る——全人類に捧ぐ。”でダサいと炎上していたけれど、これ、そのまま本作のキャッチコピーになりそう。

だから、サノスを拘束してガントレットを外そうとしている時に、ガモーラのことを知ってクイルが逆上したシーンはちょっとどうかと思ったけれど、彼の性格や映画のテーマを考えたら納得もする。

サノスが主人公なのだとすると、最後にとても野望を達成できたとは思えないほど虚しそうな表情で一人ぽつんと座る様子が気になる。あれは娘のことを思っているのではないか。愛するものを殺すことで手に入る石が手に入ったということは、サノスはガモーラを愛していたのだ。突き落とす前に涙を流していたのも気になる。マンティスもサノスの頭に手を当てた時につらそうだと言っていた。
この星で、サノスに説明をしていたのがレッドスカルだったのも気になった。

次作はどうしたらみんなを救えるのかと考えてみると、サノスがアベンジャーズ側に来ることはないとは思うけれど、愛する心みたいなものがキーになるのではないだろうか。改心してタイムストーンでどうにかするのかな。サノスを倒してそれで終了という話にはならないはず。または、ラスボスがレッドスカルになるのか…。

また、ガモーラが言っていた「私には体の秘密がある」というのも気になる。

あとは、本作では「NO!」と言い続けたハルク。なんで隠れたままだったのだろう。

ラストのラストで、ニック・フューリーが連絡を取ろうとしていたのが、キャプテン・マーベルなんですよね。一応希望を繋げるところで終わっている。
『キャプテン・マーベル』の単体映画が2019年3月、『アベンジャーズ4』が2019年5月なので、もしかしたら、『キャプテン・マーベル』が4の前に本作の直接の続きになったりするのかな。今夏の『アントマン&ワスプ』は本作にアントマンが出てきていないのでどうなるんだろう(追記:『アントマン&ワスプ』は時系列では本作より前になるらしい)。

『キャプテン・マーベル』を演じるのはブリー・ラーソン。ちなみにあの人(演じる俳優御本人がばらしていたのでネタバレでもないけれど一応伏せます)も出るらしくて、楽しみにしています。フューリーがあんな風になってしまったから出てくるのかなとも思うので、やはり本作の続きも少し描かれるのかも。

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