『ミスター・ガラス』



M.ナイト・シャマラン監督作。
『アンブレイカブル』、『スプリット』を観てからにしたほうがいい作品。『アンブレイカブル』の続編が『スプリット』ではありませんが、本作は『アンブレイカブル』の続編であり、『スプリット』の続編です。いわば、シャマラン版『アベンジャーズ』といった感じ。
以下、ネタバレです。『アンブレイカブル』、『スプリット』のネタバレも含みます。







『アンブレイカブル』鑑賞時に、「デヴィッドにはイライジャがいたけれど、イライジャが悪役側にまわることでサポート役がいなくなってしまった」と書いたが、今回サポート役としてなんとデヴィッドの息子が!しかも、同じ俳優さんで!『アンブレイカブル』が2000年公開なので、18年経っていて大人になってる。映画の中の時の流れとリアルな時の流れが同じで、実はこれも本作の重要なポイントになっていた。
私は『スプリット』公開時に『アンブレイカブル』を観たので、リアルタイムで観ていたらより感慨深かったろうなと思う。もう戻れないのでどうしようもないですが。

『アンブレイカブル』がヒーロー誕生の映画で、『スプリット』が悪役誕生の映画で、今回はその二つをぶつけるのかなと思っていた。
しかし、デヴィッドとビースト(ケヴィンの一人格)はかなり序盤で衝突する。クライマックスじゃないんだ?と思っていたら、二人は警察にマークされていて、精神病院に入れられてしまう。

『スプリット』では多重人格のうち、主に3つ4つくらいの人格しか出てこなかったかと思ったが、本作ではフルで出てくる。話し始めに名前を言ってくれるのでわかりやすいし、デニスやパトリシアなど主要人格はおぼえていた。特に9歳のおませな少年ヘドウィグは今回も可愛い。『スプリット』時にはカニエ・ウエストが好きだと言ってたけれど、今作ではドレイクに好みが移ってた。どちらにしてもヒップホップが好きなようです。
前作でも思ったけれど、演じ分けがものすごい。ジェームズ・マカヴォイの演技が堪能できる。エンドロールに名前がバーッと出て、すべてジェームズ・マカヴォイと書いてあるのは圧巻。

シャマランがカメオというよりは、『アンブレイカブル』でシャマランが演じた役で出ているのがおもしろかった。デヴィッドに向かって、「君、前はスタジアムで働いてなかった?」と聞いていた。監視カメラを買っていて、それを精神病院に取り付けていた。この監視カメラが後々…というのでそこそこ重要な役割なのも笑ってしまった。

二人が収容された精神病院にはイライジャもいた。何もわからなそうな顔をしながらも、部屋をするっと抜け出したりと不気味。

精神病院にいるカウンセラーか医者役にサラ・ポールソン。『オーシャンズ8』のタミー役であり、最近も『バード・ボックス』に主人公の妹役で出ていました。
このカウンセラーが現実主義者で、三人に対して、思い込みによってヒーローだったり悪役になろうとしているのではないか、アメコミは非現実という趣旨のことを話す。つまり、自警団をしていたデヴィッドも、ビーストになったケヴィンも、すべて妄想なのではないか、目を覚ませということで精神病院に入れたというのだ。
それは、『スプリット』を観たときにまさに私が思ったことだった。なんかビーストなんていうのが実在しちゃうなんて一気にファンタジーになっちゃって嫌だなあと思ったのだ。今なら言えるが、違う、実在するのだ。

少し『ブリグズビー・ベア』も思い出してしまった。大人は、いい年になったら妄想などやめて目を覚ませと言って、おもちゃを取り上げてしまう。違うのだ。夢は見続けられる。信じるものを信じていけというメッセージにも思えた。

ミスター・ガラス(イライジャ)はビーストを登場させて、病院からの脱出を謀る。もちろん、デヴィッドも解放する。彼はヴィランだけでなく、ヒーローの姿も見たいからだ。

対して、カウンセラー(医者)はただのカウンセラー(医者)ではなく、ヒーローもヴィランもいらない、平穏に暮らすためには両方滅ぼすという組織の人間だった。マーベルやDCに対する強烈なアンチテーゼだと思った。
結局三人とも倒れてしまうが、ミスター・ガラスは「これはオリジン(序章)だ」と言い残していた。もしかしたら、ケヴィンの理解者であるケイシー、デヴィッドの息子、イライジャの母がヒーロー業務を受け継いだりして…と思ったがそうではなかった。
監視カメラの映像がひっそりダウンロードされ、全世界に配信されたのだ。人々が善であれ悪であれ、スーパーパワーの存在を信じることになる。ここからすべてが誕生するのだ。

列車事故はイライジャの陰謀で、そこにデヴィッドが乗っていて、ケヴィンの父親も乗っていた。ビーストとデヴィッドの力を同時に誕生させ、20年間見守り、同じ病棟に介させたのもイライジャである。しかも、スクリーンのこちら側、リアルな時間と同じ流れ方をしている。シャマランは『アンブレイカブル』の時からここまで考えていたんだろうか。

飽和状態になっているヒーロー映画に対するまったく新しいアプローチだし、びしっと完結するのがいい。しかも、今後に対するわくわくと静かな興奮が残る。最高でした。おもしろかった! 


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