『ナチス第三の男』



2017年イギリス・フランス・ベルギー製作。監督は『フレンチ・コネクション』のセドリック・ヒメネス。
ラインハルト・ハイドリヒとその襲撃事件について描かれている。
『HHhH プラハ、1942年』を原作にしている。ただ、原作の『HHhH』には作者が、ドキュメンタリー小説を書くにあたっての苦労みたいなものが間に挟まれていて、それが面白かったが、本作は作者のパートは無し。あくまでも、書きあがった部分の映像化といった感じ。
そうすると、2016年公開(日本は2017年)の『ハイドリヒを撃て!』と何が違うのかとも思うんですが、『ハイドリヒ』が襲撃する側の話だけだったのに対して、本作は前半にハイドリヒ自身の話が描かれていた。後半が襲撃側の話なので、二本の映画を一辺に観たような印象。

以下、ネタバレです。









ハイドリヒを描く前半も子供時代からというわけではなく、ナチスに傾倒する要因となる妻リナ(映画ではそう描かれていたけれど本当なのかは不明)との出会いと、女性問題で海軍をクビになるあたりから。
リナ役にロザムンド・パイク。最初は白っぽい服で清楚なイメージだったけれど、段々と真っ赤な服を着だして感情の強さが表れているようだった。
わりと淡白にパッパッと進んでいくんですが、ハイドリヒのことを詳しく描いてしまうと彼を賞賛する内容になりそうだし、このテイストでいいのかもしれない。冷酷で非情に行動し、のし上がっていく。ヒトラーは後ろ姿しか出てこないけど、ヒムラーは出てくる。

ハイドリヒ役にジェイソン・クラーク。やっぱりドイツ人はハイドリヒ役はやりたくないのかな…とも思う。ジェイソン・クラークが案外ドイツ人っぽい顔なのに初めて気づいた。

後半はエンスラポイド作戦。『ハイドリヒを撃て!』もまだ記憶に新しいので大体の流れはわかった中で観た。ただ、パラシュート降下でチェコ領内に入るシーンなどは『ハイドリヒ』では描かれていない。
ただこちらも時間的には映画の半分の時間といったところなので、描かれ方がわりとあっさりしていた。『ハイドリヒ』だと準備の様子が入念に描かれているが、本作は作戦実行までが早い。
それでも、内容や流れを知っているのでこのくらいでも良かったと思う。

ヤンを演じたのがジャック・オコンネル、ヨゼフがジャック・レイナー。目立ってはいけないせいもあるが、二人とも似たような地味な服装と髪型のせいで、顔も似て見えて、区別がつかない部分があった。ただ、普通の若者たちが巨大な悪と対峙するという構図がより際立っていたかなとも思う。
名もなき若者たちが悪人の一人を倒したものの、立てこもった教会でナチスと銃撃戦になり、最後は水責めにされ、自ら死を選ぶ…というのは、やり切れなさも残るが、画としては美しい。これは『ハイドリヒ』でも本作でも同じです。『暁の七人』も観てみたい。

さらに本作は、ラストにヤンとヨゼフの出会いのシーンが流れる。ハイドリヒがのし上がる話より、もっとこの二人の話が観たかったと思ってしまった。

ヨゼフをかくまうモラヴェッツ家の息子、アタ役のノア・ジュプ目当てでもあった。そこまで出番は多くはないけれど、サイコロを転がして遊んだり、スープを飲んだり、泣き叫ぶ姿が見られた。
『ハイドリヒ』のアタは壮絶な拷問にかけられるんですが、本作のアタはだいぶ幼いので彼自身は拷問にはかけられません。これは安心した。でも、アタが教会にヤンとヨゼフたちがいることを吐いてしまうのは同じなんですね…。


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