『ナチス第三の男』
Posted by asuka at 1:08 PM
2017年イギリス・フランス・ベルギー製作。監督は『フレンチ・コネクション』のセドリック・ヒメネス。
ラインハルト・ハイドリヒとその襲撃事件について描かれている。
『HHhH プラハ、1942年』を原作にしている。ただ、原作の『HHhH』には作者が、ドキュメンタリー小説を書くにあたっての苦労みたいなものが間に挟まれていて、それが面白かったが、本作は作者のパートは無し。あくまでも、書きあがった部分の映像化といった感じ。
そうすると、2016年公開(日本は2017年)の『ハイドリヒを撃て!』と何が違うのかとも思うんですが、『ハイドリヒ』が襲撃する側の話だけだったのに対して、本作は前半にハイドリヒ自身の話が描かれていた。後半が襲撃側の話なので、二本の映画を一辺に観たような印象。
以下、ネタバレです。
ハイドリヒを描く前半も子供時代からというわけではなく、ナチスに傾倒する要因となる妻リナ(映画ではそう描かれていたけれど本当なのかは不明)との出会いと、女性問題で海軍をクビになるあたりから。
リナ役にロザムンド・パイク。最初は白っぽい服で清楚なイメージだったけれど、段々と真っ赤な服を着だして感情の強さが表れているようだった。
わりと淡白にパッパッと進んでいくんですが、ハイドリヒのことを詳しく描いてしまうと彼を賞賛する内容になりそうだし、このテイストでいいのかもしれない。冷酷で非情に行動し、のし上がっていく。ヒトラーは後ろ姿しか出てこないけど、ヒムラーは出てくる。
ハイドリヒ役にジェイソン・クラーク。やっぱりドイツ人はハイドリヒ役はやりたくないのかな…とも思う。ジェイソン・クラークが案外ドイツ人っぽい顔なのに初めて気づいた。
後半はエンスラポイド作戦。『ハイドリヒを撃て!』もまだ記憶に新しいので大体の流れはわかった中で観た。ただ、パラシュート降下でチェコ領内に入るシーンなどは『ハイドリヒ』では描かれていない。
ただこちらも時間的には映画の半分の時間といったところなので、描かれ方がわりとあっさりしていた。『ハイドリヒ』だと準備の様子が入念に描かれているが、本作は作戦実行までが早い。
それでも、内容や流れを知っているのでこのくらいでも良かったと思う。
ヤンを演じたのがジャック・オコンネル、ヨゼフがジャック・レイナー。目立ってはいけないせいもあるが、二人とも似たような地味な服装と髪型のせいで、顔も似て見えて、区別がつかない部分があった。ただ、普通の若者たちが巨大な悪と対峙するという構図がより際立っていたかなとも思う。
名もなき若者たちが悪人の一人を倒したものの、立てこもった教会でナチスと銃撃戦になり、最後は水責めにされ、自ら死を選ぶ…というのは、やり切れなさも残るが、画としては美しい。これは『ハイドリヒ』でも本作でも同じです。『暁の七人』も観てみたい。
さらに本作は、ラストにヤンとヨゼフの出会いのシーンが流れる。ハイドリヒがのし上がる話より、もっとこの二人の話が観たかったと思ってしまった。
ヨゼフをかくまうモラヴェッツ家の息子、アタ役のノア・ジュプ目当てでもあった。そこまで出番は多くはないけれど、サイコロを転がして遊んだり、スープを飲んだり、泣き叫ぶ姿が見られた。
『ハイドリヒ』のアタは壮絶な拷問にかけられるんですが、本作のアタはだいぶ幼いので彼自身は拷問にはかけられません。これは安心した。でも、アタが教会にヤンとヨゼフたちがいることを吐いてしまうのは同じなんですね…。
calendar
ver0.2 by バッド
about
- asuka
- 映画中心に感想。Twitterで書いたことのまとめです。 旧作についてはネタバレ考慮していませんのでお気をつけ下さい。
Popular posts
-
2013年公開。リュック・ベッソン監督作品。 アメリカ版だと『The Family』というタイトルらしい。フランス版は同じく『マラヴィータ』。イタリア語で“暗黒街での生涯”とかの意味らしいですが、主人公家族の飼っている犬の名前がマラヴィータなのでそれだと思う。別に犬は活躍しま...
-
アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、歌曲賞ノミネート、脚色賞受賞。その他の様々な賞にノミネートされていました。 以下、ネタバレです。 北イタリアの別荘に夏の間訪れている家族の元に、一人の青年が訪れる。家族の父親が教授で、その青年は教え子である。 まず舞台の北イタリアの夏の風景が素晴...
-
2007年公開。このところ、ダニー・ ボイル監督作品を連続で観てますが、 こんなSFを撮っているとは知らなかった。しかも、 主演がキリアン・マーフィー。でも、考えてみればキリアンは『 28日後…』でも主演だった。 映像面でのこだわりは相変わらず感じられました。 宇宙船のシールド...
-
原題は『The Young Pope』。ジュード・ロウがローマ教皇を演じたドラマの後半。(前半の感想は こちら ) 前半は教皇が最強でもう誰も逆らえないみたいになったところで終わった。 ジュード・ロウ自体が美しいし、そんな彼が人を従えている様子は、神というよりは悪魔のよ...
-
Netflixオリジナルドラマ。 童貞の息子とセックス・セラピストの母親の話と聞いた時にはエロメインのキワモノ枠かなとも思ったんですが、母子の関係がメインではなく、そちらを描きつつも、学校生活がメインになっていた。 ドラマ開始から学生同士のセックスシーンだし、どうだろう...
-
試写会にて。わかったことと、わからないこと。 以下、ネタバレです。 クーパーがどうやって助けられたのかがよくわからなかったんですが、あの時のアメリアの顔は幻じゃなかった。映画の序盤でワームホールを通る時に、アメリアが“彼ら”の姿を見てハンドシェイクをする。結局“彼...
-
ドルビーアトモスで観たんですが、席が前方だったせいもあるかもしれないけれど、あまり音の良さはよくわからなかった。前回がIMAXだったからかもしれない。 IMAXと同じく、最初のプロモーション映像みたいなのはすごかった。葉っぱが右から左へ。 以下、二回目で思ったことをちょこ...
-
ほぼ半月あけて後編が公開。(前編の感想は こちら ) 以下、ネタバレです。 流れ自体は前編と同じ。ジョーがこれまであったことを話し、それに対して、セリグマン(今回はちゃんと名前が出てきた。ステラン・スカルガルドが演じている男性)が素っ頓狂なあいづちをうつ、と...
-
ウェス・アンダーソン監督作品。前作の『ムーンライズ・キングダム』は、ブルース・ウィリスやティルダ・スウィントンは良かったし、家の中の撮り方も良かったけど、お洒落映画でしかないかなという感想だった。そのため、今回もかまえてしまっていたけれど、すごく面白かった。 やはり、撮り方な...
-
フランスCanal+、イギリスSkyの共同制作のドラマ。トンネルってタイトルはドーバー海峡のトンネルのことだった。もともとはデンマークとスウェーデンの共同制作で『The Bridge』というドラマだったらしい。 見たのは2013年のシリーズ1(全10話)。来年シーズン3が放映され...
Powered by Blogger.
Powered by WordPress
©
Holy cow! - Designed by Matt, Blogger templates by Blog and Web.
Powered by Blogger.
Powered by Blogger.
0 comments: