『ラストべガス』



2014年公開。アメリカでは2013年公開。
バチェラー・パーティーでラスベガスへ行くというと、どうしても『ハングオーバー!』シリーズを思い出す。けれど、この映画が『ハングオーバー!』と違うのは、バチェラー・パーティーをするのが中年を過ぎた、もうおじいさんともいえる年齢の人たちだ。
普通なら、おじいさんがバチェラー・パーティー?結婚するの?というところで引っかかってしまうと思うけれど、そこはハリウッド俳優なのでそれほど違和感はない。
パーティーをする幼馴染み四人を演じるのがマイケル・ダグラス(現在71歳)、ロバート・デ・ニーロ(72歳)、モーガン・フリーマン(78歳)、ケヴィン・クライン(68歳)と超豪華。結婚をするのはマイケル・ダグラス、初婚、相手は30代という、現実離れしているがなんとなく納得してしまう。

若者ではないから、バチェラー・パーティーとは言っても、お酒飲んでクスリやってドンチャン騒ぎ、翌朝、何もおぼえてない!みたいなハメを外しすぎることはない。お酒のたしなみ方も心得ている。悪酔いはしない。
逆に、モーガン・フリーマン演じるアーチーは、飲み過ぎると命に関わるという理由で息子(マイケル・イーリー。『オールモスト・ヒューマン』のドリアン役)から逆にお酒を禁じられていた。けれど、気にせずにバンバン飲んでいるため、もしかしたらパーティー中に発作が起こってしまうのではないかと少しひやひやした。
ケヴィン・クライン演じるサムにしても、奥さんからバイアグラとコンドームを渡されて、浮気を許されていたので、もしかしてクスリをあおった途端…みたいなことがあったら嫌だなと思った。
この年代の人たちが主人公では、この四人のうちの誰かが亡くなったりするのかもしれないとも思いながら観ていたけれど、それはなかったので良かった。サムなんかは、クスリに頼らずともばっちりな様子だったので、まだまだお元気。

そんな誰かを死なせることでよりも、人生の悲哀ともいうべきもので、彼らの年代らしさを出したのは素晴らしい。
途中まではコメディらしいコメディ。軽い気持ちで観られる。パディ(ロバート・デ・ニーロ)は自分の妻の葬式に来なかったビリー(マイケル・ダグラス)に腹を立てていたものの、長年のよしみなのか、次第に仲が修復されていく過程も良かった。

けれど、妻を失ったショックで恋のできなかったパディが久しぶりに好きになった歌姫はビリーといい仲になっていて、しかも、パディが愛していた妻も実はビリーのことが好きだったと知ってしまう。
ビリーはパディから何もかもを奪っていて、その事実を知った時のパディのショックを受けしょんぼりした様子はさすが名優ロバート・デ・ニーロといった風だった。
ビリーとパディの関係が危うくなる後半はシリアスで、ただのコメディでは終わらなかった。

ただ、これも主人公が若者ではないからこその展開ですが、パディとその妻の間には一緒に暮らした何十年という時間が流れているんですね。それを思って、パディはビリーを許す。もちろん、ビリーとパディの間にも60年という時間が流れている。もう今更、ちょっとやそっとのことでは崩壊しない絆ができている。60年来の友達関係がうらやましかった。私にもできるだろうか。

四人がマフィアのふりをして生意気な若造をコキ使うシーンがあるんですが、少し前までしょぼくれていたロバート・デ・ニーロがマフィアの演技をした途端に凄みが増すのはさすがだと思った。四人(マイケル・ダグラスは違うかな。三人かもしれない)の少しとぼけたおじいさん演技もくすっとさせられるけれど、それだけではない熟練演技も存分に堪能できる。

ちなみに、『ラストべガス』ってあんまりいい邦題じゃないな…と思ったら、原題のままでした。


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