『SPY/スパイ』



『ゴーストバスターズ』のリブート版や見た目がおしゃれなことでも話題になったポール・フェイグ監督作。
世界各地でスマッシュヒットを記録したにも関わらず、日本での公開はなく、DVDスルーになった。

主演がジュード・ロウとジェイソン・ステイサムなのにどうして!?と憤っていたのですが、観てみたら主演はメリッサ・マッカーシーだった…。メリッサ・マッカーシーは日本での知名度はいまいちだし、あのポスターだと二人、もしくは三人が主演だと勘違いしてしまう。
そして、『ゴーストバスターズ』もそうですが、のれない人は多分とことんのれないであろうコメディ映画です。日本では外国のコメディ映画の上映が減っているので、これは公開されなくて仕方がないのかもしれないと納得してしまった。下ネタ、グロネタも多いです。

以下、ネタバレです。










私はジュード・ロウ、ジェイソン・ステイサム、メリッサ・マッカーシーの三人が銃をかまえているポスターを見て、これは三人が主演なのだろうと思っていた。どちらかというと、ジュード・ロウ、ジェイソン・ステイサムの二人がネームバリュー的にも主演寄りなのだろうと推測していた。けれど、そのネームバリューも日本でのことで、アメリカではメリッサ・マッカーシーは超有名人らしい。なので、多分、そこからして私の印象が間違っていた。

そして、最初にキャストの名前が出るんですが、一番手がメリッサ・マッカーシーなので、あれ?と思った。ジュード・ロウは最後に“and Jude Law”と名前が出る。もしかしてカメオ扱いなのだろうか…。
最初、CIAの現場担当のブラッドリー・ファイン(ジュード・ロウ)が潜入捜査をし、それを事務方のスーザン・クーパー(メリッサ・マッカーシー)が音声でサポートをするというシーンがある。これが二人の日常のようだったので、本編でもこの図式のままいくのだろうと思った。ジェイソン・ステイサムはライバルで、二人のサポートを同時にやるのかもしれない。それか、もしかしたら敵なのかもしれない。
そんなことを考えながら観ていたら、ほぼ序盤といってもいいくらいの場所で、ブラッドリーが死んでしまう。なるほど、“and Jude Law”表記に偽りなしである。

けれど、ジェイソン・ステイサムもジェイソン・ステイサムで、こちらもand表記にしたほうがいいのではないかと思うくらい、ほとんど出番がなかった。出番がなかったし、活躍もしない。
ただ、それでもキャラクターとしてとても愛おしい。
平たく言ってしまえばバカである。CIAに所属しているのだし、おそらくやり手ではあるのだろう。けれど、本作ではバカゆえに活躍の機会を逃している。やり手なのかやり手でないのかわからない。けれど、本人は大真面目で一直線。いいキャラクターだし、これをジェイソン・ステイサムが演じているのがいい。

ジュード・ロウも出番こそ少ないものの、すごくかっこ良かった。最初のアクションに、後半のしれっとした感じがイカす。彼もおそらくやり手である。
それに立ち居振る舞いがいい。細身のスーツで背筋がピンと伸び、びしっとしている。
こんな色男を絵に描いたようなキャラクターだから、スーザンも彼のことが好きなんですね。でも、彼は彼女の気持ちにまったく気づいていない。親しくはしているけれど、女性としては見ていない。
でもそんな関係がいい。後半では直接ではないけれど気持ちを打ち明けざるをえない場面があり、その気持ちを知った上で、ファインはスーザンを食事に誘ったりして。でも、スーザンは、ナンシーとの女子会をとったりして。
王子様は振り向いてくれるんだけど、結局気の置けない仲間と過ごしちゃうっていう、胸キュンラブコメの典型みたいな感じですが、良かったです。
結局、酔った勢いでなぜかフォード(ジェイソン・ステイサム)と一晩を共にしてしまうというオチもついていた。フォードとスーザンのわーわーとケンカばっかりする関係も楽しかった。

最初はメリッサ・マッカーシーの体型的に事務方に徹するのだろうと思っていたが、現場に出ていく。とてもアクション向きの体型ではないけれど、走ったり、格闘をしたりと奮闘していた。
二人の男性は出てくるけれど、あくまでも脇役で、これはメリッサ・マッカーシー映画である。
次に活躍するのが同僚のナンシー(ミランダ・ハート)かな。DVDに収録されていたデリートシーンを見ると、パリで気に入ったジャケットがあって、それを着ると人生が変わる、だから絶対に欲しいみたいな一連の話がごっそり削られてた。スーザンとナンシーのだらだらしたおしゃべりもだいぶ削られているようで、本当はもっと出番が多かったっぽい。

そういえば、敵も女性が大ボスになっている。
男性は全部脇役と考えると、なるほど、男女逆転『ゴーストバスターズ』の監督さんだなという感じがする。

本作はタイトルは『SPY』だし、CIAが主役である。スパイガジェットもたくさん出てくる。けれど、ガジェットを実際に使ったりはしない。スパイというよりはアクション要素が強いと思う。
だいたい、主演のメリッサ・マッカーシーの外見が目立ちすぎる。かつらかぶって変装をして、名前を変えても、どうしたって目立ってしまう。まあ、本気で身を隠そうというよりは、監督がメリッサ・マッカーシー大好きで、彼女にいろんな格好させて遊ぼうという愛情たっぷりないたずらだと思うけれど。
序盤、ファインが活躍する場面はスパイ映画っぽかった。あと、オープニングは007シリーズのあからさまなパロディだった。

ただ、007はナイスバディな女性がくねくねと踊っているが本作は違う。もちろん、ボンドガールも出て来ない。
そう考えたけれど、ああ、もしかしてファインとフォードの二人は男性だけど、本作のボンドガールなのでは…。セクシーイケメンと憎めないバカという二つのタイプをご用意。
これは、ある意味男女逆転007なのかもしれない。

でも、ボンドガールは作品ごとに変わるけれど、この二人は変わらないでほしい。もし続編が作られるなら、全員同じキャラでお願いしたいです。監督もポール・フェイグじゃないと駄目だと思う。

ストーリーの根幹には関わらないようなちょっとしたギャグセリフのいくつかは、俳優さんたちのアドリブなのかなと思っていたら、監督のアドリブだった。撮影している途中で、「ここでこのセリフ言って」と割り込んでくる。そのどれもが下品なものだったりすっとんきょうなものだったりで、でも俳優さんたちは仕事だから律儀に言われた通りのセリフを言うんですが、言い終わってから笑っちゃったりしている。
撮影も、アクション!カット!といちいち止めずにカメラをまわしっぱなしでやってるみたいだった。
だからDVDには、メイキングやNG集など特典映像がたっぷり収録されていた。

監督はまるで出演者のようだった。ここまで寄り添うものなのだろうか。
スタントもやってたし、カメオ出演もしている。CIAの事務所に出現したコウモリを動かす役割も担っていた。
他のスタッフが「コウモリを動かす加減がわからないから監督がやってくれると助かる」と言っていた。

監督が一番偉いのではなく、スタッフや俳優の目線まで下りてきて、みんなで一丸となって作り上げていく感じ。その雰囲気の良さがやいい意味でのユルさが作品のカラーとしてもよく表れていると思った。

ストーリーのアイディアを俳優さんから募ったりもしたらしい。
ジュード・ロウは「寝返ったファインは、続編では敵になって出てくるとか」と言っていたけれど、却下されていた。私も却下です。
もし続編があるなら、今度こそ三人平等に活躍してほしいなあ…。

そういえば、エンドロールにヴィジュアル・エフェクト・プロデューサーとしてトム・フォードの名前があった。『ウォーム・ボディーズ』の時にはニコラス・ホルトだしな…と思ったけれど、別の映画でもちょくちょく名前を見かけるし、あのトム・フォードではないのではないか…と思って調べたら、違った。別人です。Thomas F.Ford IVという方らしい。『ウォーム・ボディーズ』もあのトム・フォードではなく同じ方。1996年から活躍しているベテラン。




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