『クライム・ヒート』



アメリカでは2014年公開。日本ではビデオスルー。
主演トム・ハーディなのにと思うけれど、今でこそ主演作がちゃんと劇場公開されるけれど、『ブロンソン』や『ウォーリアー』などの良作もこくかいされていない。

原作小説『The Drop』(原題もこれ)、デニス・ルヘインは『ミスティック・リバー』『ゴーン・ベイビー・ゴーン』『シャッター・アイランド』の作者。5月に公開予定のベン・アフレック主演『夜に生きる』もこの方です。

ブルックリンのバーが舞台になっている。バーはマフィアのマネーロンダリングに使われていた。
トム・ハーディ演じるボブはそこで働くバーテンダーである。

最初、ちょっと不器用だけど平凡な男の巻き込まれ系の話なのかと思った。
けれど、最初から「“ただの”バーテンダー」というような言い方も気になったし、序盤で警察にも平気で嘘をついていた。

バーの店主というか、マフィアに乗っ取られる前の店主も裏では悪い事をやっているようだったし、ボブは彼のいとこで小さい頃から知っていた…ということは、悪い事も容認してる、もしくは彼も悪い事をやっているのだろうと思った。

また、送りつけられた右手を慣れた手つきでラップに包む様子は、ちょっとこれは“ただの”バーテンダーではないと物語っていた。店主は悪い事といっても所詮チンピラ程度のことしかやってなかったけれど、このボブを見てひいていた。

全編通してあやしいっちゃあやしいし、まったく素の姿が出てこなかったので、一応どんでん返しというか、実はボブが殺しましたという事実が出てきてもそりゃそうだろうという感想しか抱けなかった。意外性はさほど感じられず。

おそらく、チンピラが俺が殺したと言ったときに心の中で笑っていたのだろうが、そんな部分も見えなかった。これはどんでん返しのためだとは思うけれど、真実が明らかになった後だったらそうゆう面が見えても良かったのにと思った。

このちょっとサイコなチンピラ役がマティアス・スーナールツ。『リリーのすべて』で少しプーチンに似てると言われて人気の出た俳優さん。『リリーのすべて』ではビシッとしていたけれど、『君と歩く世界』では今回の役に少し似ていたように思う。
本来、チンピラ役というか、育ちのあまり良くない男の役のほうが合っているのかも。

真実が明らかになった後で一変して欲しかったけれど、ボブというのが感情を殺した男だということだし、原作があるものだからそうゆうキャラで間違いないのだろう。
でも、できることならば感情を出した演技も見たかった。

ラストも含みをもたせたものになっていた。
ノオミ・ラパス演じるナディアはおそらくボブに裏切られたと思ったと思うので、銃でも持ち出すのではないか。
けれど、ボブとエリック(チンピラ)の違いは犬を可愛がるかそうでないかという部分である。犬を可愛がる=根はいい奴ということならば、犬をナディアに預けて自首ということか。

ナディアが家から出てくるところで終わりなので、ラストは自分で考えろということのようだけれど、彼女に向かってだけでも本心や感情をさらけ出すところが見たかった。おそらく切られたラストの先ではそのようなやりとりがあったはずなのだ。

唯一少し感情が見られるのが、子犬と接する場面である。
犬好きで知られるトム・ハーディが序盤で犬を拾う。子犬相手に少しだけ苦戦するけれど、結局、犬可愛いという感情が溢れているのがよくわかる。
一応、犬が捨てられてるのを見つけただけで、飼うなんてごめんだし、飼ったこともないという役だけれど、抱き上げ方も可愛がり方もめちゃくちゃ慣れていた。

これ、子犬によって人間らしい感情を取り戻し…という役でもないと思うのだけれど、どうなのだろう…。子犬がボブを変えるきっかけになっていたのだろうか。





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