『スノーデン』



オリバー・ストーン監督、ジョセフ・ゴードン=レヴィットがエドワード・スノーデンを演じる。
2004年から2013年までの実話をもとにした映画。

以下、ネタバレです。











ポスターなどのメインヴィジュアルだといつものジョセフ・ゴードン=レヴィットですが、映画内だとちゃんとスノーデンに見えるのがすごい。もそもそとした喋り方も似せているのだと思う。それだけでも彼の演技力の高さがうかがえた。

ただ、実話を“もとに”と言われると、スノーデンの一連のことを知らなかったので、一体どこまでが事実でどこまでが創作なのか、わからなくなってしまった。

Facebookを創設したマーク・ザッカーバーグを描いた『ソーシャル・ネットワーク』になんとなく似た印象を受けた。
コンピューターに強い若者が主人公だからかもしれない。まっすぐにこちらを見ている人の顔に文字を重ねたポスターのせいかも。
また、劇中で流されたデジタルっぽい曲調がトレント&アッティカスっぽかったからかもしれない(音楽は『ラブ・アクチュアリー』や『レイヤー・ケーキ』『華麗なるギャツビー』のクレイグ・アームストロング)。エンドロールでピーター・ガブリエルの名前が出てきたので何かと思ったら、エンディングテーマになっている『The Veil』を本作のために書き下ろしたらしい。



『ソーシャル・ネットワーク』と似た印象でも、あの映画のマーク・ザッカーバーグよりも人とコミュニケーションがちゃんととれている。
恋人がいて、一緒に住んでいた。「無視しないでよ」などと言われていたけれど、いわゆるコミュ障ではない。恋人から写真を撮られたり、一緒に登山をしたりというシーンは、主演がJGLだから余計にロマンティックになっている(した)のではないかと思ってしまった。
物語のスパイスとしてのラブ要素で、本当はこの女性すらいなかったのではないかと存在を疑ってしまったのだ。
けれど、最後に、彼女もモスクワに渡って暮しているというテロップが出て、実際にいる人なのを知る。

では、軍に入っていたのは事実だとして両足骨折で抜けることになったのはどうなのか、ルービックキューブの一連のエピソードとか、カメラを警戒して手話で別れを告げるのはどうなのだろうと考えてしまった。
ビデオ電話でコービンと話すとき、とても大きなスクリーンのような画面にコービンがアップになるのは、さすがに威圧感を出すための映画的な演出なのだと思う。
ただ、スノーデンの恋人の監視をしていることをさらっと言っていたのは事実かもしれない。監視がいいとか悪いとかではなく、日常になっている。

直接の話ではないけれど、『アイ・イン・ザ・スカイ』で、ドローン攻撃の際にあれだけ一つのボタンを押すのにためらっていたのに、本作ではぽんぽん押していた。おそらく、こっちが現実なのだろう。ハワイの基地は同じ場所だろうか。

2016年に公開された(アメリカでは2014年)スノーデンのドキュメンタリー『シチズンフォー スノーデンの暴露』も観たい…と思いながら観ていたら、ラストでまさかのご本人登場。

本物のスノーデンから語られる言葉の重さ、そして母国には戻れなくても幸せそうで後悔はないのだろうと思われる様子など、伝わってくるものが大きかった。
JGLの演技は申し分なかったのだが、これで、ここまでが所詮、再現VTRになってしまった。ご本人を登場させたのは、オリバー・ストーンパワーだろう。

映画を観終わってから調べてみたところ、内容はほとんど事実のようだった。
衝撃的な暴露にいたるまでの流れがよくわかったし、もしかしたらドキュメンタリーをいきなり観るよりも、噛み砕かれているであろうこちらを先に観ておいてよかったのかもしれない。

スノーデンが真実を話す場面から本作は始まる。香港のホテルの一室で、メリッサ・レオ演じるローラが撮影を始める。

まさに、ここでローラが撮影している映像の内容が『シチズンフォー』らしい。確かに、監督の名前がローラ・ポイトラスになっている。

アメリカの話でしょ…と思っていたけれど、日本も監視されていたし、完全にひとごとではない話だった。
また日本が同盟国ではなくなった場合に作動させるプログラムも仕込まれていたというのも知らなかった。
ぞっとしたし、もっとこの件を知りたいと思った。



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