『ラ・ラ・ランド』(二回目)
Posted by asuka at 9:33 PM
アカデミー賞作品賞ではアクシデントがあって残念でした…。『ムーンライト』も楽しみです。
以下、ネタバレです。
映画の結末を知った上で最初の『Another Day Of Sun』を聴くと、彼を田舎の町に置いて、女優になるために都会に出てきた女の子のことを描いた歌詞が暗示的なのがわかる。同時に、ミアは実家のある田舎町から、女優になるためにロサンゼルスへ出てきたわけですが、もしかしたらこの歌詞そのまんまに付き合ってた彼氏を置いてきているのかもしれないとも思った。映画では描かれない前日譚。
この映画はミアとセブの恋がかなうまでとそれ以降で前半、後半に分かれると思う。もちろん後半あってこそだとは思うけれど、前半のお互いが意識しあって、少しずつ惹かれ合っていく様子がたまらない。
前回観た時に、天文台のプラネタリウムのシーンで恋に落ちたのだなと思っていたけど違った。
たぶん、セブはパーティーバンドで演奏していて、ミアが『I RUN』をリクエストしてきてすごくキュートに踊ってたあたりだ。
ミアはもしかしたらセブがピアノを演奏してるのを見た時なのかもしれない。本当に嫌だったら、パーティーバンドで演奏しているのを見かけても声をかけなかっただろう。
もしかしたら、私はその次の『A Lovey Night』を踊るシーンが映画内で一番好きかもしれない。この背景になっている綺麗な色をした空はCGではなくて本当に夕暮れ時を狙って撮ったというからすごい。
ミアがおめかしのためのヒールの靴を普通の靴に履き替えるのも、あなたのためには別にめかしこまなくてもいいわよねと言っているようで、すでに親しさを感じているのがいい。
セブが好きな子にいじわるするみたいに、ミアの足に砂をかけちゃうのもかわいい。
『A Lovey Night』自体が、“別にあなたのこと全然好きじゃないし、ロマンティックな夜でもないし”という歌詞である。もちろんこれは本心ではない。そんなのは二人の様子を見ているだけでわかる。その様子がとてもいい。
その次のシーンでセブがミアを映画に誘うんですが、何回も『For research.』とわざわざ理由をつけるのがまたいい。ミアも『For research?』と聞き返していた。「(デートじゃないよ)映画の研究のためだよ」「そうね、研究のためなんだったら行ってもいいわ(デートだったら行かないけどね)」と、カッコ内の部分は声には出してないけれど、出すならそんな感じだろう。でも、デートという言葉は出してなくても、お互いにこれはデートだ!と思っていたはず。敢えて言わないところが本当に可愛い。
ミアは一人で車を運転している時に映画館の横を通りかかって嬉しそうに微笑んでいた。
プラネタリウムのシーンは一回目に観たときにはロマンティックなだけだったけれど、二回目の今回はこの先は現実に戻っていくんだよなと考えてしまい、さみしさも感じた。
パーティーバンドでセブが演奏しているシーンは彼の嫌々やっている感が見えて大好きなんですけど、特に『Take on Me』のコーラス部分をふられて、はいはいというように仏頂面で頷いて受け流すのが最高。知り合い(ミア)に見つかってバツが悪そうな顔をするのもいい。
ただ、こんなことすら嫌がっていたセブが、キースのバンドに加入してステージ上で変なキーボードを弾くまでになったのだ。ミアは責めたけど、彼がどれだけ妥協したか。
夢に向かってがむしゃらに突き進んでついに叶えたエマの物語として観られることが多いのかもしれないけれど、エマが母と電話をしているのを聞いて、彼女のことを思って、生計も立てなくてはいけないとキースのバンドに加入したセブの物語として見るとやりきれない気分になる。
後半では、二人で行った思い出の映画館も閉館してしまう。それだけで映画の衰退と二人の関係の悪さを示しているようで胸が締め付けられる。
実際にあった映画館らしい。パンフレットを観ると、ミアが後半で一人芝居をした劇場もここらしいけれど、ロケとして同じ劇場を使ったということなのか、劇中でも閉館した映画館が劇場になってそこをミアが借りたのかがわからない。
しかし、仮に思い出の映画館跡地の劇場をミアが一人芝居の舞台に選んだのなら、セブが観に来てくれなかったのは本当にショックだったろう。
セブに言われなかったら、自分で脚本を書き、自分で演じるということもしなかっただろう。きっかけを作ってくれたことに感謝もしていたと思う。なおさら、観て欲しかった。
セブはあの撮影にどうしても参加しなくてはならなかったのだろうか。翻訳の具合かもしれないけれど、断ることはできそうだった。でも契約してるし、あのカメラマンも芸術家肌の有名人っぽかったし一人だけ別の日ということはできないか。
でも、本当だったらなんとしてもかけつけなくてはいけない場面だったんですよね。行かなかった時点で二人の関係はもう終わりだと思う。
エンドロールの曲のところに『Japanese Fork Song』と書いてあって、なんのことかと思っていたけれど、『荒城の月』らしい。
『荒城の月』なんて流れたかなと思ったんですが、アメリカのジャズピアニスト、Thelonious Monkがアレンジしたものとのこと。
聴いてみたら確かに『荒城の月』である。セブが家でレコードをかけながらピアノを練習しているシーンの曲です。
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