『おとなのけんか』


ロマン・ポランスキー監督作品。マンションの一室でのワンシチュエーションコメディ。二組の夫婦による会話劇で、79分、場面転換がないままリアルタイムで進んでいく。芝居向けだと思ったけれど、もともとが戯曲らしい。その構成を映画でもそのまま残してるのだと思う。

出演は、ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリーと全員アカデミー賞ノミネートや受賞経験のある実力派。本編に出てくるのはこの四人のみ。シンプルな作りだからこそ、役者さんたちの演技が重要になってくると思うが、さすがに全員うまかった。特にクリストフ・ヴァルツが良かった。私はどうも、彼のことが好きなようです。

要は口喧嘩なんですが、状況がいっこうに良い方向へ進まない不毛な話し合いは、傍から見ていると奇妙でおかしい。またテンポのよい会話の掛け合いの中で、四人の力関係が微妙に変化していくのもおもしろい。

場所は部屋の中から移動しないけれど、カメラワークが凝っていた。大きい鏡を映して奥行きを持たせるとか、夫婦が向かい合って座るテーブルのお誕生日席側から撮ることで、観客も部屋の中に入ったような感覚を持たせるとか。

たぶん、気づかないような細かい部分にもこだわりがあって、どれも完璧だったのだろうと思う。エンドロールでの、まあそうだよねというオチのつけかたも良かった。観終わったときに、いい映画観たなあという印象が残った。

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