『孤島の王』


なんだかタイトルが全然おぼえられなくて、『孤高の王』だとか『孤島の鬼』だとか言ってたんですが、予告から気になっていた作品。ノルウェーのバストイ島に本当にあった少年矯正施設が舞台になっている。現在は、自然の中で暮らすことで人間性を高めて更正させるという手法をとった刑務所になっているらしい。自然の厳しさや雄大さを前にして、自分のちっぽけさを思い知れば犯罪など起こす気がなくなる…ということですかね?
しかし、映画の舞台になっている時代はそんなにのんびりしたものではなかったようです。厳しい規則、逆らったものには教官からの暴力、決して逃げることのできない閉ざされた孤島。映画では1915年に実際に少年たちによっておこされた暴動が描かれている。

教官や少年同士が殴ったり殴られたりする暴力シーンが多い。グロかったりこわかったりはしないけれど、心理的な衝撃が強くて、つらい気持ちになりながら、終始眉間に皺を寄せて観てました。エピソードの繋がり方がうまく、流れるように進んでいくけど、さらっと軽いわけではなく、高密度でまったく目が離せなかった。

島に雪が降り積もっている様子などの寒々しい景色から、キンと張り詰めた空気が伝わってくるような画づくりがされていた。ノルウェーっ子たちの色白な頬も真っ赤になっていた。閉鎖された空間の絶望感がうまく出てました。最近で言うと、北欧系では『ぼくのエリ』や『ドラゴンタトゥーの女』など、孤島系では『ゴーストライター』、寒々しさでは『フローズンリバー』あたりに共通する、閉塞的な雰囲気が今作にもあった。

そんな中での代表的な役割の少年の演技が素晴らしかった。目つきなどの表情が最初とはどんどん変わっていく。王につきしたがっていた“優等生”は最初は、一見穏やかそうだったが、空虚な目をしていた。それが、あとから入ってきた少年に感化されて、野生を取り戻すかのように、攻撃的な表情になる。目にも灯がともる。
ちなみに、エキストラの少年たちは役者さんではなく、実際に矯正施設で声をかけた子ららしい。この子たちもいい表情を十分見せている。

少しステラン・スカルスガルドの話。
この映画を用いたマナー予告がテアトル系列の映画館で流されてたんですが、その最後に、「覚えてね。北欧の名優ステラン・スカルスガルドです」という字幕が出ていた。それから繋がる<北欧の名優ステラン・スカルスガルド割引>というのも実施されていました。1:男女年齢問わず3名そろった状態で受付に行き、2:一人づつ「ステラン・スカルスガルド」とかまずに言う。3:制限時間は5秒!1回限り!4:成功したらなんとおひとり1000円で鑑賞できるという、3あたりが案外厳しめじゃないかと思われるもの。
加えて、HTC有楽町ではスカルピスなる飲料も売り出す始末(混ぜ物カルピスでした)。謎のステラン・スカルスガルド推しで名前、顔ともに覚えました。声も容姿も渋く恰好良かった。

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