『レンタネコ』


観る前に一番心配だったのは、雰囲気だけで中身のないおしゃれ映画だったら嫌だなということでした。でも、序盤に主人公のレンタネコ屋の女性が、奇怪なもののように見られていてほっとした。リアカーに猫を乗せて河川敷を歩きながら、「レンタ~ネコ、寂しい人に猫貸します」なんて拡声器で呼びかけてる女の人がほのぼのと迎えられる世界観だったら、それはもうファンタジーであり、話に説得力がなくなる。そこは、「ママー」「しーっ! 見ちゃだめ!」や男子中学生の「ネコババア!」というように正しい反応がとられていて良かった。

ただ、このようなゆったりした雰囲気の映画で、1時間50分は少し長く感じた。
以下、ネタバレです。







基本的に4つのエピソードからなるんですが、“呼び込み→猫を貸してください→自宅へお邪魔して審査→猫を貸す→数日後呼び出し→問題解決→仕事にまつわる自宅でのミニコント”という流れが1つ目と2つ目でまったく同じだった。このまま4つやるとしたら、観ていて飽きてしまうと思っていたら、3と4は違っていた。でも、“猫を貸す前に、貸すに値する人物/環境かを調査するために、自宅を訪問して審査する”というルールが途中でどっか行っちゃってたのはいいんだろうか。

それで、4つ目になって、明らかにカラーが変わる。私はここ中心で観たかったです。ただ、尺の関係もあるのか、いろいろと説明不足で疑問が残った。
ジャミコが保健室の常連だったのは、本当に勉強についていけなかっただけなの? ベッドを囲むカーテンに張ってあった“ジャミコ専用”っていう紙は誰が書いたの? いじめのようなことがあったわけではないの? 大体、ジャミラに似てるからジャミコっていうあだ名のつけ方は、それだけで軽いいじめじゃないの? そんな時におばあちゃんに助けてもらったんなら、主人公の独白じゃなくて、そのシーンをドラマで見せてくれてもいいんじゃないの? 出てきた男の子のこと、その頃も今も好きだったんじゃないの? 結婚したい結婚したいって言うなら、少しくらいは恋愛シーンを入れてあげても良かったんじゃないの? 初恋の人(私の想像)と再会したら、そこから何か始まるんじゃないの?

「猫カワイイ」「癒される」「私も猫借りたい」だけだったら、いまのままでもいいかもしれないけど、もう少し描きこみを細かくして欲しかった。スカスカです。ちゃんと描いたら、たぶん4つ目のエピソードは相当ヘヴィーなものになると思う。
もっとも、そんなものは観客のニーズには沿わないのかもしれない。荻上監督が撮る以上、カラーが違ってしまうから、このまま、多少におわせる程度で止めておくのが一番しっくりくるのかもしれない。重くて生々しい人間ドラマを荻上監督に求めるのが筋違いなんでしょう。だったら、違う監督作品を観ろということですよね。それもわかるんですが。

最初の3つのエピソードはプロローグ的な役割として、もっとさらっと描くだけでよかった。それで、4つ目に時間を割いてほしかった。でもそうすると、猫があんまり関係なくなりますけど。

今回、もたいまさこが出ていないんですが、同じような役割として小林克也がキャスティングされている。もたいまさこにしなかった理由はよくわからないけど、もたいまさこよりも憎たらしいし、口が悪くて辛辣です。市川実日子が「ババア」と言うシーンがあるけど、もたいまさこに向かって「ババア」とは言えないと思う。

あと、これも諸事情あるんでしょうが、内容が夏向けなので、公開時期がもう少し遅かったら良かったと思う。せめて、6月下旬くらいにしてほしかった。

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