『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』


マーベル・シネマティック・ユニバースの10作目ではあるけれど、この前公開された『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のように、直接アベンジャーズ等の続きではないです。原作ではこことここが繋がっていて…というのはもちろんあると思いますが、原作を知らないのでわかりません。
でも、『キャプテン・アメリカ』や『マイティ・ソー』が前作や前々作など数作をふまえないと話が少しわかりにくくなってきたのに対して、これは単体でも楽しめる。

以下、ネタバレです。







懐メロ満載だとは聞いていたんですが、まさか、10ccの『I'm Not In Love』から始まるとは思っていなかったので、開始直後に涙ぐんでしまった。しかも、このセンチメンタルな曲が母との別れのシーンでかかる。
かかるというか、映画内は確かに懐メロ満載なんですが、それはBGMというより、主人公のピーター・クイルがウォークマンで聞いているのだ。懐メロはすべて一本のカセットテープに集められている。お母さんの好きな曲が集められた“Awesome Mix(最強ミックス)”とカセットテープのラベルに手書きで書かれている。これが、お母さんの形見みたいになるので当然大事にしているし、ピーターがここぞというときには、音楽が寄り添っている。まるで母親が見守っているように。
主人公の見せ場のシーンで音楽が流れるから、結局は普通の映画で盛り上がるシーンで音楽が流れるのと同じなんですが、見せ方が工夫されていておもしろいし、いちいちピーターの母親に対する想いを感じて泣きそうになる。

序盤、子供ピーターが攫われたあと、場面が変わって、ゴキゲンナンバー『Come And Get Your Love』が流れていて、それをウォークマンで聴いている男が出て来る。それだけで、ピーターの成長した姿なんだろうなという想像はつく。そして、軽やかなステップで廃墟のような建物内に侵入。こんなシーンでは普通、神妙な音楽が流れるものだ。しかし、ピーターは踊りながら、足下の小さいエイリアンみたいなのを手でぎゅっと掴んで、マイク代わりにして歌っている。
もうこれだけで、どんな風に育ったかがわかってしまう。適当で調子の良い人物なんだろうなというのがわかるのだ。説明臭くないし、物語の導入部分として最高だと思う。
その次の、オーブを盗むシーンと追っ手をかわすシーンで、この人がどんな職業かもわかるし、話への引き込み方がうまい。

ストーリーとしては単純というか、王道というか、複雑なところはなくわかりやすい。星の名前が多少混乱するけれど、悪い奴を倒すというそれだけです。ただこの倒す側の人たちが王道のヒーローではないのが楽しい。最初はやる気もないし、てんでバラバラな人たちが、次第に友情を深め、結束し、しかも正義感を芽生えさせるのがぐっとくる。これは一作目ならではだと思う。

アライグマ型クリーチャーのロケットは親友である樹木型ヒューマノイドのグルートが間に入っていなければうまく馴染めなかっただろう。ロケットは全編通して乱暴者だけど、グルートには優しい。
ただ、馴染めてからはメンバー中、一番の常識人だし、しっかり者ゆえに、仕方なくお母さん的なポジションになってしまっている。こうゆうわちゃわちゃしたスチャラカ軍団の中で、なんとなくお母さんにならされてしまうキャラクターがとても好きです。
ちなみに、声を演じているのはブラッドリー・クーパー。ロケットのことがよくわかってなかったときには、アライグマから人間に戻ったりする展開がこの先あるのかなとも思ったが、そういう仕組みはないらしいので、イケメンの姿ではおそらく登場しないでしょう。残念。

この映画のCMではアライグマがフューチャーされていて、メインキャラのような推され方をしている。それとは少し違うけれど、表情や動きなど、充分に可愛かったです。アライグマの可愛さを期待して観に行ってもいいと思う。
特に、グルートがバラバラになってしまった際に、破片を抱きしめて落ち込んでいたところ、ドラックスに頭を撫でられて、しっぽが少し揺れてしまうあたりが良かった。

ドラックスは、なぜかCMなどでもまったく目に入っていなくて、仲間になるのも最後だし、この人はきっと、途中でみんなを庇って死ぬんだろうな…と思っていたら、主人公級の人物だった。ポスターなどにも載っていた。無骨だけれど、偽ることができないから、前述のロケットを撫でてあげるシーンも、ぎこちないながらも本心からの行動なのだと思うと泣ける。

アベンジャーズはハルク以外は地球人が衣装を着ているというか人間型だけれど(ハルクも変身前は人間型)、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々は外見からしてバラバラなのが面白い。人間っぽく見えるのはピーター・クイル=スター・ロードだけで、他は多種多様。
これは、他の登場人物にも言えることで、アベンジャーズは地球が舞台だから、モブも人間だけれど、この映画だと、宇宙の他の星が舞台なのでモブも多種多様なのだ。肌の色もピンクや青だったり、形からして人間型ではなかったり。特に、カジノみたいなシーンで、いろんな星人がガヤガヤやっているのは見ていて本当に楽しい。スター・ウォーズやDr.スランプ アラレちゃんを思い出す、古き良き懐かしい感じ。
星人もそうなんですが、乗り物なども色鮮やかで、それに合わせて懐メロが流れるものだから、全体的なトーンが統一されている。

キャプテン・アメリカのように品行方正ヒーロータイプも観ていておもしろい。今回はまったく品行方正ではない。いくら正義感が芽生えても、大人ピーターの登場シーンの通り、飄々としていて適当人間である、根本的なところは変わらない。最後の決着シーンでもそれが出て来るのがおもしろかった。
ロナンの前で、音楽に合わせて踊りだし、ダンスバトルなどと言って注意をそらすシーンは『LEGO(R)ムービー』を思い出した。緊迫しているシーンなのに、奇をてらうというか、一瞬ぽかんとしてしまう行動をとるのは、純粋なヒーローとは違う。でも、時にはその作戦が成功することもある。人間くさい小狡さすらある。ヒーローでなく、普通の人間でも、強敵を倒すことができるのだ。
より、私たちに近い主人公、これは『LEGO(R)ムービー』の主人公エメットとも共通していると思った。ちなみに、エメットの声を演じているのは、今回ピーター・クイル=スター・ロードを演じたクリス・プラットである。彼がこうゆう役が似合うのかもしれない。

まあ、敵を無事に倒すんですが、その敵も滅ぼす星に降り立ったときに、長々と口上を述べてるんですよね。そこまではどうなっちゃうの?と思いながらヒヤヒヤ観ていたけれど、ここでこの敵は倒されるためにここに来たなというのがわかる。でも、このどんでん返しなどない、安心感が心地よい。

ラストで“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーは戻って来る”という文字が出たので、続編があるみたい。キャラクターが全員いいし、この楽しい雰囲気は引き継がれると思う。一作目が結束して敵を倒すところまでなので、盛り上がったところで続けざまにもう続編が観たくなってしまう。また彼らに会えるのが楽しみ。

主要キャラ以外だとヨンドゥも粋だった。裏切ったピーターを執拗に追いかけて、命すら狙っていそうだったけれど、最後は騙されても笑って許す。それは親代わりとしてピーターと一緒にいたから、なんだかんだで情があるのだろう。もしかして、退却する時点で偽物だと気づいていたのかもしれない。
オーブの容器の中にピーターがそれなりに大事にしていたであろうトロール人形が入っていたのにも、何かしら想いを感じる。おそらく、地球にいたころからの持っていたものですよね? ヨンドゥは古い何の役にも立たなそうな人形というか置物みたいなのを集めるのが趣味だったようなので、その辺の配慮もあったりするのかも…というのは多分考え過ぎ。

今回も、マーベル映画恒例のエンドロールおまけ映像がある。
奥のほうでナイフの手入れをしているドラックスと、手前の鉢でJackson 5の『I Want You Back』に合わせてフラワーロックのようにゆらゆら踊るベイビーグルート。ドラックスがおや?とグルートのほうを向くと、ぴたりと動きを止める。すごく可愛い。また、グルートが本編最後の状態から確実に育っているのもわかって安心出来る。

そして、エンドロールが一通り流れたあとに、コレクター登場。コレクターが雰囲気たっぷりで出てきたのは、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のエンドロールの最後だったんですが、今作のヴィランなのかと思っていたら、オーブの力で吹っ飛ばされるかませ犬ポジションだった。ベニチオ・デル・トロのねちっこい喋り方が邪悪だったけれど、大した活躍もなかった。でも、最後で出て来るあたり、制作者たちにも愛されているのがわかるし、今後の作品ではヴィランらしい活躍をするのかもしれない。
ガラスが粉々になって、コレクションが外に逃げ出しているんですが、その中の一つにハワード・ザ・ダックが! どこまでも懐かしで攻めてくる映画である。そして、ハワード・ザ・ダックがマーベルなのを初めて知りました…。

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