『ジャージー・ボーイズ』


クリント・イーストウッド監督作品。トニー賞受賞のミュージカルの映画化作品。ザ・フォー・シーズンズの結成と栄光と衰退、メンバー間のいざこざなどが描かれている。
以下、ネタバレです。




ザ・フォー・シーズンズという四人組のデュオは名前を聞いたことがあるくらいだったんですが、どんなグループかはまったく知らなかった。ただ、曲は誰でも聴いたことがあるくらい有名なものだった。
ただ、頭のなかでそれぞれはバラバラになっていたんですが、それが映画を観ているうちに一つに繋がって行くのがおもしろかった。

まず、タモリ倶楽部のテーマソングとしても有名な『Short Shorts』を作った人がフォー・シーズンズのメンバーになるとは思わなかった。そして、『Shery』『Bye Bye Baby』などの有名な曲をこのボブ・ゴーディオという人物が一人で作っているとは思わなかった。

レコーディングスタジオで声をかけてくるお姉言葉の人物は音楽業界ならではのキャラなのかなと思っていたら、リベラーチェだったのも驚いた。リベラーチェと言えば、ド派手な衣装のピアニストでありエンターテイナーというイメージだったけれど、このようなプロデューサー業という裏方家業もやっていたとは。
そして、リベラーチェが彼らのレコード作りに深く関わっていたとは。
この映画というか元のミュージカル自体が、完全に実話というわけではなく、脚色ありらしいので本当のことなのかはわからないけれど。

結局、グループ特有の性格の不一致や金絡みのいざこざがあってバラバラになってしまうんですが、ソロで出した曲が『Can't take my eyes off you(君の瞳に恋してる)』だったのも驚いた。『Can't take my eyes off you』はイントロからして特徴的なので、始まった瞬間わかるんですけど、もしかしてと思ったら、“You're just too good to be true”とフランキー・ヴァリが歌い出されて泣いた。
フランキー・ヴァリという名前は映画の最初から出てきていたのに、ここまでどうして忘れていたかわからないんですが、フランキー・ヴァリの『Can't take my eyes off you』、持っていて、しかも何度も聴いていた。本当にここですべてが繋がったと同時に、私の映画になった感じがした。
しかも、この曲を作ったのも前述のボブ・ゴーディオ。
フランキーが、メンバーとも散り散りになり、落ち目ともいえるような存在になって、おまけに娘を失って、ラブソングなんて歌えるかと一度つっぱねたというエピソードもふまえると、余計に泣ける。この辺も脚色なのかもしれないけれど。

クリント・イーストウッドはもう84歳なんですが、もともと舞台版があるものというせいもあるかもしれないけれど、今作は作風が若々しいというか軽快だった。

ボブ・ゴーディオをメンバーに入れるか入れないかの話し合いのすったもんだや、ナンパをしたシーンの次に結婚式のシーンに移るなど、本当に軽やか。
また、レコーディングスタジオに行く時、ビルの外観が映っていて、カメラがそれぞれの部屋の様子を映しながら、上へと上がって行き、チンという音と共に、建物内部にカメラが移り、エレベーターが開いて、フランキーとボブが降りて来るというニクい演出もあり。
カメラワークだと、娘の葬式のあと、ベンチに座るフランキーの表情をとらえるようにまわりこんで下からのぞきこむようなショットも印象的だった。

これも、舞台版があるからかもしれないけれど、登場人物がカメラに向かって話しかけてきて自分のその時の心情やナレーションをするのもおもしろかった。
特に最後、ニックの「抜けた理由は明かしてないけど、存在感も理由の一つだよ。四人組の中でリンゴ・スターだったらどうする?」というのは、納得もしてしまうけれど、ブラックジョークでもあるし、苦笑した。

クリストファー・ウォーケンが地元のギャングの偉い人役で出演している。顔の怖さもあるけれど、威厳はありつつも、フランキーの歌を聴いて涙ぐむなど、可愛い面も多かった。
クリストファー・ウォーケン以外には知っている俳優はいなかったのですが、フランキー役のジョン・ロイド・ヤングとニック役のマイケル・ロメンダはブロードウェイの舞台版キャストらしい。
フランキーのファルセット、ニックの低音(『Shery』の“Why don't you come out”のコーラス部分などを歌っている)は、誰か他の人の録音なのかと思っていたけれど、実際に歌っていたらしい。他のメンバーも自分で歌っていたようだし、歌はスタジオで別録りしたわけではなく、カメラの前で歌ったらしい。最近だと『レ・ミゼラブル』と同じ方式ですね。

また、フランキー・ヴァリやボブ・ゴーディオご本人たちも映画の制作にかかわっているそう。

最初にカメラに向かって話しているトミーが主役なのかと思った。通りの名前にもなっていると自慢げに話していたし。けれど、作中では結局、地元の悪ガキから抜け出せていない。仕事なのにお金に無頓着で、結局それが原因で、メンバーが離れて行ってしまう。

ラストでもう老人の姿だったけれど、再会できて、また一緒に歌うことができて良かった。四人が若者の姿に戻って、街灯の下で歌っているシーンが泣けた。

その後、路上で全員で歌い踊るのもミュージカルで言えばカーテンコールのような演出で楽しかった。フランキーがお付き合いした女性二人と腕を組み、両手に花になっていた。劇中の揉め事を考えると、とても幸せな気持ちになる。
クリストファー・ウォーケンも歌って踊っていて可愛かった。

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