『アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜』


2014年公開。イギリスでは2013年公開。
『ラブ・アクチュアリー』、『パイレーツ・ロック』のリチャード・カーティス監督。

主人公がタイムトラベル能力を身につけるところまでは前情報を入れていたのですが、まさかそれが、父親からの告白で「うちの家系の男は代々…」みたいな話だとは思わなかった。
きっかけがやんわりしたものなら、タイムトラベルのルールもやんわりとしたもので、クローゼットやトイレなど暗闇に入って戻りたい場所を想像して握りこぶしを作るというもの。目を開けたらもう時代が変わってます。
過去にしか戻れないとのことだったけれど、自分が経験した過去だけなのかと思ったら、住所・時間などを聞いて戻ることもできるようだった。

もう一人の自分と会えるタイプなのか、それとも過去の自分は消えてしまうタイプなのだろうかと思ったら、現在の記憶を持ったまま過去の自分になれるという新しいタイプだった。
後半一箇所だけ、子供の姿になるシーンがあるけれど、あれは姿は子供で心は大人だったのだと思うと…。ぼんやりとした描かれ方をするので、心情などはわかりませんが。

父親は好きな本を何度も読むために時間をさかのぼったらしい。
主人公は、自分の恋愛のために能力を使う。
運命の出会いをしたあとで、別の用事のために彼女に出会う前に時間をさかのぼり、現在に戻ると彼女とは会っていないことになってしまっていた。
手に入れた情報を駆使して彼女に出会い、恋に落ちるまで何度も時間を遡ってやり直していた。何度もやり直す様子や、前回おぼえたことを使う様子はまるで『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のようで面白かった。

ただ、この映画では出会って恋に落ちるだけではなく、結婚、出産…とその先の普通の人生も描かれている。
個人的には、タイムトラベル能力を生かして、運命の彼女にもう一度出会うまでを濃く、しつこく描いて欲しかった。辻褄を合わせようとしておかしくなったり、邪魔が入るのをなんとか避けたりしつつ、最後にはジグソーパズルがぴたっと合うようにして、やっと出会ってハッピーエンドという感じで良かった。

私は恋に落ちるシーンが描かれている映画が好きですが、この映画の場合、最初の一回は偶然の出会いから恋に落ちるけれど、その次は演出された出会いと会話により、悪い言い方をしたら操るようにして手に入れた彼女なのである。
その先の生活は平穏そのものでしたが、元々の出会いなどについて、彼女が知ったらどう思うだろう。結局、タイムトラベルの能力については彼女には明かされないままだ。何年も一緒に生活している描写を観ていると、その秘密について一切明かさないのが不自然に思えた。バレることもなかったのだろうか。

もちろん、父親から話を聞いたときに内緒だと注意されていたけれど、自分の妹にはあっさり明かしていた。妹の窮地はタイムトラベルで救っても、自分の恋人(奥さん)の窮地はいままで無かったのだろうか。

どうしたって、秘密を共有しているほうが関係が濃く思える。だから、彼女との出会い以降もやるのであれば、結婚などという話より、元々の育ってきた家族側の話を優先してほしかった。

ただ、タイムトラベル能力のせいで、人の死すらも軽いものになってしまっている。父親の葬式をやっている最中に過去に戻って、過去の父に会ったりしていた。
三人目の子供が産まれたら、その前に死んだ父の生きている頃には戻れない(子供の遺伝子が変わってしまうから)と苦悩するシーンがあったけれど、死んだ人には二度と会えないのが普通である。
そして、子供が産まれる直前に最後の別れをしにいくが、その父と一緒に更に過去に飛ぶ。そんなことをしたら、一人目、二人目の子供が産まれる前だし、彼女とも出会う前に戻っちゃったけど、あれは別に未来は変わらなかったのかな。「未来を変えないように慎重に」ってセリフがあったけれど、そのセリフで全て説明したということなのでしょうか。

主人公は父親から、一日を二回経験すると、一回では気づかなかったことに気づくという教訓を授かる。二回目は失敗も回避出来るし、あまり良くない状況でも常に笑顔で接することができる。帰宅の電車の中で、隣りの人のイヤフォンの音漏れが気になったって、一緒に体を揺らしちゃう。このように余裕を持って暮らすことができる。
申し訳ないけれど、そりゃそうだろうよとしか思えなかった。
そんなことを言われても、普通の人には一日は一回である。一日の大切さを描きたいならば、主人公はなんらかの状況でタイムトラベル能力が使えなくなったほうが良かったと思う。そうでないと、感情移入出来ない。一日は繰り返せないから大切なのだ。

回数制限や年齢制限などもなく、無限に使えるパワーならば、話のバランスが崩れるし、ご都合主義としか思えない。

主人公ティムを演じているのがドーナル・グリーンソン。
『Frank-フランク-』でもそうでしたが、巻き込まれる系というか、積極性がいまいち足りない情けない男役が良く似合う。でも、誠実でいい人なイメージ。
彼も『スター・ウォーズ』の新作に出るんだと思ったけれど、こんな細腕・色白ではこの人も主役向けではない。
応援したくなる感じはあるので、主人公成長ものならば主役でもいいのかも。
オスカー・アイザックがハン・ソロの息子役という噂もあるようなので、もしかしたらルークの息子だったりして。

父親役のビル・ナイは卓球をしている姿が素敵でした。
妹のチャラい彼氏役にトム・ヒューズ。チャラいと言われていたけれど、別にそれほどチャラい様子は無かった。チャラいならチャラいシーンがもっとあれば良かった。
でも、『CEMETERY JUNCTION』の役の子が成長したらこの映画の子みたいくなるかもしれないなとは思った。暴力は振るわないです。そもそも、それほど出番が無い。
この二人の俳優が好きなこともあって、やっぱり家族側を中心とした話だったら良かったのにと思った。




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