『クリムゾン・ピーク』



ギレルモ・デル・トロ監督作品。ミア・ワシコウスカ、トム・ヒドルストンはゴテゴテしたゴシック衣装を着て華美な装飾をほどこしたおどろおどろしい屋敷にいるというだけで絵になる。この二人は『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』にも出ていた。あちらは現代的な服装でしたが、吸血鬼で、二人ともこのタイプの映画が似合うと思う。
更にジェシカ・チャステインというアクの強い女優さんも加わって、世界観や雰囲気は最高だった。けれど、もう少しストーリーはどうにかならなかったかな…と思ってしまった。
ドレスはどれも綺麗だし、映像や小道具なども凝っているので、写真集などで欲しい。また、裏話や細かい製作秘話などを知ったら、もっとおもしろく観られるかもしれない。
あと、ホラーというジャンルになっていますが、怖くはないです。ただ、残虐な殺され方をしたり、刃物が刺さったりというのはある。グロテスクさはない。

以下、ネタバレです。







ミア・ワシコウスカ演じるイーディスはゴーストが見えるのですが、もう根本的なところなのですが、その設定の必要性とか作品内でのゴーストのルールがよくわからなかった。
見た目は肉を剥がされたような、腐って半分骨が見えてしまっているような、ゾンビのようなものだった。母親の霊とは言っても、母親らしい優しさは感じられず、爪も伸びていておどろおどろしい。もちろん、イーディズも怯えるんですが、危害を加えることはしない。未来の警告までしてくれる。
なんで母親の霊は警告ができたのかもわからない。結核で死んだと言っていたから、別に屋敷の人々に何かされたわけでもなさそうだった。霊だから時間を超越できるのだろうか。それで、子供のことを思って、守ろうとしたのだろうか。

屋敷に行ってからも、過去に殺された女性たちの霊が出てきたけれど、イーディスは叫び声をあげて逃げていたが、ここでも危害は加えなかった。
むしろ、ここでも霊はイーディスを助けていた。兄妹がいる部屋を指差していたが、ただこれも、教えてもらうまでもなく、イーディスは夜中に屋敷内をうろうろしていたし、偶然遭遇するということにしても良かったと思う。
ここで勝手に夜中にうろうろするのを咎めないのもどうなのだろう。ルシールに怒られそうなものだけれど。毒を盛って徐々に殺そうとしていたし、どうせ死ぬだろうからいいと思っていたのだろうか。

脅かす者ではなく、警告する者としてのゴーストならば、父親はなぜ助けてくれなかったのだろう。ルシールに殺されたのだし、恨みもあるだろう。イーディスとルシールが対決するときに助けてくれても良さそうなものだし、そもそも、最初に結婚して屋敷に入るときには警告できなかったのだろうか。
あれだけ、ゴーストのことを言っていて、殺された父親だけ無視されるのがよくわからない。
女性の霊しか見えないのかもしれないとも思ったけれど、最後にトーマスの霊は見ていた。ここでトーマスの霊が他のゾンビタイプと違って白塗りなのもよくわからなかった。死んでから時間が経つと、霊も人間のように腐っていくということなのだろうか。
このように辻褄が合わないことが多く、疑問が残ってしまった。設定資料集や監督の話などを読んだら解決するのかもしれない。

後半、ルシールがふわっとしたドレスを着て包丁を持って追いかけてくるシーンがあり、これがまさにゴーストに見えた。
また、トーマスがいろんな女性と結婚している写真が出てきて、その写真がやけに古そうだったので、トーマスは何百年もこの姿のまま生きていた!みたいな衝撃の事実かと思ったけれど、外見が変わらないのはただ単に最近の話というだけのようだった。

最初に出てくる母親のゴーストがゾンビタイプではなく人間の姿をしていたら、この二人も実はゴーストなのでは…と思いながら観ていたかもしれない。序盤で父親や他の人も二人の姿を見ているので、見えているということはゴーストではないんですけれど、何か人外のものであってほしかった。『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』のせいなのかもしれないし、トム・ヒドルストンとジェシカ・チャステインが醸し出す雰囲気のせいかもしれない。ただの結婚詐欺師と殺人者だった。ゴーストよりも生きている人間のほうが怖いみたいな凡庸なことを今更描きたかったとも思えない。人外であってほしかったというのは単純に好みです。

トーマスがなぜイーディスのことを好きになったのかもよくわからなかった。単純に顔が好みだったのだろうか? それとも、彼女の書く小説がおもしろかった? 旅行中に何かがあったのだろうか。でも、旅行中も喪に服して手を出してこなかったようなことを言っていた。
トーマスが情熱を傾けていた採掘機械にイーディスが興味を持っていた風でもなかった。
なんだか、一緒にいてくれたからとか、自分のことを好きになってくれたからとか、ルシール以外なら誰でも良かったとか、簡単に好きになったように見えた。
彼は本来優しそうというか、すぐに情がわきそうなタイプに見えたので、前に結婚した女性や前の前に結婚した女性のことは好きにはならなかったのだろうか。イーディスのどこが特別だったのかがわからない。

しかし、それとは別にトム・ヒドルストンはすらっとして手足が長くて頭が小さいなどスタイルもいいし、身のこなしも上品で本当に素敵だった。序盤のロウソクを持ってワルツを踊るシーンでもうっとりしたし、お尻が少し出たときは腰が浮いたし、顔にナイフを刺されたときはよりによって顔に!と思ってショックだった。

今回、チャーリー・ハナムも出ているんですが、彼はトム・ヒドルストンとは対照的な体つきをしていた。ずんぐりしていて顔も大きくお尻が大きい。ゴシック衣装越しにも見て取れる。町の医者役なのですが、身のこなしなどからも田舎者っぽさが滲み出ていた。この人はこの人で好きです。

あと、バーン・ゴーマンが今回も出ています。イーディスの父親がトーマスたちを怪しんで、調査のために雇う探偵役という、彼にぴったりな役。彼のために作られたような役。影からすっと出てきて、敵なのか味方なのかわからないポジションのまま、すっと消えて行く。たまらない。

屋敷の雰囲気も良かった。古く修繕費が出せないため、一部天井の穴が塞げないのだが、そこから雪が入ってくる。ちらちらと家の中に舞ってくる様子が美しい。古いエレベーターもいい。
屋敷の外で採掘している粘土質の土が血色に似た赤なのも特徴的だった。屋敷の外に積もった雪が、まるで大量虐殺の後のように真っ赤になっていた。

映像や役者さんたちにはうっとりしたのだけれど、ストーリー面では首をひねる部分が多かったのが残念だった。もう少し、内容について調べてみます。

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