『白鯨との闘い』



ロン・ハワード監督作品。
『白鯨』の元になった実話があった、というフィクションなのかと思ったけれど、実際に全米図書賞を受賞した『復讐する海ー捕鯨船エセックス号の悲劇』(ナサニエル・フィルブリック著)というノンフィクションを原作にしているらしい。
しかし、“『白鯨』の元になったのはこの事件ではないのではないか”という意見もあるらしい。

以下、ネタバレです。






クリス・ヘムズワーズ主演、一緒に船に乗る仲間にキリアン・マーフィー、同じく船に乗る少年役にトム・ホランド、船長役にベンジャミン・ウォーカー、予告編を見た限りではどこに出てるのかわからなかったベン・ウィショーは『白鯨』の作者ハーマン・メルヴィル役、ハーマンが話を聞く船員の生き残り役のブレンダン・グリーソンはドーナル・グリーソンの父親。
個人的に好きな俳優が揃っていたので観ました。

19世紀初頭、まだ石油がなかった時代には、街灯に鯨油が使われていたとは知らなかった。燃料のために捕鯨に出かけ、2〜3年帰ってこないこともよくあったという。
また、船長は家柄の良い人間がなるものであり、鯨を仕留める技術を持った人間でも勝つことはできない、というのも事実だったようだ。家柄によって船長になった男と、船長になることを望みながら一等航海士にしかなれなかった男の対立は、物語のエッセンスとして加えられたものなのかと思った。

大きな船で出て行き、鯨を発見すると小舟を漕いで近づいていき、銛を刺して仕留める最初の捕鯨が迫力があった。捕まえた鯨に鮫が寄ってきちゃうのもリアリティがあった。脳の油も取るということで、噴気孔から体の小さい者が中に入っていくのも本当にあったことなのだろう。観ているだけで、臭いが漂ってきそうだった。

この鯨は16メートルほど、鯨側の主役ともいえる白鯨は30メートルとしてCGで作ったという。確かに大きかったし、尾びれだけでも人間と比べて脅威となるサイズだった。

ただ、これだけの大きさがあると、怖くはあってもリアリティはない。実在しないモンスターのように見えてしまう。また、海洋シーンが多いが、そこにいるのが知っている俳優さんたちなので、どうしたってドキュメンタリーには見えず、作り物感が際立ってしまう。

いっそのこと、モンスター映画やパニック映画っぽくしてほしいくらいだったけれど、実話なので、そこまでリアリティを無くすわけにもいかない。
船員は、大きな鯨の影に怯えながら、船で漂流し、次第にやつれていくばかりだった。
ちなみにこのやつれはCG効果もあるけれど、実際に集団ダイエットをしたらしい。なので、ほぼ時系列順の撮影になっているとか。

映像はド派手である。海から巨大な白鯨がざばんと体を見せたときには驚いた。しかし、船員たちはそれに対して何の手も打てない。そのために、なんとなく地味に見えてしまう。起こっていることは壮絶ではあるけれど、静かに壮絶というか、精神面で壮絶というか。
少しちぐはぐに見えてしまった。

いっそ、ド派手な映像方面だけに振り切るために、3Dや4DXなど、映像の迫力がより堪能できる方式で観賞したほうが良かったかもしれない。特に、4DXは船に乗ったらゆらゆら揺れるだろうし、尾を海に打ちつけたときには水しぶきがくるだろうし、嵐に巻き込まれた時はそのようになるだろうし、ちゃんと効果が想像できる。アトラクションのように楽しむのが良いのかもしれない。

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