『スーサイド・スクワッド』



どこかで悪役版アベンジャーズという書き方をされていて、DC勢マーベル勢双方を敵にまわしたなと思ったけれど、アメコミに詳しくない人にはわかりやすいとは思う。
監督は『エンド・オブ・ウォッチ』や『フューリー』のデヴィッド・エアー。

以下、ネタバレです。







原作を読んだことが無いし、マーベルだと、“ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ”や“アルティメット・スパイダーマン”でなんとなくキャラクターを知る機会はあるのだが、DCとなるとほとんどわからない。今回の登場人物もジョーカーしかわからなかった。
『バットマン』とか『スーパーマン』シリーズなどで、個々の悪役を出してからのほうが大集合感が出るのかなとは思ったけれど、最初にスカウトするときに個々の自己紹介を交えたようなプロモーションムービーが入るのでわかりやすくなっている。
これが宣伝や予告編の通り、ポップでテンポがよく楽しかった。選曲もかっこいい。

ストーリーなのですが、悪役たちが主人公とは言っても、全員、家族とか恋人とか、大事な人を持っているので、だいぶ人間味があった。メンバーを集めるときに、「メタヒューマンのヒューマン部分が邪魔になるから悪党に任せる」みたいなことを言っていたけれど、この人らも充分ヒューマン部分が邪魔になっていた。
キャプテン・ブーメランはぬいぐるみ愛好家でそれを人質(?)にとられる展開は無かったし、キラー・クロックについても特に大事な人は出てこなかったけれど、他のメンバーは大佐を含め、全員大事な人がいて、そのせいで事が悪化したり進まなかったりと弱点になっていた。

特に、デッド・ショットは娘を溺愛していたり、仲間を大切にしたりと、正義の味方にしか見えなかった。ウィル・スミスが演じていたせいもあるのかもしれない。顔を隠すマスクも短時間しか付けていなかったから見た目も正義の味方っぽい。

ただ、本当に非情な極悪人集団だとすると、メンバー間で一人残るまで殺し合いをすることになったり収拾がつかなくなりそうだし、それこそ退治する側のバットマンやスーパーマンなどを出さなきゃいけなくなって、本末転倒になりそう。たぶん、ガラスを割ってアクセサリーを盗むくらいがぎりぎりなんだと思う。

ここにジョーカーがいたら…とは思った。前宣伝では、さも、スーサイド・スクワッドのメンバーですというような扱われ方をしていた。予告編に出てきた“Really,Really Bad.”(「お仕置きの時間だ」という字幕が付いていたと思う)と言いながら狂気の笑みを浮かべているシーンも、ハーレイ・クインになる前の女性を洗脳というか改造する前のものだった。

それで、仲間にも加わらないジョーカーが一体何をしているのかというと、恋人であるハーレイ・クインが収容所の外に出たものだから、救いに行こうとするべく暗躍している。ジョーカーにも大事な人がいて、その人が行動原理になっていた。狂気の人なのかと思っていたので驚いた。

他の人に対しては非情な振る舞いをするけれど、仲間や家族や恋人は大切にする。そして、見た目が派手。ああ、これはヤンキー映画なのだなと思った。ちょっと思っていたものとは違ったけれど、つまらないというのとは違う。

キャラクターも良かった。特にやはりハーレイ・クインですよね。マーゴット・ロビーは今まで美人だけど派手な顔で特徴はないかなと思っていたけれど、今作は本当にはまってる。表情やちょっとした動きが全部可愛い。あまりサイコパスという感じはしなかった。とにかく可愛かったし、服、髪型、メイクなどキャラクターデザインが最高。コミックス版だとピエロっぽさが強くて、なるほどジョーカーの彼女なのだなというのが見た目でわかる。

メンバーはヤンキー集団っぽいんですが、このメンバーを集めたアマンダ・ウォーラーが結局一番極悪人に見えた。集め方がまず、彼らの娘や恋人を楯にしているあたり非道。魔女にいたっては心臓を人質にとって、何かあるとぐさぐさと心臓を刺していた。
収容所から出したメンバーたちが逃げ出したらいつでも爆破できるように、首に小型爆弾を仕込んで、そのスイッチは手中におさめている。
口封じのために、同僚もためらいなく撃つ。一人ではない。複数人だ。
笑うこともない、もちろん家族など大事な人も出てこない。

この人が本作の敵ではなく、マネージャー的な役割なのもおもしろい。この先、DCの映画に三作出演するらしいので楽しみ。

エンドロール後にはブルース・ウェインと二人で会合をしていて、この二人のほうがよっぽど悪に見えた。

無事に事が済んで、でも悪人なので釈放はされず、彼らは収容所へ戻される。
この時に、クイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』の最初の穏やかな曲調のあたりが流れる。『ボヘミアン・ラプソディ』が使われた本作の予告編がとても恰好良くて、でも予告編で使った曲を本編では使わないという傾向もあるし、使われないものだと思っていた。
仲間がばらばらになり、それぞれにまた日常が戻ってくる。けれど、ケーブルテレビとかエスプレッソマシンとか、前よりは少しだけ快適になる。この一人一人の描写と曲が合っていて、このまま終わるんだろうなと思っていたら曲が止まってしまう。

そして、銃をぶっぱなしながら乗り込んできたジョーカーがハーレイ・クインを救うという…。もう、悪役ではなく、囚われの姫を救いにくる王子様にしか見えなかった。ジョーカーなことを忘れました。



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