『トレジャー オトナタチの贈り物。』



カンヌ国際映画祭のある視点部門ある才能賞を受賞したルーマニアの映画。
おじさん三人が穴を掘る映画です。

以下、ネタバレです。







なんとなくタイトルや聞いていたあらすじから、わくわくする冒険活劇!みたいなものを想像していたけれど、わりとゆったりしていた。ヨーロッパの映画によくある間とテンポかもしれない。
借金がかさんで家を追い出されそうで…と深刻な様子だけれど、シリアスにならずにくすっとくる要素も入っていた。
そもそも、借金返済のために、家族が残したと思われるお宝を探すために穴を掘るという発想がシリアスにはなりえない状況だけれど。

映画の本編というか主要な部分が穴を掘っているシーンなのかと思っていたが、案外、掘りに行くまでが長かった。でも、会話が多く、コントのようなやりとりがおもしろかった。

800ユーロは貸せないけれど、上司に不倫を疑われながらも金属探知機の業者に赴き、400ユーロで仕事をしてくれる人をさがしてくる主人公。
金をとるとはいえ格安で、善意で週末に手伝ってくれた金属探知機の業者。

それなのに、掘っても何も見つからないからなのか、借金をしている当人は金属探知機の音がうるさくて頭が痛くなるとか、ぴりぴりしていて、おまけに金属探知機のおじさんを殴ろうとするなどひどかった。三人で仲良く穴を掘る話だと思っていたのに、ギスギスして、金属探知機のおじさんは途中で帰ってしまった。

掘っても何も見つかりませんでしたというパターンだと思っていた。掘っているのと違う、他の場所でも金属探知機は鳴りまくってたし、借金をしていた男はひどい態度をとっていたので、罰が下るのかと思ったのだ。

でも、金属の箱が発見される。中に入っているのが古い硬貨の場合、国の物になるため警察へ届けなければならないけれど、こっそり二人で山分けしようという魂胆だった。
けれど、箱を持ち帰る途中で警察に職務質問を受け、警察に連れて行かれる。

ここで、箱を開けてもらうために借金をしていた男は泥棒をしている友達を呼ぶんですが、その友達もよく警察に来たよなと思う。
別に悪さはしてないから逮捕はされないけれど…。周りの人に恵まれ過ぎている。

結局、中から出てきたのは古い株券で、警察に届け出なくても良いので、二人で山分けをしていた。

掘るのを手伝った主人公は、宝石ショップでこれとこれとこれと…あとこれ、それとこれと、大量に買い物をしていた。最初は奥さんにプレゼントかと思ったが、買いすぎである。
それより、こんなに買っちゃって大丈夫なのだろうかと思った。これで、実は株券が偽でした、無効です、どっひゃ〜みたいな展開があるのかと思った。
今度は主人公が借金をすることになり、借金の男が手伝ってどこかで穴を掘ってこれからもよろしくみたいな…。

けれど、特にそんな問題は起きなかった。株券の入っていた箱にアクセサリーを詰め、息子に「これが掘っていた宝物だよ」と見せていた。株券では子供には通じないから。

なるほど。主人公はきっと、息子のことを思いながら穴を掘る手伝いをしたのだろう。最初に『ロビン・フッド』を読んであげていたのもここに繋がるのかもしれない。

宝物を見て、他の子供も寄って来て、「触っていい?」などと言っていてひやひやしたのだが、「もらってもいい?」との質問に「いいよ」と答えていて、びっくりした。太っ腹すぎる。
でも、もともと宝くじが当たったみたいなものだしいいのか。これで、息子のいじめもなくなるかもしれない。義賊っぽくもある。

子供が遊具に高くのぼり、カメラがそれを追っていく。そして、カメラは空を映し、太陽を真ん中にとらえる。
映画内では音楽が流れていなかったけれど、ここでエンドロールとともに初めて曲が流れる。

野太い声からラムシュタインかと思っていたけれど、調べたところ、ライバッハの“LIFE IS LIFE”(87年)という曲だった。

宝石を配っちゃったことにびっくりして、エンドロールの音楽でも驚いた。更に、もう一つ驚いたのは、実話を基にしていたということだ。
借金の男の役の方の曾祖父や家族の実話らしい。彼が監督の友人で、監督が脚本も書きおろしたとか。
さらに、主人公の妻と息子も実際のご家族らしい。

作品のトーン自体はわりと淡々とした感じだったけれど、ラスト付近と映画を観終わった後に驚くことが連続して起きた。おもしろい映画体験でした。

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