『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』



2013年公開『グランド・イリュージョン』の続編。邦題に“2”が付いていないのは、シリーズ物だと敬遠されるからなのかもしれないけれど、本作は前作ありきのものだと思うので、気づかずに本作を観てしまう人が出てしまうともったいない。事情があるにせよ、“2”を付けてほしかった。
本作だけ観ても一応内容はわかるようにはなっている。けれど、本作を観た後に前作を観ても、おもしろくないと思う。

以下、前作のネタバレも含んだネタバレあり感想です。








前作を観たのが結構前なので見直しました。一番大きなネタバレはもう知っているので、途中のカーチェイスのシーンなどが、なんでこの人こんなことしてるんだろう?と少し茶番劇っぽく見えてしまった(本作を先に観ると、前作を観たときにこうなる可能性がある…)。
それでもマジックショーのシーンは、私もその会場にいるみたいにワクワクしたし、有り得ないマジックっぽくってもちゃんとタネを説明してくれるし、ド派手なわりに最後は切ないのが良かった。

ただ、大きなネタバレはもうバラされたし、結局すべては一つの復讐のために…という目的も完遂された。それで、続編で何をやろうというのか。

続編は30年前の、ディランの父親の金庫抜け失敗の事件の回想から始まる。前作に入れても良かったシーンではないかと思うくらい、前作の続きである。

結局、ディランから指令を受けてフォー・ホースメンが悪人を倒すためにマジックショーをしていたというのが前作のネタバレである。
本作も序盤で、ディランからの指令で、携帯電話会社の不正をあばくために、プレゼンテーション会場を乗っ取ってマジックショーに変える。
ホースメンが出てくるシーンは本当にワクワクしたのだが、ショーに入りきらないうちに、バレてしまい、あっという間に逃げることになる。

前作のマジックショーのシーンが好きだっただけに、すぐに終わってしまって残念だったのだけれど、逃げるために用意していたトンネルを抜けた先がマカオだった。ショーをしようとしていたのはニューヨークである。

驚いたし、映画のストーリーを効率的に進めるための、特に説明のされない瞬間移動なのかなと思った。でも、これのトリックもちゃんとタネが明かされる。結構すぐに明かされるので、結局あれはなんだったの?と、もやもやすることもなく観進められる。

ほとんど誘拐みたいな形で四人はマカオに連れてこられたんですが、そこで待っていたのがダニエル・ラドクリフ演じるウォルター。富豪であり、死んだことになっていて、彼に関する個人情報は存在しない中で隠れて悪事を働いている人物だ。悪人なのだろうけれど、愛嬌があるし、その時点では本当の悪人なのかわからなかった。
今回は彼の依頼でホースメンが動く。

彼の部下であり、わりとキーとなるキャラでメリットの双子の兄弟も出てくる。ウディ・ハレルソンの一人二役ですが、こちらには髪の毛があり、結構マシュー・マコノヒーに似ていた。『トゥルー・ディテクティブ』で共演していたし、私生活でも仲良しらしい。
少し色を黒くして、クセのある演技をしていたが、意識しているのかしていないのか。演技分けがおもしろい。

チップを盗み出すために会社に潜入するのだが、潜入自体には前作で便利すぎると思った催眠術を使うのでそれほど手間取らない。

問題は盗み出したあと、係員によって四人が身体検査をされるんですね。
チップはトランプのカードと重ねられていて、四人の間でトランプのカード(とチップ)が行き来する。
手の裏側にあったカードがぱっと表側に移動したり、髪の毛の裏に隠されたり、服の中を滑ったり。

トランプのカードが手の中で消えるというのは、多分マジックの基礎だと思うが、それが存分に楽しめた。
そんなうまく隠せるものなの?とも思うけれど、この前、大道芸人フィリップ・プティ(映画『ザ・ウォーク』の方)の番組を見ていたらタネあかしを交えながら本当にやっていたので、技術的には可能なのである。
このシーンのことかわからないが、この映画では、俳優さんたちが実際にマジックの訓練をしていて、過剰な編集は極力しないようにしているそうだ。
特に、ジャック役のデイヴ・フランコは部屋の反対側にカードを投げて物に当てることができるようになったというからすごい。
前作でも思ったけれど、マジックというのは実際に肉眼で見ないと、ほら、すごいでしょ?と見せられても疑ってしまう。映画はもちろん、テレビでも、映像でならどうにでもいじれてしまう。特に、昨今はCGの技術も進化している。
けれど、本作では、「なるべく実際のマジックを見せて、嘘がないことを見てほしかった。そのために猛特訓をした」と監督は語っていた。
マジック映画を作る上でそこを気にしてくれているのは信頼がおける。

依頼されているとはいえ、ホースメンがやっていることは犯罪だし、FBIも犯罪者集団として彼らを追いかけている。
クライム・ムービーとマジックが合わさっているのがこの映画をおもしろくしているし、オリジナリティがあるところだと思う。
だから、ショーでド派手に見せるのがこのシリーズの売りだと思っていたし、今回もショーのシーンがさぞ盛り上がるんだろうなと思っていた。けれど、派手さは無くても技術で見せるカードマジックのシーンもとてもおもしろかった。
クライム・ムービーならではの、バレるの?バレないの?のヒヤヒヤさもある。

後半ではちゃんとショーのシーンもあった。
その前哨戦のようにして、ロンドンの街角で、メリット以外の三人がそれぞれちがう場所でマジックを披露している。
ルーラに関してはちゃんとしたマジックを披露する前に退散することになるからあっさりしているけれど、アトラスとジャックに関してはここもちゃんとタネが明かされる。天気すらも操れるのだ。

そして、最後のマジックショー。騙される覚悟をしていた。それはこの映画を観るのに臨む姿勢でもある。今回も何かしらどんでん返しがあるのだろうと思っていた。
それでも、最後にぱっと目が覚めるような、世界が一気にひっくり返るような展開にはにやりとさせられるやら驚かされるやら。かなり大掛かりで、やはりド派手である。最後にあの前作と同じテーマ曲が流れると、拍手したくなってしまう。
けれど、四人(とディラン)は終われる身なので、事が済んだらさっと姿を消す。そこには爽快感が残るのだ。

ホースメンがマカオに誘拐された裏で、ディランとサディアスの因縁めいた関係が描かれる。このあたりは、一応最初のシーンでわかるかもしれないけれど、前作を観ていたほうがよくわかると思う。
実は前作で気になっていたところだったのだ。サディアスを収監することには成功したけれど、そんな復讐でディランが得たものはあるのか。そもそも、本当にサディアスが悪いのか。罪を着せて無理矢理逮捕させたようなものだし…ともやもやしていた。

今回、サディアスは敵なのか味方なのか、わからない感じでホースメン(アイ)、ウォルター一派、FBIの間を立ち回る。
そして、最後に明かされる真実…。
飛行機のマジックでスカッとした後で、やっぱりしんみりとしてしまう。でも、そのしんみりも前作とは違っている。前作で残ったもやっとした雲のようなものがすっかり拭われた。
悲しいけれど、良かったと思える。ちゃんとオトシマエがついた。
これはこの作品を観ただけでは味わえなかった感動だし、もちろん前作の最後でこのような想いは抱けなかった。
二作セットで楽しみたい。

けれど、このしっかりとしたオトシマエをつけて、作品をまとめあげたのが一作目とは違う監督というのに驚いた。本作の監督はジョン・M・チュウ。
すでに三作目の制作も決まっているとのことだけれど、どうなるのだろう。ここですっきり終わらせてもいい気もするけれど…。
ディランの父が何故金庫を開けられなかったのか。ディランは開けられたのに。みたいな部分だろうか。誰かの陰謀っぽい感じもする。
また、ホースメンの過去は今回もあまり描かれていないので、その辺だろうか。

でも、前作と今作とで、女性メンバーは変更になっているので過去編をやるのも難しいか。前作の紅一点アイラ・フィッシャーは妊娠したため、降板。
元彼女のヘンリーがいないため、アトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)の童貞色が強まっている。前作はちょっとイケメンっぽい感じだったけれど。

ウディ・ハレルソン演じるメリットは相変わらずヘラヘラ飄々としているが、兄弟の関係では悩んでいそうだった。あと、あの見た目でバイクに乗れないのも可愛い。

前作で死んだことになっているデイヴ・フランコ演じるジャックも若造感そのままで可愛かった。カードマジックが得意ということは手先が器用で、それを生かしてスリをしていたということなんだろうな。前作からの設定なので今更ですが。

新しい女性メンバーはリジー・キャプラン。
四人の中で一番男前。でも、かといってガサツというわけではなくキュート。決してお飾りではない。女らしいところがあるようでないようである。魅力的なキャラクターだった。

前作ではマーク・ラファロ演じるディランは熱血FBIから最後に裏の顔になるところがセクシーだったんですが、今回は最初っから裏の顔である。なので最初からセクシーなのと、途中でアクションありマジックありと、今回のほうが見せ場が多いしキャラとして好きです。火も吹く。

でも、セクシーではあっても、一癖も二癖もあるモーガン・フリーマン演じるサディアスの前では圧倒的に子供だった。前作の主役はホースメンの四人ではなくディランだったなと見終わってから思ったんですが、今作ではホースメンとディランではなくサディアスだと思う。

そして、モーガン・フリーマンとマイケル・ケインと並んでると、どうしても『ダークナイト』を思い出す。車内で悪巧みをしている。
マイケル・ケインの息子がダニエル・ラドクリフという役柄で、あー、なるほどイギリス…と思った。人を殺した直後に優雅にお紅茶を飲んでいて、イギリス人っぽさが増していた。
マイケル・ケインは前作よりも開き直ったような極悪人役だった。

マカオのマジック屋の親子も良かった。ただの愉快な親子かと思ったら、ちがったのもおもしろい。
何もわかってないようで、全部わかってるのは彼らでした。良いキャラクター。

この中の誰が続投することになるのかも気になる。ただ、それによってある程度ストーリーの予想もできてしまうので、知らないままでいたい。本作を見る前にもキャストの確認がネタバレに繋がりそうだったので、調べるのは控えていた。いつになるのかわからないけれど、次回作にも期待しています。

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