『エリジウム』


『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督作品。今回の主演はマット・デイモンですが、シャールト・コプリーも出てます。
『第9地区』に比べるとだいぶ重厚なSFで雰囲気は違うけれど、あとでよく考えると、やっぱり通じてくる部分も多くあった。
以下、ネタバレです。




かなりゴリゴリの本格的なSFだと思う。『第9地区』みたいに軽い感じで始まって、次第に大変なことに巻き込まれて…ではなく、わりと最初から重めで、ずっと緊張感が続く。主人公が序盤で余命5日の瀕死状態に。それをドーピングとマシーンの力で無理やり生かしながら戦っていく。

マット・デイモン演じる主人公のマックスが機械によって力を得て戦う様子は、『第9地区』でヴィカスが大型の機械に乗って戦う様を思い出した。
あと、なんといってもロマンチック。かなわぬ恋が『第9地区』にも『エリジウム』にもあって、SF特有のシャープでひんやりした背景とマシーンが満載でありつつも、人の心は失われておらず、その両者のバランスみたいなものの描き方がうまいと思った。ヴィカスは想い合っていながら、結局見せられない姿になってしまう。マックスも幼少期からの想いが通じたのに、結局世界と引き換えに自分の命を差し出すことになる。どうにもならない状態になってしまう切ない恋が両方の作品で描かれている。

ただ、『第9地区』のような奇妙や新鮮さは残念ながら感じられなかった。重厚に作り込んであるSFもこれはこれでおもしろいけれども、どこかで『第9地区』を思って観に行ってしまったので、少し印象が違ってしまった。

マックスにマシーンを取り付けるシーンなど、少し痛めというかグロテスクな描写も多々あって、このあたりも前作同様。ロボットが壊れて部品が飛び散るシーンは、未来的なグロテスク描写っぽくておもしろかった。

あと、序盤、やけに動くカメラでドキュメンタリーっぽく、貧困地域を生々しく描くのも前作同様かもしれない。



シャールト・コプリーが演じるクルーガーは、ヴィカスやマードックとは違うけれど、どこか頭のネジが吹っ飛んでいて、その点ではいままでと同じ。地上から宇宙に向かって大型の銃をぶっ放すシーンが恰好良かった。一応今回は悪役ではあるし、登場人物の紹介文では“冷酷”などという文字もおどっていたけれど、結局不憫な感じが可愛くなってしまうのは、シャールト・コプリーという役者の魅力なのかも。もちろん、マードックのような直接的な可愛さではないですが。キャラクターとしてはいままでと全く違うので、しっかり演じ分けはできる役者さんのようです。このぱっと見た感じは全然違うけれど、よく考えると根本は一緒というのが、それは『エリジウム』と『第9地区』の関係にも似ていておもしろい。

エリジウムの最深部でのマックスとクルーガーの対決シーン、梅のような花吹雪と日本刀のような細身の刀で、なぜか和風になっていたのが気になった。背景も真っ白で作り物めいていて、序盤の地上の風景とは同じ映画とは思えない。
その場所にクルーガーが遠くから現れるシーンは、胸のあたりの二つのライトが光って、意識しているのかどうかはわかりませんが目のようになっていた。人外のものが現れたような恐怖感をあおる撮り方がうまい。

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