『エリート養成機関 ナポラ』


2004年のドイツ映画。日本で劇場公開されたのかどうかは不明。ドイツのナチス党員を育成するための士官学校、ナポラが舞台になっている。
映画の最後に、少しテロップが出て知ったんですが、このナポラという施設は本当にあったものらしい。けれど、映画のストーリーは実話ではないと思う。

ナチス政権下のドイツが舞台になっているし、一応戦争ものだと思う。もちろんテーマとしてあるのは、少年たちを戦闘要員として教育していく施設などあってはならないというものだと思う。しかし、銃を撃ち合ったりする戦闘シーンのようなものはそれほどなく、どちらかというと青春ものとして描かれている。

主人公のフリードリヒは工場に勤めながらボクシングをしていて、その試合の結果により、ナポラにスカウトされる。このままでは未来がないけれど、ナポラに行けば…と夢を抱いて、親の反対を押し切り、ナポラに入るところから話が始まる。

ドイツの少年がたくさん出て来るのは『コッホ先生と僕らの革命』に似ている。『コッホ先生〜』が1874年、『〜ナポラ』が1942年なので、時代はこちらの方が少し後だけれど、工場の家の子が学校に入って、自分の力で未来を切り開こうとするのが同じなのと、父親が強くて、子供が逆らえないのも同じ。これはドイツ独特のものなのかな。

『コッホ先生〜』でも、いろいろなタイプの少年が出てきたのですが、この映画もその面でも楽しい。あの映画のドイツ少年たちも美しかったですが、この映画の場合は軍服を着ているので更に美しいです。

主人公のフリードリヒを演じているのはマックス・リーメルト。ボクシングでスカウトされているため、体は少し筋肉質で、ブロンド。

同室の室長みたいな子は、目が大きく、誰が見てもモテそうな風貌。Jonas Jägermeyrという役者さんが演じている。
あと、肉屋の息子役で出てきた子にすごく見覚えがあったんですが、この前観た『素粒子』でブルーノの若い頃の役を演じていた子だった。Thomas Drechsel。『素粒子』では演技がうまいと思ったけれど、今回は演技らしい演技はしていない。
『素粒子』で若い頃のミヒャエルを演じていたのがトム・シリングだったんですが、この映画ではガウライター(ナチス党地区指導者。知事と字幕ではなっていたけれど、誤訳らしい)の息子でコネでナポラに入ったアルブレヒト役。
アルブレヒトはフリードリヒと違って、別にナポラに憧れもなく、親に入れられたからしぶしぶいるという感じなんですね。そのせいか、他の子よりも体が小さく細い。とても軍隊に入れる雰囲気ではない。詩が好きで、感情豊かで繊細。無抵抗の兵士を撃った自分たちを“悪”と評し、それでも親の力か除名にはならないために、自ら命を絶つ。
一応、フリードリヒが主役だとは思うのですが、見せ場はアルブレヒトのほうが多かった。ナポラの中で一際異質で、目を引く行動をするのは彼だけだった。

フリードリヒは最初は能天気とも言える雰囲気で、ナポラに入った当初は軍服を着て、右手をびしっと挙げる挨拶のポーズを鏡の前でしてはしゃいでいた。そんな彼が、映画後半のアルブレヒトの死によって考え、ボクシングの試合を放棄し、ナポラを追放される。
観客にフリードリヒの目を通してナポラを見せ、アルブレヒトを見せているような作りだと思った。観客もフリードリヒと同じように気持ちが動く。ボクシングは強いけれど、変わったことはしない普通の人物なので感情移入しやすい。よくできた主人公だと思う。

今回もトム・シリング目当て。10年前のトム・シリングは体が小さいせいか、声変わりもまだしてないくらい少年のあどけなさがある。けれど、悩み、考える様もいいし、びしっとした軍服もよく似合う。今回はジェームズ・マカヴォイにはあまり似ていなかった。


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