『ウォー・ホース 〜戦火の馬〜』


去年ロンドンへ行った時に見損ねた舞台がありがたいことに来日公演をしてくれたので観てきました。

2011年公開の映画版は観賞済み。スピルバーグ監督も舞台版を観て映画化することに決めたらしい。もともとはイギリスの児童文学が原作。

映画を観ていたのでストーリーはわかっていたんですが、とにかくパペットの馬の動きが繊細で、本当に生きている馬がステージ上にいるかのようだった。

登場のオークションのシーンでは仔馬で小さい。それでも、耳が細かく動いていたり、人間に怯える様子もわかる。
そして、「ジョーイ」と名前を呼んだ時にわずかに反応する場面は、アルバートと初めて心が通ったのも見て取れる。

何年か経った後、ジョーイが初めて出てきたシーンも驚いた。かなり大きいし、仔馬のときと比べて、体の筋肉がはっきりとついている。そして、上にまたがれる。
仔馬も大人になった馬も頭や首や耳、前側、後ろ側と三人で動かしていた。
動いてないシーンというのがなかった。ちゃんと動物がステージ上にいるように常に呼吸をしているし、耳や頭も細かく動いているのがすごい。
重い農具を引かされるシーンも、本当に重そうに、でも一生懸命引いているのがよくわかる動きだった。

トップソーンという黒い馬と二頭がステージに並ぶ様子も圧巻。一頭でさえ目を奪われる馬パペットが、二頭いるとどちらを見たらいいかわからなくなるほどだった。
ジョーイより少し大きく、すらっとしている。ジョーイは少しもったりした体。戦場慣れしているトップソーンは慣れてないジョーイを最初は疎ましく思っていたけれど、次第に仲良くなっていく。
馬のことなのに、ましてやステージ上ではパペットなのに、感情がしっかり伝わって来た。

騎馬隊のシーンでは五頭くらいが並んでいて迫力があった。隊列を組むからジョーイとトップソーン二頭では足りないのだ。薄暗いシーンだったので、本物のように見えた。奥の方のパペットは前一人と後ろ一人の二人で動かしていたようだった。後ろの人は馬にまたがる人(人形)も動かしていた。

トップソーンが死んだあとシーンは、トップソーンのパペットが横たわってステージに置かれていて、本当に魂が抜けた…死んでしまった…と思った。そこにあるのはただのパペットだった。

ジョーイが有刺鉄線に絡まるシーンも迫力があった。それまでわりと大人しめな馬だったので、なんとかはずそうと暴れる様子は怖いくらいだった。

また、馬以外のパペットも少し出て来るのですが、それらの動きも本物のようだった。特に、コミカルな動きの多かったガチョウ。カーテンコールにも出てきていた。

結構場面が変わる話だし、先に映画を観ておいたほうが背景がわかりやすい。ああ、あのシーンだなというのが、頭の中で補完される。あと、第一次世界大戦の流れもわかっているとより理解しやすいかもしれない。

ジョーイが有刺鉄線に絡まったあとに、イギリス兵とドイツ兵が互いに話したりコイントスをするシーンが映画ではもっと長かった気がするんだけれど、舞台では短めだった。映画で好きなシーンだったので、もっと観たかった。映画を観直したくなった。

あと、ラスト、映画ではジョーイとアルバートの再会のあともすったもんだあって、確か父親と本格的に和解をしていた気がするんですが、舞台では再会後、ジョーイに乗ったアルバートが家に帰還して終わりだった。本当にそこで終わりなのかわからなくて、拍手をするのをためらってしまった。
あのシーンは原作にあるのかもしれないし、スピルバーグが足したのかもしれないけれど、はっきりと和解まで描くのは優しさのつけたしなのか。より映画っぽくしたのかもしれない。


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