『リメンバー・ミー』






アカデミー賞長編アニメーション部門と歌曲賞受賞。
監督は『トイ・ストーリー3』のリー・アンクリッチ。
同時上映は『アナと雪の女王/家族の思い出』。

以下、ネタバレです。











まず『アナと雪の女王/家族の思い出』についてですが、クリスマスの話だったので、ちょっと季節外れでした。本国公開は11/22だったのでちょうど良かったのだろうなと思う。日本での公開も当初は12/23だったらしいので、その時に観たかった。
アナとエルサが、お城でのクリスマスのお祝いのサプライズを用意しても、村の住民たちはそれぞれ家族で過ごすために帰ってしまう。アナとエルサにはそのようなものがない。そこでオラフが各家庭をまわって、伝統の品をお裾分けしてもらう。トナカイのスヴェンのひくソリに乗っているのでまるでサンタのようだった。

これはひねくれた意見なんですが、一家庭くらい、うちには家族の伝統はないよとか、一人暮らしの人とかが出てこないのかなと思ってしまった。家族の伝統がないのがアナとエルサだから、一般家庭の人々にはそれは重ねないか…とも思うけれど。
オラフが少し失敗してしまいプレゼントは台無しになってしまうけれど、アナとエルサは二人を繋ぐものはオラフだったと気づく。
『アナ雪』本編とまったく関係のない、キャラが同じだけの短編かと思ったら、ちゃんと本編の話も出てきたのが良かった。
クリストフが完全にギャグ要員になってたのはなるほどと思った。アナとエルサ、どちらの王子様でもないことが明確に示されていた。

『リメンバー・ミー』も、家族の伝統という点で共通するのかもしれない。
舞台がどことは明確には示されないけれど、死者の日の風習とミゲル、デラクルスなどの名前から、ラテンアメリカ、おそらくメキシコだろうと思われます。
母、祖母、曽祖母…と代々続くご先祖様の写真が飾られた祭壇があるが、家族を顧みずにミュージシャンになる夢を追い求めた男だけ、顔の部分の写真が千切られている。男に心底腹を立てたご先祖は、子供やそのまた子供に音楽を禁止させる。しかし、主人公、12歳のミゲルは音楽が好きで…という序盤。

予告でも出ていたけれど、ミゲルは、憧れの町出身のスター、デラクルスが写真の顔の部分が千切られたご先祖なのではないかと思う。
デラクルスの“チャンスを逃すな”という言葉を信じて、自分も音楽をやるために墓にあるギターを盗み出す。そのギターをじゃーん!と弾くシーンで『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を思い出した。
亡くなった人について、語り継いでいく限り、思い出の中で彼らは生き続ける…というのは普遍的なテーマだから被りとかではないんですが、所々でどうしても『KUBO』を思い出して、最近観たなと思ってしまった。

映画を観る中でもう一つ雑音になってしまったのは、ヘクターが出てきた時点で、ミゲルはデラクルスがご先祖だと思ってるけど、本当はヘクターなんだろうなと予想がついてしまった。たぶん、デラクルスは本当は音楽の才能がなかったり、悪い奴なんだろうなというのもなんとなくわかった上での鑑賞になってしまったのが残念。
ヘクターを演じたのがガエル・ガルシア・ベルナルだったので、その声優バレという面もあります。
アカデミー賞の時にガエルが『リメンバー・ミー』を歌っていたけれど、あまり歌が上手とは言えなかったので、劇中では歌のシーンがないのに無理やりひっぱり出されたのかと思った。実際には、たくさん歌うシーンはあったし、ちゃんとしていました。アカデミー賞は緊張していたのだろうか。

ミゲルが死者の国に行き、死者と交流して成長して戻って来るというのは、典型的な行きて帰りし物語のパターンだとは思うけど、舞台をラテンアメリカにしたのがユニーク。
ラテンアメリカ、特にメキシコで大々的に行われている祭り、死者の日。死者が戻って来るということでお盆みたいなものだと思うけれど、もっと陽気な祭りのようで、ガイコツがカラフルに飾られていたり、花もたくさん飾られている。
映画に出てくる死者の国も、おどろおどろしさは微塵もない。ミゲル以外はガイコツなので、ミゲルもガイコツメイクをされていて、それはまさに死者の日に行われていることである。
また、ガイコツたちも顔にペイントされていて、これも死者の日に飾られるガイコツと同じだ。
世界観も原色で、導く動物たちはほとんど蛍光色だった。観ているだけで楽しい。
また、音楽もラテン系の曲が多く使われていた。
ここまでラテンアメリカで世界観が統一されていたアニメーション作品がメジャーな場で賞を取れるというのはやはり時代の流れもあると思う。それに、このタイミングでこのような作品を作るピクサーもなかなかすごい。

アカデミー賞ではオスカー・アイザックがプレゼンターで、受賞を読み上げた。そして、ガエルとハグをし、「ラテンアメリカ万歳!」というコメントを叫ぶ場面があって、映画を観てから見たらさらに感動しただろうなと思う。

原題は『Coco』。主人公の名前はミゲルだし、何を示しているのかわからなかったが、音楽のために家を出て行ったご先祖の娘の名前だと途中でわかる。ミゲルの曽祖母であり、まだ生きている。
車椅子で頭もぼんやりさせていて、娘(ミゲルの祖母)やミゲルの名前ももうおぼえていない。
序盤ではそんなイメージはなかったが、タイトルになっているということは、彼女がキーになるのか…と思っていたら、ヘクターがまだ幼いココに『リメンバー・ミー』を歌って聴かせるシーンがあった。
ココはまだ生きているからおばあちゃんになっていて、ヘクターは死んだから若い姿である(ガイコツですが)。これも、私の好きな想い合ってる二人の時がズレるパターンだった。

『リメンバー・ミー』は歌曲賞をとっただけあって、すごくいい歌で、劇中にもポイントポイントで何度か出てくる。ただ、ワンフレーズのみだったりと、がっつりと聴かせてくれるシーンがなかったのが残念。
最後、ミゲルがココに歌って聴かせるシーンはもっと長くとってくれても良かったのにと思った。

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