『ブラックパンサー』
Posted by asuka at 10:00 AM
MCUの18作目。一つ前が『マイティ・ソー バトルロイヤル』ですが、直接の続編ではない。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にはすでに登場していたブラックパンサーの単独映画。
監督は『クリード チャンプを継ぐ男』のライアン・クーグラー監督。
主演はチャドウィック・ボーズマン。他、『クリード』のマイケル・B・ジョーダン、『ゲット・アウト』のダニエル・カルーヤ、ルピタ・ニョンゴなど旬な俳優が揃えられている。
Rotten Tomatoesでのほとんど異常事態のような高評価を始め、各方面からの評判の高さから、かなり期待度が高い状態での鑑賞でしたが期待しすぎて失敗ということはまったくなかった。
俳優、カメラワーク、脚本、衣装、美術、音楽とあらゆる面で完璧でした。
以下、ネタバレです。
私はワカンダのことを、ヴィブラニウムがとれるということだけしか知らなかった。
ワカンダの中に幾つかの少数民族がいるのも知らなかったけど、普通のアフリカのようだった。国王の親衛隊のような女性達も首にたくさんの輪っかをはめていたりと、服装もアフリカの民族衣装をアレンジしたもののようだった。新しい国王の選出儀式として決闘があったりと、よくあるとまでは言わないけれど、知っている世界観だった。
しかし、ただの途上国だと思ったら大間違い。隠されてたワカンダはとてつもなく文明が発達した都市だった。世界中のどこよりも進んでいる。最強金属のヴィブラニウムを大量に持っているのだからそりゃそうです。
もう一つそりゃそうだと思ったのは、ブラックパンサーのスーツを作ってるくらいだから、かなり近代的なラボがある。陛下の妹はそこでメカニックを務めている。彼女のスーツとかガジェットの説明の仕方がとてもキュートだった。陛下を吹っ飛ばしてケラケラ笑えるの、彼女だけだと思う。
国王を決める決闘のときに、手を挙げていたのでもしかしたら兄妹で争うことになるのかな、それは嫌だなと思っていたら、「おなかすいたから帰ろうよ」と言い出していて、本当にいいキャラクターだと思った。好きになりました。
ラボはただ近代的というだけではなく、アフリカっぽいイラストがデザイン的に取り入れられているのも良かった。
序盤だけで本当にいろんな要素が入っていて楽しくなってしまったけれど、そこからワカンダの三人が釜山の違法っぽいカジノに行くのもいい。
国王親衛隊の女性オコエはいつもはスキンヘッドなんですけど、ここでは鬱陶しそうにカツラをかぶっている。
でも、いざバトルになるとカツラをかなぐり捨てて、大きい槍を取り出して大暴れ。車の上に乗って、真っ赤なドレスが靡いているのも恰好いい。妹がワカンダから遠隔操作で運転する車の上に乗るブラックパンサーも恰好良く、この序盤だけでもアクションは完璧である。
映画は、お話を読んであげる父親と息子のセリフで始まる。「ワカンダは隠されてるんだよ」「なぜ?」と子供が素朴な疑問をぶつけるんですが、これが、途中で子供が今回の悪役のキルモンガーであることがわかる。
ワカンダがヴィブラニウムを独占していたことで争いが避けられていた面は確かにあるのだと思う。
それでも虐げられている人々(直接は言われないけど、キルモンガーが話していたのは人種差別だと思う)がいる。実際に地球で育ったキルモンガーは酷い目に遭わされてきたのだろうし、ならば、憤る気持ちもわかる。助けることができるのに、なぜ隠れてる? これは、キルモンガーが幼い頃から抱えていた疑問だ。
更に父親を元国王に殺されているから、悪役になってしまう要素は十分にある。アンディー・サーキス演じるユリシーズはただの極悪だけど、キルモンガーは気持ちもわかってしまう悪役というか、仕方ないし、憎めないのだ。
だから、最後に陛下がキルモンガーにワカンダの綺麗な景色を見せてあげるシーンも泣ける。せめて故郷を嫌いにならないでくれ、好きになってくれ、こんなにも綺麗なんだとでもいうようだった。しかし、これは本当はキルモンガーの父親の役割だったのだろうと思うと、さらに泣けてしまう。
陛下の最後の演説は人種差別問題だけではなく、あらゆる差別に対抗しようというものだろう。
もちろん本作はMCUだから、地球人内で争わずに力を合わせて侵略者から戦おうという演説にもとれるけれど、それよりは今の時代に沿ったものだと思う。
一つの民族になろうというメッセージは理想論かもしれないけれど、実際に口に出してくれるだけでもとても力強い。
ましてや、それが力を持っている国王だとしたら信じて、ついていきたくなる。
それにこれって、そのままではないけれど、キルモンガーのやろうとしていたことでもあるんですよね。悪役の遺志を継ぐのは結構珍しいと思う。
キルモンガーは子供の頃の思いをためこんだまま大人になって、悪の方向へ暴走してしまった。では、第二のキルモンガーを出さないためにどうするか。陛下はワカンダ以外の貧しい子供たちへのケアも忘れない。
陛下の志の高さには平伏したくなるし、ヒーローである前に国王だと思う。だから、本作もヒーローものというよりは、父を亡くし、国王になった男の話という意味合いが強いと思った。
そう考えて思い出すのが、『バーフバリ』なんですよね。
立派な王様の話というだけでもう、『バーフバリ』要素があるとおもうけれど、国王になるための決闘もそうでしたが、そのときにまわりの囃し立て方とか、名前の連呼もバーフバリっぽいし、鎧で武装したサイも思い出した。
なにより、序盤から恰好良すぎて泣いていたのも『バーフバリ』と同じでした。
単なるヒーローものではないということで、MCUの中の一作ではあるけれど、この作品単体でも十分楽しめると思う。他の作品のように、いかにも途中から始まって続くで終わるということもない。
他、伏線回収とまではいかないけれど、序盤で説明されたことが後半に復習のように出てきて効果的にきいてきていた。
ヴィブラニウムを運ぶリニアモーターカーの線路の両脇の、ヴィブラニウムの力を制御する機械についても、関係のないところで露骨とも言える感じで機能を説明して、後半にそこでブラックパンサーとスーツを着たキルモンガーが戦った。
目立たないほうがいいからこっちでと陛下は銀の首飾りのスーツを選んだけれど、金の首飾りのほうをキルモンガーが着たり。ジャバリ族は威嚇するときに猿が吠えるような声を出していたけれど、後半のバトルで声だけが聞こえてきて助けにきたのがわかったり。
序盤に出て来た車の遠隔操作も、後半ではロスが飛行機の遠隔操作をする。
カメラワークも長回し調の部分が多くて恰好良かった。ぐるっと一周まわるようにして全体を把握させる。バトルや街の雰囲気がわかりやすい。
カジノ内のバトルも、狭さがわかっておもしろかった。ヴィブラニウム採掘場の上から入っていくカメラも、その深さといかに大量にヴィブラニウムがあるかがわかった。
最後の入り乱れてのバトルシーンでは、陛下はキルモンガーと肉弾戦をしているのですが(これもあまりヒーローものという感じではない)、他の場所では、陛下の元恋人のナキアや妹もちゃんと戦っていた。親衛隊も全員女性である。しかも全員恰好いい。最高でした。
主演のチャドウィック・ボーズマンはスタイルが良くてセクシーでした。
また、キルモンガー役のマイケル・B・ジョーダンはやんちゃないたずらっ子系の顔だから、根っからの悪党には見えない。そこがいい。
登場シーン、博物館にいるときの金縁メガネ姿もとても良かった。
この二人は大事なシーンだとスーツを着ていてもちゃんと顔が出るし、上半身裸シーンも多いのはサービスかなと思った。
この二人が10歳差というのがとてもぐっとくる。チャドウィック・ボーズマン41歳、マイケル・B・ジョーダン31歳です。
ちなみに、マイケル・B・ジョーダンについては『クリード』のときにも『クロニクル』のデイン・デハーンを含んだ3バカの一人だと知って驚いたんですが、今回もまた驚いてしまった。
随分大人になった…と思ったんですが、『クロニクル』が2012年と案外最近公開だったので驚いた。撮影も2011年らしい。たった7年前。高校生役だったのに。
ただ、デイン・デハーンも現在32歳で、もう一人のアレックス・ラッセルも30歳なので、童顔3バカだったのかなと思っている。
ロス役はマーティン・フリーマンで、出てきて、初めてそうだった出るんだったと思い出したんですが、思ったよりも出番が多かった。
巻き込まれる一般人役は久々かなと思う。相変わらずよく似合っていた。CIAだからなので一般人でもないけど、ワカンダ内では一般人である。
遠隔操作中に、指示されるままに、両手を体の前でクロスして放つあのワカンダの挨拶の型をとるシーンがあって、マーティンにこれをやらせるのはサービスだなと思いました。
この挨拶も本当に恰好良くて、ビシッ!とキメるのもいいんですが、ついでとかルーチンみたいに適当にやるときもそれはそれでいい。
エンドロール後恒例のおまけ映像は、ワカンダと思われる場所で、子供達がテントで寝ている誰かを覗き込んでいて、その誰かが目覚めてテントから出てくるんですが、それがバッキーでした。長髪。
陛下の妹が子供達を「いたずらしないの!」って怒ってましたが何をされたんでしょうか。
ロスの件のとき「また白人を治療できる」とうきうきで言っていたのが気になりましたが、監督インタビューを読むと、この“また”の前回がバッキーだという話。
「ホワイトウルフ」と呼ばれてたんですが、知らなかったので調べてみたら、ブラックパンサーに出てくるキャラクターらしい。MCUではバッキーとホワイトウルフを同人物にするのではという予想が立てられていた。5月公開の『アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー』が待ちきれない。
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