『プーと大人になった僕』



タイトル通り、くまのプーさんと大人になったクリストファー・ロビンの再会が描かれている。
クリストファー・ロビン役にユアン・マクレガー、妻イヴリン役にヘイリー・アトウェル。
監督は『ネバーランド』、『主人公は僕だった』、『007慰めの報酬』、『ワールド・ウォーZ』のマーク・フォースター。

以下、ネタバレです。









予告編を見た限りだと、大人になって人生に行き詰っていたクリストファー・ロビンが100エーカーの森に行って、プーとその仲間たちと再会、遊んだりプーの言葉で子供の頃の自分の心を取り戻して、また日々の生活に戻っていくという、所謂『行きて帰りし物語』の形式なのだと思っていた。日々の生活に戻るけれど、100エーカーの森での経験によって成長するから以前のような陰鬱な気持ちは消える。

しかし違っていて、これは私が原作の『くまのプーさん』に詳しくないから知らなかっただけかもしれないけれど、プーさんはクリストファー・ロビンのイマジナリーフレンドではなく、本当に存在していた。
しかも、100エーカーの森を飛び出してロンドンの街中にも来る。それも、プー自らの意志で。ちゃんと思考しながら木の穴を抜けて来るし、ロンドンでは最初、困惑もしていた。クリストファー・ロビン目線の中だけで動くプーというわけではなく、プー視点もある。

それに、プーやその仲間はクリストファー・ロビンにだけ見えるわけではなく、動いて喋るぬいぐるみとして存在していて、他の人が見て目を丸くしたり叫び声をあげたりしていた。
予告でヘイリー・アトウェルがティガーたちを抱っこしている映像は見ていたけれど、それもあくまでもぬいぐるみを抱っこしているのかと思っていた。

例えば、『パティントン』であれば、あれは人語を話し二足歩行だけれど、みんなに受け入れている世界観である。一部、おもしろくないと思っていた人もいたようだけれども、それでも存在自体は受け入れていたようだった。プーの場合は、驚いたり叫ばれたりということは、やはり、ぬいぐるみが動くのが当たり前の世界ではないということになる。そうなると、クリストファー・ロビンが幼い頃に一緒に遊んでいたのもただのぬいぐるみに男の子が魂を宿したわけではなく(イマジナリーフレンド)、本当に動くぬいぐるみだったのだろうか。このあたりは、原作を読めばわかるのだろうか。

世界観がよくわからなかったんですが、エンドロール後にビーチで寝転んでいるプーとその仲間たちを見たら、もう細かいことはどうでもいいという内容なのかなとも思った。ちなみに、ビーチの椅子に寝ている御一行はポスターなどで出ていて可愛かったけれど、まさか、森を抜け出して劇中でこの姿が見られるとは思わなかった。
ビーチに来ていたのは普段せこせこ働いて、たぶんクリストファー・ロビンと同じく心が死んでいる人たちである。彼らが有給をとって海に遊びに来て、プーたちを見て好意的にとらえていたということは、動くぬいぐるみはあの世界では周知されたのだろうか。

なんか設定ばかりが気になってしまって、プーがのんびりしたことを言ってクリストファー・ロビンが何かを発見して癒されて変わっていくという様子を見せられても、予告編でそこまではわかっていたことだし、あまり心に響くものがなかった。

ただ、アニメCGと実写の共演ではなく、本当にぬいぐるみ形態だったし、表情が過剰に変わらなくて一見無表情に見えるところは良かった。ぬいぐるみプーとユアン・マクレガーの並びは見ていて可愛かったです。

あと、マーク・ゲイティスのコミカルとも言える大仰な悪者演技は愉快でした。あの様子を見ると、本当に真剣に考えながら見るものではないのかもしれないとも思ってしまった。
オープニングも絵本の絵で、終わる時にも絵本の絵に変わるので、もう、あまり辻褄とかは考えず、ファンタジーとしてふんわり楽しむのでいいのかもしれない。
それにしては前半、プーに再開するまでのクリストファー・ロビンの日常は厳しかったけれど。

あと、プー界隈のことを何も知らないので、ドーナル・グリーソン主演サイモン・カーティス監督の『グッバイ・クリストファー・ロビン』(2017年公開)はあわせて観たい案件なのではないかと思うので観たい。劇場未公開だが、Amazonにてレンタル中、10月にはDVDとブルーレイが発売される。






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