『ナイン・ソウルズ』
Posted by asuka at 4:04 PM
今年は『モンスターズ・クラブ』が公開され、秋には『I'M FLASH!』の公開も控えている豊田監督。『ナイン・ソウルズ』のリバイバル上映へ行ってきました。監督と板尾創路さんと渋川清彦(KEE)さんのトークショー付き。『ナイン・ソウルズ』が公開されたのがもう9年前ですが、いまになっていろいろ裏話が聞けるとは思っていなかった。いろいろ興味深かった。
まず、司会のかたに「思い出に残っているシーンは?」と聞かれて、板尾が「原田さんが最後の雨の中を走るシーンは必要ないんじゃないかとちょっと怒っていた。でもそのシーンを久しぶりに観たらグッときた。原田さんに伝え損ねた」と答えたことから、全体的に原田芳雄さんメインの話に。
田んぼで松田龍平と原田さんがやり合うシーンは春先の撮影で、夜は案外寒かったらしい。泥々になったところに毛布をかけられて、余計寒いと怒られたとか。でも、あの長回しのシーンは、出演者みんな思い出深いらしい。撮り方がうまいと思うのは、白いツナギの中に二人だけ泥で茶色い人がいるから、カメラが少し引いても中心がどこだかわかりやすい。
このシーンで龍平と原田さんを発見するのは大楽源太さんだったらしいけど、忘れていて、鬼丸さんがアドリブをきかせた。
渋川さん、板尾がそれぞれが去るシーンで原田さんへ向けてのセリフ、「お前に俺の気持ちがわかるか」と「逃亡犯でも結婚できますかね?」は直前で加えられた。原田さんには了承を得なかったらしい。他にも、監督は原田さんが出ているからといって、下手に出ることはないと思っていたらしい。
最後に監督が、「このようにフィルム撮影した映画をフィルム上映することは少なくなってきてる。五年後くらいには無くなるんじゃないか」と言っていた。もう貴重な機会になってしまっているんだと思うと、少し寂しい。もちろん、IMAXでのくっきりした映像も好きだけれど、フィルム上映はこれはこれで残して欲しい。
ちなみに、原田さんの命日が7/19、『ナイン・ソウルズ』が公開されたのが9年前の7/19だったらしい。
豊田監督ではまず『青い春』を好きになって、そのあとに『ナイン・ソウルズ』を観て、一気に大好きになりました。
観るのは久しぶりでしたが、おもしろさを再確認した。やっぱりとても好きです。
九人の脱獄犯の話というだけで、ハッピーエンドは見えてはこない。それぞれが娑婆で会いたい人、やりたいことなど、思い残しを抱えていて、それを実行していく。
一台のワゴンで移動していくロードムービーのような面もある。捕まっている人たちなので、気性が荒かったり、一癖も二癖もあるが、次第に一体感からか、友情にも似たものが芽生えてくる。おもしろおかしい面もありながら、一人、また一人と願いをかなえるためにワゴンを降りていくのが切ない。
観ていくうちに、九人全員のことが好きになって、全員幸せになってほしいと思うけれど、脱獄犯ということが前提なので、幸せになれるはずはない。
ここ数年はすっかりお爺さん役が板についていた原田さんも、九年前の映画だけあってまだお父さんくらいの役柄。
龍平も、『青い春』の学ランほどではないですが、美少年っぷりが堪能できる。大体、未散という名前がいい。全員が女装するシーンがあるんですが、龍平は普通にいる女の子のようで可愛い。
瑛太がまだEITA表記だった頃ですね。カネコローンというローン会社を経営している役なんですが、その会社のCMでクソラップを披露している。カ!カネが欲しけりゃ!(ネ!がネーチャンなんとか、で、コ!が股間がなんとか)とにかく、世の中の醜悪なものをベタベタにかためたような役です。最高。
北村一樹も下品な言葉を吐きまくるチンピラという、ひどい役を楽しそうにやってる。
主要人物が九人、その一人一人にまつわる人や逃亡の途中で出会う人など、登場人物がかなり多い。そのせいもあるかもしれないですが、スクリーン内に見せる要素を多く取り込んである。前面で会話している後ろで複数人が揉めていたりとか。一つのシーンに情報量がおおいので、複数回観ても新たな発見があって楽しめそう。
特にうまいと思ったのは、まず、ぶつぶつと文句を言いながら坂を下りていく父親(原田芳雄)の姿が映される。カメラがそのまま坂の上へ移動すると、そこではなんの関係もないように娘の結婚式が行われている。花嫁と花婿が腕を組んでいる背中。教会の中へ入っていくと、まるでシャットアウトするかのように、教会の観音開きの扉が係員によって両側からかたく閉じられる。
脱獄してまで祝ってほしくない、教会の扉は親子の関係を断つようだが、娘が子どもの名前に父親の名前からしっかり一文字入れているあたりが泣かせる。
他にも、煙草の吸殻で作った相合傘を踏まないとか、それが偽札か!とか、細かい凝ったシーンがたくさんつめこまれている。
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