『ダークナイト ライジング』


ずっと待っていたクリストファー・ノーラン版バットマンの三作目であり最終章。ジャパンプレミアとIMAX版で観ました。今回は『ダークナイト』ほど、IMAXカメラで撮影したシーンがわかりやすくなかった。それだけ、IMAXシーンが多いせいかもしれないですが、どうしてもIMAXで!という感じではないのかもしれない。
以下、ネタバレです。





このシリーズではゴードンとアルフレッドが好きなんですが、今回はずっとアルフレッドに賛同しながら観てました。
『ダークナイト』でも、序盤で「バットマンの限界はなくても、あなたは限界なのではないか?」と傷だらけのブルース・ウェインに向かって言うシーンが出てくる。引退の会見を開く前の「私も共犯でつかまりますか?」「僕は君が主犯だと言おうと思ってる」というやりとり中も、少しはしゃいだ様子だった。
今回なんて、ブルースは最初から杖をついて出てくるのだ。とてもではないけど、戦える状態ではない。しかし、こんな彼に、アルフレッド以外の人は、バットマンの復活を望むと言う。ゴッサムのことを思えば、バットマンしか状況を変えることができないというのもわかる。それにしても、バットマンを頼りすぎだし、ブルースも責任感が強いのと、ヒーローとしてのうぬぼれもあるのかもしれないけど、やらざるを得ないようになってくる。最後のほうで、キャットウーマンだけが「逃げちゃえば?」と言うくらいで、ゴッサムの未来はバットマン一人に託されてしまう。
でも、もっとも近しいアルフレッドにしたら、ゴッサムの平和より、ブルースの命のほうが大切なんですよ。「ご両親を埋葬して、あなたまで埋葬したくない」と涙ながらに訴えてましたが、執事とはいえ、家族同然のアルフレッドにとって、それほどつらいことはない。そして、三つ並んだ墓の前で「私が裏切ったせいで」とアルフレッドが泣きくずれるシーンは本当につらい。

しかし、映画はここで終わらない。最初のほうで、アルフレッドがフィレンツェのカフェの話をするシーンが出てくる。休暇で訪れたフィレンツェのカフェで、奥さんと子どもと一緒に幸せそうに生活しているあなたの姿を見る。でも、振り向くとそれは別人という。ここを受けてのラストというのがニクい。
お墓のシーンで一度寂しさを味わい、そのあと、カフェが出てきた時点で、観客は気づく。幸福な予感に、少し焦れったい気持ちになりながらカメラを追い、ブルースの姿を見つける。隣りにはセリーナ・カイル。これ以上のラストはないでしょう。ノーランありがとう!
ゴッサムが救われたシーンではなくて、フィレンツェのシーンで終わらせているあたりが真のハッピーエンド映画だと思う。

だから、ジョセフ・ゴードン=レヴィット関連で続編が作られそうな感じではあるけど、ブルースだけは完全に引退させてほしい。もうアルフレッドを悲しませるようなことはしないでください。


JGLがバットマンの隣りに乗っているシーンを観たときに、少しロビンっぽいなとは思った。警官じゃなくて、ロビンをやれば良かったのにとも思っていた。
だいぶ前に、次の作品にはロビンが出てくるような情報が流れていたのが頭の隅にあったせいもあるかもしれない。でも、その後にそんな話は出てこなかったので、有耶無耶になってなくなったのかと思っていた。
JGLが警官役で出ると聞いたとき、一体どんな役なのかまったく謎だったし、予告にちらちら出てきても、どうせ端役なんだろうと思っていた。でも、本編を観ていたら、かなり活躍しているし、これはただの警官ではないな、と。やっぱり!とは思いましたが、にやりとさせられました。


あと、インセプション組からだと、マリオン・コティヤール。出てきた瞬間からなんとなくあやしく見えたのは、『インセプション』を観ていたせいでしょう。最大のネタバレですね。ただの金持ちだとは思ってなかった。援助すると言ってきたときも、絶対に何か裏があると思った。会社を譲る話になったときも、警戒してしまった。だから、正体を現したときも意外性はなかった。しかし、モルに続き、またこの人がラスボスとは。ノーランは彼女のことなんだと思ってるんだろうか。


その黒幕告白シーンで、毒気を抜かれたベインが優しい顔になっていて、やっといつものトム・ハーディの顔が見えた。また、過去シーンでマスク無しのトム・ハーディが一瞬だけ映ったのも良かった。そして、恋愛による涙まで流していて、完全に乙女でした。
というのも、ノーラン監督がトム・ハーディを見初めたのが『ロックンローラ』だという話があって。『Bronson』(チャールズ・ブロンソン役)かと本人は思っていたらしい。それか、ベインなら肉弾戦で『Warrior』っぽい。それが、ゲイ役乙女の『ロックンローラ』だというから、意外…と最初は思っていたけど、観終えた後だとなるほどと納得せざるをえない。


今回のブルースは最初から杖をついて出てきて、医者の話では足の軟骨が削れていて、いざスーツを着る前にもギブスをつけていた。殴り合いではベインにまったく勝てる要素はなさそうで、そのまま奈落に落とされて、絶体絶命。観ていて、絶望的な気持ちになった。
しかし、そこから、力強く這い上がる。これがRisesのタイトルの示すところなのかはわからないけれど、あきらめずにのぼり、外へ出て大復活を遂げる。ハンス・ジマーの音楽がバットマンのテーマを奏でて、カタルシスが生まれる。


今作は『ダークナイト』というよりは『バットマン ビギンズ』と繋がるところが多い。この前、リバイバルで『ビギンズ』を観ておこうと思ったのは、映画館で観ていないせいもあったけれど、リーアム・ニーソンが、「『ダークナイトライゼス』の撮影に参加したけど、現場に滞在したのは一時間半くらいで、自分でもどのシーンに出るのかわからなかった」と言っていたという、ちょっと可愛らしいエピソードを事前に聞いていたことが大きい。ラーズ・アズ・グール(リーアム・ニーソン)や影の軍団は、『ダークナイト』には出てこない。

それに、ゴードンとの最後のやりとりの元となるエピソードのことを考えると、『ビギンズ』は絶対に観ておいたほうがいい。あれがすべてのきっかけだったのだし、ゴッサムの未来がバットマンから託されたシーンです。


「ヒーローをやるならマスクをかぶれ」というセリフは、≒ですが、「マスクをかぶれば君もヒーローだ!」で『アメイジング・スパイダーマン』でも出てきた。正しい心があれば誰だってヒーローになれる。このような、ヒーロー物の一番核となる部分もふまえつつ、ビギンズでの伏線も回収して、華麗にラストをきめる。完璧です。2時間45分という上映時間のせいもあるのかもしれないけれど、充分な満足感、満腹感が得られる最終章だった。

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