『戦火の馬』


結局、公開中に観に行けなかったのでBDで鑑賞。
予告から、“育てていた馬が戦地に連れて行かれてはなればなれ。戦争反対!”みたいなお説教くさい映画なのかと思ってましたが、それよりずっと優しく、力強いお話だった。
一頭の馬にまつわる様々な人間たちの群像劇という、少し変わったスタイルなのがおもしろかった。ドンパチもあるけど、それが中心ではなく、人間ドラマの要素が強い。戦争の残酷さばかりをクローズアップせずに、善き人々の心温まるエピソードが多かった。号泣という感じではなかったけれど、観終わったあとで、じんわりと感動が広がる。

また、ドイツ軍とイギリス軍、両側からの視点で描かれるので、敵/味方の話に簡単にまとめられていないのも良かった。軍の内部事情と、人の内面をしっかり描くことで、相手が何を考えているかわからない冷徹な悪魔ではなく、血の通った人間なのだというのがわかる。

主人公たりえる演技をするジョーイ役の馬がすごい。動きだけ見ていても本当にお利口なのがわかるんですが、ちゃんと表情も作れてた。特に、「ごめんな」と喋りそうなくらいの申し訳なさそうな顔が印象的。

ベネディクト・カンバーバッチとトム・ヒドルストンという、最近の英国若手俳優二人を揃えている点も楽しみの一つでした。トムヒさんは、いい役だったせいもあるんですが、今回が一番恰好良かったです。軍服もよく似合っていた。
バッチさんは、また今までとまったく違うイメージの役柄だった。といっても、『裏切りのサーカス』(忠犬)、『つぐない』(ゲス)、『SHERLOCK』(変人)くらいしか観ていないです。若さゆえの無謀さで突っ走るワンマン軍人役でした。顔に特徴があるので一つのイメージで固定されそうなものだけど、見事に演じ分けている。カメレオン俳優だと思います。

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